【レポート】北海道中小企業家同友会景況調査報告(2020年10~12月期)
2021年01月01日
景況感2期連続の改善も、力弱し
―コロナ第三波、先行き依然不透明―
文責:大貝 健二
(北海学園大学 経済学部)
北海道中小企業家同友会2020年第4期(10-12月)景況調査における業況判断DI(前年同期比)は、6.9ポイント改善し、マイナス42.8からマイナス35.9へ推移した。前回調査(7-9月期調査)では、今期はコロナ禍の先行き不透明感から悪化推移見通しであった。しかし、10月中はGo toトラベルなど需要喚起を促す施策展開も功を奏していたことから、マイナス30台と水面下深いところではあるものの景況感の改善につながったと考えられる。今期の業況判断を「全国企業短期経済観測調査(短観)」や中同協DORと比較してみると、いずれの調査においても改善という結果ではあるが、北海道DORの改善幅は小さいということが特徴として挙げられる。10-12月期調査期間中の11月下旬に、全国に先んじてコロナ再拡大の動きがあったことが、小幅な景況感の改善にとどまった要因であろう。次期見通しは、3.4ポイントのやや悪化見通しである。前回調査に引き続き、景況感の改善に向けた力は非常に弱いとみることができる。札幌圏のみならず地方でのクラスターが相次ぐなど予断を許さない状況が生じていること、それに伴いGo to トラベルの停止措置がとられたことによる経済活動への急ブレーキなど、コロナ禍がいつ収束するのか先行きが全く見通せず、不安を抱えた状況であることが要因だろう。
業況判断DIを除く、今期の調査結果の概要は以下のとおりである。第1に、売上高、採算、採算の水準の主要各DIは、前回調査に引き続いて、10ポイント以上の大幅な改善を示している。これらの指標は、大幅な改善を示しているが、先述の業況判断に加え、業況水準は1ケタ台の改善にとどまっている。売上高や採算の大幅な好転が業況判断、業況水準の大幅な好転に結実していない。さらに、次期見通しに関しては、いずれも10ポイント以上の大幅な悪化見通しとなっている。また、一人当たり売上高、一人当たり付加価値のDI推移をみると、今期も前回調査に続いて大幅な改善となっているが、水準ではマイナス16、マイナス20である。コロナショックが生じる2020年1-3月期の水準に戻ったと評価できるが、次期調査において、これらの指標が改善するのか否かも注視が必要である。業種別業況判断では、DI水準ではマイナス20台と他業種と比較して相対的に良かった建設業で停滞感がみられていること、前回調査では改善の動きが鈍かった流通商業で大幅な改善となっている。しかし、次期見通しでは、サービス業で大幅な改善見通しではあるものの、他業種は軒並み悪化見通しである。
続いて、今期調査に寄せられた経営上の努力を紹介しておく。今期調査での特徴は、ウィズコロナ、アフターコロナを意識した記述がみられている。「ウィズコロナが日常にある生活対応と社員の健康管理の指導。新しい業種、事業へと変化があるので追従していきたい」(建設業)、「顧客の場面情報とつぶやきの全社収集活動から、潜在需要の洗い出しを努めて行っている」(製造業)、「3ヶ年計画の見直しを進めている。コロナ禍でも生き抜ける対策を検討、新事業の準備、再生可能エネルギーへの投資準備」(製造業)。他方で、「コロナ禍の中様々なことを試みたが、正直限界を感じている。感染がおさまらない限り、何をしても厳しいのではないか。」(流通商業)といったコメントもある。先行きが見えない不安がある中で、ネガティブにならざるをえないこともある。こういう時こそ、同友会を活用し、学び、実践、そして連帯が求められるのではないだろうか。
≪景況調査について≫
・景況調査は、回答者の意識・マインドを基に景気動向を分析する調査です。
・特に、同友会が実施する景況調査は、経営者の意識を反映するものであるため、景気動向がはっきりと表れやすいと言われています。
・景況動向、および「次期見通し」を自社の経営指針等の見直し等に活用してください。
≪DI値について≫
・DI値は、「良い」と回答した割合(%)から「悪い」と回答した割合(%)を引いた数値です。
・「良い」と回答した企業が多ければ多いほどDIは高水準で推移するが、その逆もしかり。
・景況調査では、(1)DI値の水準(プラスかマイナスか、また水準はどの程度か)、(2)前回調査からの好転幅、悪化幅の大きさを主に見ていきます。
・DI値の変化幅について
①1ポイント以内の場合:「ほぼ横ばい」と表現します。
②1~5ポイントの場合:「やや」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。
③10ポイント以上の場合:「大幅な」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。