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【71号特集4】産学官連携で持続可能な循環型社会を

2023年01月12日

産学官連携で持続可能な循環型社会を
―オホーツク企業3社の取り組みから―

 

パネリスト
環境大善㈱ 代表取締役社長 窪之内 誠(北見)
㈱エース・クリーン 代表取締役 中井 真太郎(北見)
㈱システムサプライ 常務取締役 岡村 諭志(北見)

 

コーディネーター
赤坂木材㈱ 代表取締役 渋谷 光敏(北見)

 

 牛の尿を原料に土壌改良材を製造・販売する環境大善、木材から牛の飼料を製造するエース・クリーン、情報技術と農業の融合に取り組むシステムサプライの事例から中小企業の産学官連携のあり方を考えるパネルディスカッションです。

 


 

渋谷 本日はオホーツク支部3社の産学官連携の取り組みについてお聞きしながら、持続可能な循環型社会の構築を考えていきたいと思います。はじめに、自己紹介と産学官連携の取り組みについてお話しください。

 

 

 

産学官連携で人材不足を解決

窪之内 酪農業が盛んな道東地域では、牛のふん尿の悪臭や処理による水質汚染が問題となっていました。行政、農協、酪農家が協力し糞尿処理が進められていましたが、酪農家自身も多額の費用負担を伴うものでした。

 

 ある日、ホームセンターで店長を務めていた私の父のもとに、知人の酪農家が牛の尿を醗酵させ、無害化した無臭の液を店で売れないかと持ち込んできました。小分けにした液を店のスタッフに配り、消臭に効くか試してもらうと、ペットの糞尿や生ゴミ、排水口やトイレの悪臭まで、臭いが消える消臭効果が得られました。

 

 父は「公害の元だった牛の尿が、酪農家の経営も助けられる」と商品化し、1998年に消臭液「きえ~る」の販売をはじめました。また、この液体は土壌再生にも役立つことがわかり、園芸用の液体たい肥「土いきかえる」が商品化されました。

 

 2006年にホームセンターから退職金代わりに環境商品事業部を譲り受け、独立開業したのが当社です。現在は国内と海外6カ国で販売しています。私は地元の事務機器会社を経て2016年に入社し、消臭の作用機序(薬剤がその薬理学的効果を発揮するしくみ)を解明することに取り組み始めました。

 

 当社は産学連携で地方の大きな課題である人材不足を解決しつつあります。2017年からの5年間、北見工業大学と液体肥料についての共同研究講座を開始しました。講座ではお互いの専門性を融合させることでイノベーションを起こす、新しい価値の創造につながっています。

 

 これをきっかけに認知度が上がり、北見市外から3名が入社し、研究職や広報の仕事を担当しています。ほかに、経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)」の採択を受けて、技術開発を進めています。
 事業承継にあたり、会社の存在意義を改めて見直し、経営幹部や社外のアートディレクターと共に、デザイン経営に取り組むことにしました。社名変更や新たなシンボルマークなどでブランドコンセプトをリブランディングした事例が、2022年の「中小企業白書」「小規模企業白書」に掲載されました。

 

牛が安心して食べられる飼料の誕生

中井 当社は1976年に私の父が廃棄物処理業として創業しました。現在は本業に加え、木材を圧力窯で高温高圧の水蒸気によって蒸煮処理した粗飼料「キャトルエース」の製造と販売を行っています。牛が好む酢酸を多く含み、特徴ある「味」「香り」が高い嗜好性を実現しています。また、添加物は一切使用せず、安全で安心な粗飼料となっています。

 

 1990年、農林水産省がバイオマス変換計画として、全国の公設研究試験機関で木を牛のエサにして、飼糧自給率を向上させる研究が行われました。成果も出ていましたが、当時はコストが見合わず、お蔵入りしていました。公開データを研究し、物価高騰など情勢が変化した現在は、事業化の可能性があると考え取り組み始めています。

 

 2014年に北海道中小企業応援ファンド事業の助成を受け、機械メーカーと北見の畜産農家の協力で17頭の黒毛和牛を対象に、木質蒸煮飼料による肥育試験の実証研究を1年間行いました。その結果、シラカバを原料とした蒸煮飼料が牛の嗜好性が良く、肉質の良い健康な牛に育ち、従来使用されている稲わらと遜色ない飼料であることが確認されました。新聞や業界誌で大きく取り上げられ、当社としても生産設備の導入を決断しました。

