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【70号特集3】同友会で学び実践して45年

同友会で学び実践して45年
―経営者としての覚悟を語る―

 

(株)ライナーネットワーク 取締役会長 安井 清吉(旭川)

 

2019年10月に同業他社の経営を引き受け、同友会での学びの実践に改めて挑戦している安井氏。同友会型企業づくりの本質とは何か、経営者人生をどう生きるのか。安井氏の覚悟から、経営者と社員が信頼関係を築く原点を学びます。

 


 

 36年前に私と父の二人で創業したライナーネットワークは、旭川市とその周辺を対象としたフリーペーパー『ライナー』を週2回、毎回約17万2000部発行しています。紙面には地域のイベントや求人情報などを掲載し、地元企業と住民をつなぎ、地域を元気にすることを使命にしています。今年4月に代表取締役を息子に譲り、取締役会長に就任しました。

 

後継者に必要なこととは

 事業承継を意識し始めたのは5年前です。厳しい時代を乗り越え20年間は増収増益を続けていましたが、広告媒体の主体がWebへ変わり、人口減少などを受けて市場が縮小期に転換し始めていました。社員も先が見えない不安からか、有望な若手や中堅が少しずつ辞めていっていました。


 私は現場を社員に任せるようにしていましたが、危機を感じて経営改革を模索し、全社会議を開いて、具体的方向性や道筋について提示しました。しかし情勢の変化を共有できていなかったのか、なかなか社員に理解されません。当時2名代表の一人だった社歴20年以上の編集長が反対を表明したことで、社員が上層部の不一致に疑問を持ち、社内に戸惑いが広がってしまいました。


 そこで今の体制では前には進めないと腹を決め、新役員体制をつくるために当時非常勤取締役だった息子に相談しました。息子は叔父から譲られたそば店を5年間経営していた実績があったこともあり、ライナーネットワークの後継予定者という位置づけで常勤することにしました。社内は徐々に落ち着きを取り戻していきました。社長の息子が経営を継ぐという路線づくりは、社員にしてもある種の納得感があるのだと改めて実感しました。社員も「改革を進めよう、後継者を育ててみよう」という気になってくれたようです。


 後継者づくりで大事なのは、経営者としてのポテンシャルを見出し、次期経営者としての教育を早い段階から受けさせることだと思います。では経営者のポテンシャルとは何なのか。それは生き様に通じるものだと思います。社員は常に社長の背中を見ています。第一に会社を潰さない決意で懸命に経営に取り組むこと。第二に社員をパートナーと捉え、信頼し感謝を忘れないこと。その姿勢で有言実行し続けることで、社員も応えてくれます。


 息子が私の後を継ぐ決断をしたことも、私の生き様が伝わり、意気に感じてくれたからではないかと思っています。息子には虚勢を張らず、ありのままでいいと言っています。謙虚で真面目な努力家であってほしい。誰に対しても優しい経営者になってほしい。そして、自分を注意し叱ってくれる人を遠ざけてはいけない。そういう度量を持ちなさいと常々伝えています。彼を支えるもう一人の取締役にも、その姿勢や考え方を事あるごとに話しています。

 

同業他社の経営を引き受けて

 

座長の㈱アイワード、奥山社長と共に

 2019年10月、江別市と札幌厚別区を中心にして地域情報紙『まんまる新聞』を発行する「くらしの新聞社」(設立1999年、資本金300万円、従業員数19名)を子会社にしました。M&Aの打診があった当初は断るつもりでしたが、前社長に会い、地域に対する思いや願いに心を動かされ決断しました。このことを社内で説明し、誰をトップとして派遣するかという時に手を挙げてくれたのが、かの代表取締役編集長です。彼を子会社の代表取締役社長に任命しました。同時にライナーネットワークの代表取締役を彼から息子に変更する機会にし、結果として、私と息子の2名代表制になりました。私はくらしの新聞社取締役として週に一度江別に通い、新社長をサポートしながら再スタートを切ることになりました。


 くらしの新聞社を引き受けて私が感じたことは、同じ地域情報紙でも歴史や社風、考え方、方針がかなり異なるということです。まずは閉鎖的だった経営体質を変えるために「全オープン経営」を宣言し、収支決算書の数値を社員に公開しました。コンプライアンス違反になっていた労働時間の問題に手を入れ、残業制限と土曜日曜を完全休日に定め、労働環境を改善しました。あわせて給与規定も見直しました。皆で稼ぎ、公平に利益を分配するという経営姿勢をまず示したのです。

