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同友会は、中小企業の繁栄と、そこで働く全ての人の幸せを願い、地域社会の発展のために活動しています。

人いかしは経営責任 ~成長拒否は会社の私物化~

 

この論文は、『21世紀型企業づくりをめざして 中小企業の経営課題―時代の流れ、体制固め、人育ての核心に迫る―』(〈編集・発行〉一般社団法人北海道中小企業家同友会)より抜粋転載したものです。

 

なぜ社員教育なのか

 このところ各地同友会で、『社員教育』が切実な要求になっています。この厳しい経営環境の中で、「企業は人なり」が理屈抜きで実感されるようになったからでしょう。そこで、改めてみなさんと「同友会における社員教育」について、いくつかのことを考えてみたいと思います。


 同友会は一貫して、「社内に共学・共育の土壌を育て、活力ある企業づくりを」と、呼びかけてきました。それは、激動する今日の情勢が、歴史的な大転換期の前ぶれだとの認識にたっています。従来の価値観や惰性に安住していたのでは個人も企業も対応できなくなります。科学性・社会性・人間性に裏付けられた認識力が問われる歴史的な局面です。その課題に真正面から取り組まなければ、主体性をもって人間として生きたり、企業が繁栄することができなくなります。


 しかし、残念ながら中小企業の現状は「勉強ぎらい、頑張りぎらい、真面目ぎらい」な社員が少なくありません。経営者がいくら「勉強しろ」といってもなかなかその気になってくれません。つい「勝手にしろ」と言いたくもなります。でも、これからの時代を生きるためには、どんな人でも今のままの知識や力量では足りません。よりフレキシブルな対応力と、的確に判断できる分別力が求められます。豊かな人間としての総合的な力がなければ、周りの人にも、お客様にもあてにされる存在にはなれません。現状のままで気のきいた暮らしを夢見ることは、客観的には傲慢、怠惰ということになります。そんな人の集団では、企業の繁栄はおろか生き残りも困難な環境です。

 

社員による「会社の私物化」

 この激動期、従来の惰性の上にあぐらをかく傾向から脱却できなければ、時代から取り残され、個人も企業も社会的に存立する基盤を失います。だからこそ、科学的な愛情を込めてそうした傾向を克服しなければなりません。それが今日における中小企業の生き残りをかけた、リストラの中心課題です。


 「おれは勉強ぎらいだけど、言われた仕事はちゃんとやっている。あんまり冷たいこと言わないでよ」。こんな態度に出会うと、つい経営者はたじろいでしまいます。それが本人の主体性を尊重することだとか、やさしさであるかのように勘違いしているように見受けられます。しかしそれは、「社員が会社を私物化する」ことを許す、経営者としては無責任な態度といえないでしょうか。


 従来「会社の私物化」は、経営者側の問題と一面的に考えられてきました。しかし、「個人のわがままで、会社を駄目にする」行為をとがめる意味で、私物化が問題なのですから、社員が社会人としての自覚を持たず、わがままを通しているのに、「しょうがない奴だ、まー放っておけ」と、あっさり許す態度は、それこそ経営者として社会的に許されるものではありません。経営者にとって、社員にとって、またお客様にとっても、大切な会社です。いわば社会の公器というべき企業の存続を危うくするのですから。

 

問いかけの気風を

 「そんなこと言っても、うちには部下を教育できる幹部がいない」。よく聞く経営者の嘆きです。それは、同友会が提唱する共育の意味をよくご理解ねがえないことの表れでもあります。


 中小企業の社員教育は、仕事の中で起こる問題を、社内みんなの教材として学び合うことが基本です。日頃からあらゆる情報を共有しあって、ミス、クレーム、事故、成果などなんでも「なぜ起こり、どう対応すべきか」、みんなで真剣に考える習慣を身につけておくことが大切なのです。OJT(on the job training)を通して「みんなが先生、みんなが生徒」の関係を職場の隅々に浸透させることです。それが、同友会が提唱する共育的土壌づくりです。


 その問いかけ合いがどれだけのレベルで責任を持ちあえるか。納得が得られる筋が通った分かりやすい話ができるのは誰か。良く見極め、的確な指導と援助が必要です。自主性を尊重し過ぎて放任に陥り、「スズメの学校」や「小田原評定」になることは避けたいものです。幹部も経営者も、その学び合いをコーディネートし指導するなかで、共に成長できるのです。


 「無いからできない」ではなく、「必要なことは断じてやる」努力を積み重ねてこそできるようになるのです。経営者なら誰しも仕事を通してそうした体験を持っている筈です。人間の力量は大半が、必要に迫られ必死になって頑張ることで身につくものです。


 今の社会環境と情勢は、中小企業の経営者に、現代における最高の教育者であることを熱烈に求めています。

 

困難な時にこそ真価が

 あえていえば「中小企業はないものだらけの経営体」です。だから、経営者と社員の人的な資源こそが頼みの綱です。当然ながら社員の採用にあたっては、企業の将来と、社員の処遇を慎重に考えあわせます。


 同友会は、①良い会社をつくろう、②良い経営者になろう、③良い経営環境をつくろう、の3つの目標を掲げて運動を進めています。①と②は経営者と社員の協力次第でなんとかなるでしょう。しかし、③は自己努力だけではどうにもならない要素があります。円高、金融の引締め、自然災害、国際的な紛争などがそれです。ですから、中小企業は持てる力を総動員して頑張っていても、いつも安全で優位な地位を保てるとは限りません。


 いざという時に、どう対応できるかが企業としての実力です。仮に、全社員が自らの賃金を下げてでも、「団結して会社を守ろう」とする動きがでてくるようなら、素晴らしい企業です。社員が本音のところで、「自分たちを長いこと大切にしてきてくれた、この会社こそが自己実現の場なんだ。」という思いを持たなければ、とてもそんなことは期待できないからです。また、社員が「みんなで団結して頑張れば、必ず良い会社にできる」という確信を持っていなければ、そんな動きは現れてきません。


 いざという時、外部の支援が得られるかどうかの決定的な分かれ道は、『経営者と社員の信頼と協力』の関係です。またそれは、どんな時でも企業の生命力であることを確認しておきたいと思います。


 この厳しい経営環境の中で同友会が社員教育に一貫して取り組んできた成果が、そこかしこにはっきりと表われています。これからも、経営者と社員の『共育関係』をいっそう強化し、発展させて行きたいものです。