 

 2016年には実証プラントで年間600tを製造、市場に受け入れられるのかを確認し、2020年に自己資金を投入して、年間2千tと生産規模の拡大を行いました。翌年には生産量が追い付かないほど売れるようになり、農林水産業みらい基金へ応募、採択されました。2023年春の稼働をめざす新たな設備は、年間6千tの生産拡大を計画しています。

 

 産学官連携の取り組みとしては、2016年に北海道林産試験場から声がかかり、帯広畜産大学、雪印種苗に当社の4つの組織で、農林水産省委託の実証研究を1年間行いました。また北海道立総合研究機構とは、2017年からの3年間と2020年からの3年間、重点研究を実施しています。道外では主に東北地域で共同研究を行っています。

 

ITで農業を支える

岡村 当社は門脇武一(元オホーツク支部長)が、1983年に創業した情報通信業の会社です。「地域ニーズをシステムへ」を経営コンセプトに、持続可能な地域社会を形成することを理念に掲げています。グループ会社に農業生産法人イソップアグリシステムとデータセンターを運営する株式会社ODC(オホーツク・データ・センター)があります。

 

 システム開発からサーバー、ネットワークの情報通信環境の構築を手がける「システムソリューション事業」、ITを活用した精密農業やデータセンターの運営など、マネジメント業務を行う「マネジメントソリューション事業」、持続可能性を探求しバイオエコノミー領域の事業形成をめざす「バイオエコノミー創発事業」の3つの事業を柱に取り組んでいます。

 

 オホーツクの基幹産業である農業では担い手不足、耕作放棄地が拡大する現状の課題があり、解決のためにも農産物の付加価値をどのように高めるかが求められています。

 

 当社の創業者は、実家が農業を営んでいたこともあり、農業に関して強い問題意識がありました。こうした課題に対して、2001年に『イソップコリドール』(ISO14000、HACCP、Precision Agricultureの3つを併せた造語)という標語を掲げ、持続可能な循環型地域経済の構築をめざし、緩やかで顔の見える連携体を立ち上げました。2002年には農業と情報の融合で新たな価値を創ることをめざして、オホーツクの6名の農業生産者と6社の企業で農業生産法人イソップアグリシステムを設立しました。

 

 当社の産学官連携の取り組みは2つあります。農業、食、健康などをテーマに、大学の教授や専門家を講師にお招きし、開催している『地域融合フォーラム』と農林水産省などの国の補助金を活用した『農業分野の研究開発事業』です。2006年に当社を核として、農業生産者と事業体を編成し、北海道中央農業試験場、日本気象協会、東京農工大学などの協力を得て、農業分野にIT技術を取り入れました。この取り組みはIT精密農業の先駆けとなりました。

 

 具体的には、土の成分測定と作物の生育状況を把握するセンシング機器を導入して、効率的な肥料散布の制御システムを開発しました。これにより肥料を無駄に散布せず、生育状況のばらつきを無くし、収量アップにつながる成果がでました。

 

 続いて『大豆を特別にする事業』です。大豆は身体にも畑にも良い作物です。特別な粉砕機を導入し、大豆をまるごと粉にする大豆ミクロンフーズを開発しました。こうした取り組みが、おからの廃棄をなくすゼロエミッションの取り組みや健康によい機能性食品開発への挑戦につながりました。大豆ミクロンフーズはパン、ケーキ、豆腐の原料としてお菓子や加工食品に利用されています。当社でも農業の六次産業化の実践として、この大豆ミクロンフーズを原料にマヨネーズの代わりとなる、大豆ドレッシングの製造および販売をしています。

 

 

渋谷 3社からそれぞれ特色のある取り組みをお話いただきました。大学との連携はハードルが高いと感じている人が多いと思いますが、実際に連携するに至るまでの経緯や苦労した点についてお聞きします。

 

 

窪之内 我々が消臭効果や農業での効果でしっかりとしたエビデンスを取らなくてはならないと思いはじめていた時に、北見工業大学のコーディネーターの紹介で、微生物に詳しい先生とつながることができました。農業系の先生にも協力を得ることができ、人と人のつながりがあって現在の事業に安心して取り組むことができています。

 

 

