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同友会は、中小企業の繁栄と、そこで働く全ての人の幸せを願い、地域社会の発展のために活動しています。

【70号】代表理事 巻頭言

2022年02月14日

経営課題を整理し、新たなチャレンジを

北海道中小企業家同友会 代表理事
サンマルコ食品(株) 代表取締役社長 藤井 幸一

 

 

 

 2021年も2年連続でコロナ騒動に翻弄された年でした。最近はワクチン接種率もかなり高くなり、感染者数もおさまりつつあります。しかし今年が終息の一年となるのかは全く分かりません。第6波の可能性もあり、油断は禁物です。


 コロナが終息しても、生活スタイルや、ビジネスのやり方は大きく変わり、コロナ前に戻ることはないだろうと思います。要は変化にどう対応するかです。

 

3つの経営課題

 景気はまだ回復していませんが、コロナが落ち着くとアメリカのように徐々に景気が戻ってくる期待も大きくなっています。しかし、中小企業にとっては3つの大きな経営課題が横たわっています。


 一つは、原料資材の不足と価格の高騰です。昨年、輸入木材が調達できない等「ウッドショック」が起き、今も木材価格は高止まりしています。また、気候の影響でジャガイモ、玉ねぎ等の農産物が不足しポテチショックの再来も懸念されています。水産物も深刻な赤潮被害に見舞われました。


 二番めは、エネルギーの高騰です。元々本州に比べて北海道の電気料金は高いのですが、ガソリン、重油、灯油等も軒並み高騰しています。


 そして最後は人件費です。昨年10月1日より北海道の最低賃金は28円アップし889円となりました。コロナ禍により、売り上げ、利益が厳しい中での大幅なアップはストレートに経営を圧迫しています。勿論それぞれの企業が製品にこれらの分を転嫁できれば問題はないのですが、現実は大変厳しい状況です。

 

新たなチャレンジを

 こんな時こそ従来の取引は継続しながら、新たなチャネル、新たな分野へのチャレンジを試みる努力も必要です。新しい取り組みには、抵抗がつきものです。そういう時は、社員と危機感を共有し、全社員で話し合うことが大切だと思います。課題を整理しそれを乗り越えた時、会社も社員も成長するのです。


 チャンスは面倒なもの。会社の皆で知恵を出せば必ずやれるという気持ちを持つのです。「断る算段よりやる算段」です。世界のトヨタも創業時は車の会社ではなく、自動織機の会社でした。おそらくトヨタも、何かの事情で車という新分野にチャレンジしたからこそ今があるはずです。


 成功するかどうかは分からずとも、挑戦することが大事です。もし失敗したとしても、次のヒントが必ず出てきます。そのためには決して諦めないで、粘り強くチャレンジしていきましょう。チャレンジする会社、無理のきく会社は取引先にもなくてはならない会社となり、自分の会社しかつくれない製品も生まれてくると思います。

 

同友会でヒントと勇気を

 いろいろ試みる過程で悩んだり困ったならば、同友会を活用することです。経営者は孤独ですが、孤立してはいけません。支部の仲間、委員会の仲間に相談したり、事務局に問い合わせたりして是非活用してください。解決の糸口やヒントが見つかり、勇気がわいてきます。

 

 

良い経営環境をつくる

北海道中小企業家同友会 代表理事
(株)ネクサス 会長 曽根 一

 

 

 

地域を存続させたい

 未会員企業を訪問していると後継者不在の会社があります。そのため自分の代で会社をたたむという方もおられます。そんな時は「地域のために会社を残してください」とお願いします。中同協の広浜泰久会長は「地域から会社が一つなくなることは一つの地域がなくなることだ」とおっしゃっています。会社がなくなるということは雇用が失われることであり、さらなる人口減少につながるのです。


 私は会員拡大を目的として未会員訪問を始めたのですが、今は拡大もさることながら、地域を存続させたいという思いが強くなってきています。私個人は小さな力でしかありませんが、同友会という組織の力で地方都市の存続、発展を願って未会員訪問を続けています。後継者不在の時でも事業を畳むのではなく、できれば地場の企業に引き継いでいただきたいのです。

 

