【レポート】北海道中小企業家同友会景況調査報告(2020年1~3月期)
2020年05月11日
新型コロナ大不況の入り口
―企業存亡の機、連帯の力で活路を―
文責:大貝 健二
(北海学園大学 経済学部)
3ヶ月前に一体誰がこのような事態を想像できただろうか。北海道中小企業家同友会2020年第1期(1-3月)景況調査における業況判断DI(前年同期比)は、マイナス7.9からマイナス29.6へ、21.8ポイントの大幅な悪化を示した。全国企業短期経済観測調査(短観)においても、全国・全産業では5期連続の悪化となり、また北海道調査分では、前回調査から15ポイントもの大幅な悪化となっている。米中貿易摩擦や韓国からのインバウンド観光客の低迷に加え、2019年10月の消費増税で景況感の後退がより鮮明になってきたところに、新型コロナ大不況とでもいうべき事態に突入した。
今期の調査結果として鮮明なことは、次の2点である。第1に、業況判断DI、業況水準DIはじめ、売上高DI、採算DI、採算の水準DIなど主要な景況感の判断項目が軒並み10ポイント以上の「大幅な悪化」を示していることである。第2に、これら主要項目の次期見通しでも軒並み10ポイント以上の「大幅な悪化」となっており、今期の景況感の大幅な後退は、まだ入り口に過ぎないことを示唆している。リーマンショックを上回る経済危機が訪れることを想定しておいた方がよいだろう。
業況判断DIを業種別にみると、全業種で悪化した。特に流通商業では37.4ポイントの大幅な悪化(マイナス1.3→マイナス38.7)、サービス業でも28.6ポイントの大幅な悪化(2.4→マイナス26.2)と、これら2つのカテゴリーに属する業種での悪化が顕著である。しかし、次期見通しでは、建設業、製造業でも大幅な悪化見通しとなっており、全業種でマイナス30以下に落ち込む事態となっている。
「経営上の努力」コメントをみると、「建設業にもコロナウィルスの影響が有り、中国から資材供給が部品として多く、住宅設備器具関係で他社への抜替によるコストアップや在庫欠品による高騰が更に原価を上げています。又、他業種の売上減やその影響も考えられて、消費動向と世界の投資動向によっては大きな影響が考えられる。企業として危機管理を一つにしぼり守っていくしかないように思う」、「新型コロナウィルスの感染拡大により、3月の卒業式が中止・縮少になり、着物袴レンタルがキャンセルになり、その対応(現金による返済)に苦膚している」など、コロナウィルスとともに、厳しい情勢を示す文言が並んでいることも今期調査の特徴である。
新型コロナ大不況は、目に見えないウィルスとの戦いでもあり、すでに明らかになっているように、三密を避けること、自粛要請により仕事もお金も回らない事態が起こっている。もちろん、人の命を守ることが何よりも重要である。しかし、長期戦になればなるほど、企業の存亡が危ぶまれることになる。中小企業を1社もつぶさない覚悟で、この危機にいかにして立ち向かうのか。国へ政策的支援を求めることは当然必要であるが、自社の得意分野を絞り込むこと、自社の強みを基に新たな事業を展開すること、そして、同友会の連帯を基に、お互いを支え合う仕組みを創り出していくことが求められるだろう。
≪景況調査について≫
・景況調査は、回答者の意識・マインドを基に景気動向を分析する調査です。
・特に、同友会が実施する景況調査は、経営者の意識を反映するものであるため、景気動向がはっきりと表れやすいと言われています。
・景況動向、および「次期見通し」を自社の経営指針等の見直し等に活用してください。
≪DI値について≫
・DI値は、「良い」と回答した割合(%)から「悪い」と回答した割合(%)を引いた数値です。
・「良い」と回答した企業が多ければ多いほどDIは高水準で推移するが、その逆もしかり。
・景況調査では、(1)DI値の水準(プラスかマイナスか、また水準はどの程度か)、(2)前回調査からの好転幅、悪化幅の大きさを主に見ていきます。
・DI値の変化幅について
①1ポイント以内の場合:「ほぼ横ばい」と表現します。
②1~5ポイントの場合:「やや」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。
③10ポイント以上の場合:「大幅な」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。