岡村 現在はスマート農業が一般に認知されてきていますが、当社が始めた2006年は実践している人が少なかったこともあり、専門研究をしている東京農工大学の門をたたきました。今は、北見工業大学などでも地域の農業に着目した動きがあります。設備が整った大学を活用できるのは、当社が産学官連携に取り組むメリットとして考えています。

 

渋谷 特許取得など知財に関して、各社の取り組みはどうですか。

 

窪之内 当社には、知財弁護士の顧問がいます。まだ世の中にないものをつくるので、私たちが積み上げた研究を理解した方でないと難しいと思います。

 

中井 当社での特許取得に関する取り組みも、分野ごとに精通した方と取り組めないと、特許庁から拒絶査定を受けることになってしまいます。同友会のネットワークなども活用しながら進めていきたいと思います。

 

岡村 著作権は情報に関わる分野で、なかなか取得が難しいというところもあり取得に至っていません。バイオ分野での知財は必要性を感じます。

 

渋谷 持続可能な循環型の取り組みについて紹介をお願いします。

 

窪之内 牛の糞尿を原料とし、当社独自の仕組み『アップサイクル型循環システム』(図①)で消臭液や土壌改良材にして販売することで持続可能な取り組みとなっています。大学との共同研究で、新たな用途開発を行い、循環の輪を広げていきたいと考えています。

 

【図①】

 

岡村 循環の一例として、畜産農家へ麦わらを牛の飼料として渡し、牛糞をもらう。豚のエサにタマネギを利用されている畜産農家には、タマネギの規格外品を渡し、豚糞をもらう。また規格外品の大豆や麦は、鶏のエサとして渡し、鶏糞をもらう。もらった糞は堆肥として畑に散布し、循環させています。ほかに、地域資源の活用として、牡蠣や蟹の殻を粉にして堆肥活用できないかと、一部の圃場で試験的に実施もしています。

 

渋谷 実際に連携をした結果、困ったことや良かった点があればお願いします。

 

窪之内 農業での圃場実験では天候などが原因となり、結果やデータが何も出ずに終わることがあります。チャレンジをするためには、あえて失敗をするということが大事かなと思い、受け入れるようになりました。

 

岡村 窪之内さんとも重なりますが、農業は天候に左右されますので、実証実験をやると決めた日に雨が降ることもあります。

 

 当社はITシステムをつくっていますが、実際にできた作物に対する検証の仕方がわからないことがありました。知見をもっている農業試験場に協力を仰いだところ、実証試験では実際に畑まで来てくれて、4、5人でいろいろと検証作業をしてくれました。産学官連携のいい部分だと感じています。

 

 困った点は、農業は天候に左右されるため、進捗会議や実証試験の日程調整が大変でした。またオホーツクエリアは広いため、会議等で人が集まるのも移動に時間がかかり苦労しました。現在は、オンライン会議も浸透して、このあたりの問題はないと感じています。

 

中井 共同研究をしていく中で、大学の先生には当社のアドバイザーとして会議や行政のアテンドをしていただく関係性ができています。自分一人だと迷ってしまう時でも、周りの方が手綱を引いてくれています。助けていただいていることへの感謝の気持ちでいっぱいです。

 

渋谷 新しい事業展開の際、社内のコンセンサスをどのようにとっていますか。

 

岡村 イソップアグリシステムを立ち上げた当時、「システムエンジニアが、なぜ農業をやらなければならないのか」という、不満の声があがりました。そこで、将来的に私たちの技術が地域の役に立つということや理念を繰り返し説明しました。新卒者を採用する際は、このような会社であることを理解してもらった上で、採用試験を受けてもらうことにしています。

 

中井 8年前からこの事業を行っていますが、経営者が事業に対してしっかりと夢を持ち、その思いを周りに語り続けていく。そして、経営者が率先垂範して汗をかくことが必要です。

 

 当社は46年間で多くの事業に手をつけてきましたが、失敗を重ねたこともあります。絶対に成功させてやるという思いだけで進み、やっと少しずつ周知され認知されてきたと思います。

 

経営者は現場に出て、社員に思いを語り、そこに惚れさせる、もうこれしかないのかなと思います。

 

窪之内 私は微生物に学び、善玉菌・悪玉菌・腐敗発酵ということから『発酵経営』という、経営理念を掲げ「善い人が活躍する場はこうだよね」と、社員と語っています。そうするとその経営理念にひかれる人が集まってきて、コンセンサスをとることが楽になりました。