 

コロナ禍での2社の変化

 

 2020年1月から始まったコロナショックでは、両社とも売り上げが3割減少し、大幅な赤字を覚悟しました。くらしの新聞社を引き受けた途端にこれですから、不運としか言いようがありません。


 ライナーネットワークでは、部署に関わらずお客様に向き合い、新たな売り上げと付加価値を高めるチャンスを全員で掴もうと「全社員営業」をトップである私が提唱しました。これによって部門ごとに経営の視点を持たせ、組織強化を図りました。社員も自主的に行動を起こし、組織を横断したプロジェクトチームをつくって学びあい、新たな仕事の模索が始まりました。

 一方、くらしの新聞社では、徐々に社長の表情が冴えなくなっていきました。その後も体調不良が続いたため、本人と話して編集の専門職としてライナーネットワークに戻ってもらい、くらしの新聞社の社長は私が引き継ぐことにしました。

 

社風を変えるのは協働する心

 

 私は2021年1月から、くらしの新聞社の社長として会社近くにアパートを借りて月曜日から金曜日まで勤務する不退転の覚悟で臨みました。これを機に、私はライナーネットワークの代表取締役を降りて代表権のない取締役会長になりました。私がライナーネットワークを離れることで新社長になった息子の決意も新たになったと感じています。


 くらしの新聞社では事あるごとに自社の理念と目的、方針を発信しました。朝礼では「大事なのは協働である」と伝えています。私の考える協働とは、信頼と連帯です。規律を守ること、部下や新人を丁寧に育てること、そして持ち味を生かし合うことです。これができると、自由に発言できる環境、真面目に仕事をする勤務態度といった会社の基準ができてくると思っています。


 社長の役割を果たすには、社員からの理解と協力が不可欠です。今いる社員は会社にとって真に必要な存在として感謝する姿勢がなければ、社員は心を開いてくれません。間違ったことには毅然と対応し、叱ることもあるが人格は尊重する。愛情を注いで育てる意識で接することです。すると、社員の意外な個性が長所として見えてきます。

 

同友会型企業づくりは高めあう関係づくり

 

 私は経営者が本気で学び合い自分を変革していくことが、人材育成や地域づくりにつながり地域創生になると考えています。挑戦の気概に満ち、経営者と社員が互いに信頼しリスペクトし合い、自由にものが言える風通しのいい社風の企業が増えていけば、自ずと地域も元気になります。


 〔図1〕は私が同友会での45年の学びから、同友会型企業づくりを表わした図です。企業づくりで最初に大切なのは①経営者の本気度と使命感です。そこから②社員を「共に会社を良くしていく一員」と捉え、③数値分析や経営指針づくりによって科学的かつ計画的な経営を行い、④環境整備と社員の採用と教育を積み重ねていくことが経営だと考えています。現場、顧客、地域を大事にしながら、このサイクルを進めることで年輪のように徐々に厚みを増すことが同友会型企業の成長です。

 

【図1】


 このように捉えると、全体を貫く「労使見解」の意義が理解できるようになり、自身の学びの立ち位置が分かるようになると思います。経営者と社員は人間として対等であり、協働し会社をつくっていく一員です。大事なのはリスペクトと感謝で、それぞれの持ち味を生かして高めあう関係なのです。

 

経営者の役割は未来をつくること

 

 激しく変化する時代だからこそ、物事の本質は何かと考え、自分や自社、ひいては社内のあるべき姿を思い描き、行動の基点とするべきです。現実と向き合いながらも、持続可能な循環型地域社会をいかにつくっていくのか。私たちには経営者としての覚悟と行動が問われています。大事なことは、エゴイズムとは全く逆にある英知です。そこに最も近いのが同友会運動であり、その理念や「労使見解」であると私は確信しています。


 同友会型企業づくりを通して、私たちが世の中を少しでも良い方向へと進める一助になればと思います。まずは「同友会で学び自社が良くなった」を体現することに、本気で取り組んでみようではありませんか。


(2021年10月8日「第36回全道経営者“共育”研究集会in苫小牧」第3分科会より(道研での報告をもとに再構成) 文責 山崎直子)

 

(株)ライナーネットワーク 取締役会長 安井 清吉(旭川)


■会社概要
設  立:1984年
資 本 金:1,000万円
従業員数:44名
事業内容:広告業、フリーペーパー(地域情報紙)発行、ポスティング

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