いつか帰ってきたい故郷に

 地域存続の鍵を握るのは子どもたちです。子どもたちが郷土を愛し慈しみ、どこに行こうといずれは故郷に帰ってこようとする気持ちを育んでいきたいのです。そのためには、学校教育だけでなく地域によって郷土愛を育む環境をつくっていきたいと思います。自分の生まれ育った土地のことを知り、ここが住みやすいところとなるように考えていくことで、より良い環境をつくることができます。


 また大人が子どもたちを見る目を優しくしていきたい。子どは騒ぐ、煩わしいという方もおられるかもしれませんが、子どもがいないと国は滅びます。世界的にみて日本の教育制度は十分行き渡っていると思います。かつ子育てのための制度も充実していると思います。でも子どもたちがこの国の将来に夢をもって生きていけるのかを考えると、不安なところもあります。私たち大人が子どもたちを温かい目で見守り、安心して子育てできる環境を整えていく必要があるのではないでしょうか。


 それは家庭だけでも学校だけでも十分にはできません。大人たちが、この課題に真剣に向き合うことで地域を変えていくことができると信じます。まずは子どもに対して優しいまなざしをもって接していきたいものです。

 

良い経営環境をつくろう

 地方都市における人口減を改善するためには、若者に地域で活躍してもらわなくてはなりません。そのためにも事業の継続と併せて、同友会の知恵と行動力、そしてネットワークが必要です。


 私たちは個々の事業のために努力しますが、それと同様に他社事業の継続にも関心を寄せ、地域の存続発展を考えていかなければならないと考えます。いまこそ同友会の目的の一つである「良い経営環境をつくる」ことが求められています。

 

 

経営指針見直しのとき

北海道中小企業家同友会 代表理事
(株)ティーピーパック 代表取締役 池川 和人

 

 

 

コロナ禍で変わったこと

 コロナショックは10年先の未来を連れてきたと言われます。昨年はコロナ禍に加え、原材料値上げ、最低賃金引き上げ等、企業を取り巻く環境が厳しさを増した1年でした。


 中小企業の元気は地域の活力に直結します。そのため同友会には、喫緊の課題である事業承継、人材の確保と定着、育成に関する体験を踏まえたリアルな学び合いが求められています。


 就職情報会社の調べによると、社員が会社を辞めたいと思う理由は、これまで多かった「職場の人間関係、待遇への不満」から、コロナ以降は「デジタル化対応への不満」や、「非常事態の中、経営者が会社の現状や未来を語ってくれない」という不満に変わっているそうです。若い社員は、人生を託すに足る会社や経営者であるか、真剣に見つめていることがわかります。

 

シニア社員の学び直し

 日本で在宅勤務が進まない理由の一つに、自分一人では働けないシニア層が多いという指摘があります。雇用期間の延長が求められる中、特にシニア層の学び直しは企業にとって必要不可欠な課題です。


 ICTのスキルアップも必要ですが、経営理念に基づく事業再構築を進めていくため、シニア社員がどのような役割を果たすべきか自覚することが問われているように思います。


 1993年に中同協が提唱した「21世紀型企業づくり」は、「国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業」「社員の創意や自主性が十分に発揮できる社風と理念が確立され、労使が共に育ちあい、高まりあいの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団」をめざそうと呼びかけました。人育ては個々への対症療法だけではなく、社員がいきいきと仕事に取り組めるような社風づくりが大事ではないでしょうか。

 

経営指針見直しのとき

 いま経営者には、時代の変化を捉えた学びを基に、経営指針を見直し、経営計画の更新が迫られているように思います。


 当社の経営理念は、「社員の幸せを通じて社会に貢献する」。社員の成長と共に企業が着実に発展していくことをめざす会社です。社員一人ひとりの「個」を尊重し、働き方も多様な選択肢を用意しています。


 売り上げ構成は、水産関連や観光土産品のパッケージが大きなウエイトを占めており、コロナや原料不足、赤潮被害などで苦しい思いをされているお客様もたくさんいます。だからこそ、経営計画の見直しにあたっては、地域を守ることと、道外に流れている付加価値を取り込むことを重視しました。


 翻って2022年は、先輩会員からつないだ「学びの同友会」の真骨頂が試されるときです。ぜひ多くの会員の皆様が「人を生かす経営」を実践し、明るく元気に地域を支えていきましょう。