 

 経営理念を立てるまでにはSWOT分析や十分に時間をかけて、この事業は本当に何のためにやっているのかという自問自答を繰り返し、経営者の自分が先頭に立ってやると決めました。

 

 採用時には、ビジョン達成にどういう人が必要なのかを社員とも話し合うことで、求人しやすくなりました。
 私たちは高みをめざすのではなく、遠くにいつまでも歩いていけるような事業形態を目標にしているので、ビジョンを立てることがやはり大事だと感じています。

 

 

渋谷 最後に本日の感想などをひと言ずつお願いします。

 

岡村 私たちは地域をどのように支えられるか、というところに課題意識があります。人手不足の中、人がいなくても、今の経済状況を支えていけるようにすることにミッションを感じています。

 

 オホーツク管内でも外国人労働者の雇用をする方がいます。経験や勘がない方でも、農業が進められるような仕組みづくりが大事だと思います。農業は天候に左右され、同じ条件で営むことが困難で平準化が難しい分野です。当社のIT技術で、よい作物ができるようサポートできることにやりがいを感じています。

 

 持続可能な地域にしていくために、将来的に私たちの子孫が住みづらい環境・地域にならないように、環境保全型農業をめざして、頑張っていきたいと思います。

 

中井 持続可能な循環型社会では、一企業の利益だけを求めた事業では、どこかで途切れてしまうことがあると思います。世の中に必要とされるということは、社会にどう貢献するかというのが大きな要素です。単純な利益追求ではなく、お金を投資してでもやるべきで、企業の使命だと思います。この点は、当社の社員とも共有しています。

 

 産学官連携で気を付けていることは、研究だけで終わらず、どこかのタイミングで事業化していくことです。事業を進めていく中でも産学官連携の力を借り、結果として社会に還元できるという仕組みを構築できると思います。同友会には産学官連携研究会(HoPE)がありますので活用していきたいと思います。

 

窪之内 理念やロゴなどのコーポレートアイデンティティやビジュアルアイデンティティを定義して、牛の尿のマイナスイメージをプラスに変える取り組みで、採用につなげることができました。

 

 北海道は下請けの仕事が多く、素晴らしい材料をつくっている会社でも、何をやっている会社かわからないということが多くあります。そこをきちんと発信・説明しないと、今の若い人たちは、求人しても応募してこないと考えています。

 

 当社の社員には「社長に仕えないで欲しい。ビジョンに仕えてください」と、伝えています。当社には『地球の健康を見つめる』という、コーポレートスローガンがあり、それに基づいて研究や販売、仕入れ、製造をしましょうと話しています。

 

 ブランディングはコミュニケーションであり、そこをどのように実践するかです。中小企業は、たくさんいいことをやっている会社がある中で、それを世の中に知っていただくことも大事になってくると思います。

 

 今後は自社のことをしっかりと説明できる企業がフォーカスされるような時代になってくると思います。我々はまだまだ道半ばで、まだまだ努力をしていきます。ぜひ今日学んだ皆さんと一緒に持続可能な循環型社会をつくっていけたらと思っています。

 

渋谷 今日は3人の皆さんから環境最前線の取り組みを学びました。ありがとうございました。

 

(2022年10月7日「第37回全道経営者〝共育〟研究集会with全道青年部・後継者部会交流会in札幌」第8分科会より 文責 松田 竜二)

 

環境大善㈱ 代表取締役社長 窪之内 誠(北見)
■会社概要
設  立:2006年
資 本 金:1,000万円
従業員数:21名
事業内容:バイオ製品(消臭液・土壌改良材等)の製造販売、環境浄化材販売

 

㈱エース・クリーン 代表取締役 中井 真太郎(北見)
■会社概要
設  立:1976年
資 本 金:2,000万円
従業員数:64名
事業内容:廃棄物処理業

 

㈱システムサプライ 常務取締役 岡村 諭志(北見)
■会社概要
設  立:1983年
資 本 金:4,000万円
従業員数:26名
事業内容:情報通信・情報処理システムの企画・設計・開発・運用管理及び流通

 

赤坂木材㈱ 代表取締役 渋谷 光敏
■会社概要
設  立:1967年
資 本 金:1,300万円
従業員数:28名
事業内容:森林整備事業(造材、造林)、素材仕入販売