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【69号特集1】コロナ禍を生き抜く経営戦略!

2021年01月19日

コロナ禍を生き抜く経営戦略!

 

コロナ禍で厳しい経営環境の中、知恵と工夫で新たな活路を拓き、奮闘している2名の会員の実践報告です。小西鮮魚店は飲食店需要が激減する中、高級魚介類を詰め合わせた「コロナ勘弁してくださいBOX」を開発してネット販売に注力し、大きな反響を呼びました。ホテルテトラはインバウンドから半径200m圏内の法人営業にシフト。テレワークの法人契約や、工事関係者向け3食付きプランの電話営業などで、新しい顧客を広げています。

 


 

■報告1 (有)マルショウ小西鮮魚店 代表取締役 小西 一人(函館)

 

 弊社は水産物の卸売を行っており、顧客は道外の飲食店がほとんどです。4月7日に東京都の緊急事態宣言が発令され、次の日から3日間、売り上げが95%なくなりました。飲食店には魚が売れません。しかし、飲食店に行きたくても行けない人もいます。そういう潜在顧客にどうやって魚を売ればいいのか、お金の使い方の流れを変えられないかと考えました。

 

 

起死回生の商品が大ヒット

 

 そこで始めたのが「コロナ勘弁してくださいBOX」です。コンセプトはスーパーでは買えない飲食店のクオリティを、家庭に直接届けるというものです。中身はウニ、いくら、イカ、魚など、何でも詰め込んで値段は破格の1万円。それをFacebookで発信すると100件以上のシェアがあり、水産庁のページでも掲載されました。ただ、FacebookでPRしたため、そこからメッセージで何百件もの注文がきました。これでは管理しきれません。そこで、休眠していたECサイト(インターネットを利用した小売ビジネス)を稼働させ、サイトから注文してもらえるよう誘導し、管理できるようになりました。


 最初にマスコミで報道されてから、他のマスコミからもどんどん声がかかり、地方から全国まで報道されるようになりました。各所でニュースになると、1カ月で2000箱も売れました。しかし、注文が多すぎて深夜0時過ぎまで伝票を作成することになります。個人販売の管理も慣れていなかったため、誰に送ったのか分からなくなり、ひどい時は同じ人に6箱送るミスもありました。現場は混乱し、社員からは不満が続出、本当に行きあたりばったりの商売でした。

 

Facebookで大炎上

 

 当時、Facebookで「コロナ支援・訳あり商品情報グループ」という、30万人以上が参加しているグループがありました。コロナで困っているものを投稿すると、支援したい方が購入してくれるという趣旨でした。ここは絶対売れると思い、社員にも商品をつくってもらい投稿しました。困っている仲買さんを助けてあげたいという気持ちだったのですが、コロナとは関係なく、「売れていない商品」も集まってしまいました。


 商品を投稿した翌日、先輩から「Facebookが炎上している」という連絡がありました。ルールをしっかり確認しないまま掲載した結果、「このししゃもは偽物だ」とか「詐欺だから顔を出せない」など、たくさんの誹謗中傷を受けることになりました。掲載のルールで顔出しが必要だったため、自分の写真を添えてお詫びのコメントを返し、その投稿は削除しました。これは大失敗でした。


 弊社がいつも購入している漁師さんも困っていました。ホタテやカキは7月くらいまでに売り切らないと、産卵等で使い物にならなくなります。一度は袋叩きに遭いましたが、今度はルールをしっかり確認してリベンジしたところ、10tもの海産物が売れました。その後、旬の海産物をピックアップして第2弾、第3弾の企画を打ち出していきました。

 

商品価値を伝える大切さ

 

 もともと「コロナ勘弁してくださいBOX」は、友人の経営者が始めたもので、おもしろい企画だと思い、弊社でも始めることにしました。


 私は商品のネーミングやストーリー性、どのように伝えるのかを重要視しています。ネーミングで成功した事例があります。噴火湾の小さいニシンは市場では値段がつきません。半身で寿司一貫程度のサイズしかなく、小さくてさばくのが面倒だからです。でも、食べてみると脂がのっていて美味しい。この美味しさは伝えれば売れると確信し、「シンコニシン」という名前で売りました。


 シンコというのはコハダに成長する前の稚魚のことで、豊洲では1㎏4万円程で取り引きされており、寿司屋でも重宝されています。狙いどおり、「シンコニシン」は爆発的に売れました。大事なのは価値を伝えることで、ネーミングはその手法の一つです。一次情報も大事で、現場では気づいていない宝物が眠っていることがあります。ですから現場に出向き、自分のフィルターで見ることが必要です。

 

コロナ勘弁してくださいBOX

 

私の経営哲学

 

 私はPDCAのDとA、行動することが特に大事だと思っています。まずはやってみて、問題が起きたらどうするか考え、それからPやCも考えるようにしています。また、企業も経営者も外側の筋肉だけではなく内面の筋肉(コアマッスル)を鍛え、ブレない哲学を持つことが必要だと思います。平時は今までのやり方が通用しますが、非常事態の際は右も左もわからなくなるからです。


 私にはいつも「今がスタート地点」という気持ちがあります。たとえ会社が厳しくなっても、次はどうするかを考える。現状を受け入れて考えていくことが好きなので、今後も逆境にめげず前に進んでいきたいです。

 

■会社概要
設  立:1980年
資 本 金:500万円
従業員数:13名
事業内容:水産卸売

 


 

■報告2 (有)ホテルテトラ 取締役 三浦 新介(函館)

 

 弊社は道内で11館、道外で14館のホテルを展開しています。売り上げは2009年から右肩上がりで、昨年度は38億円でしたが、インバウンド需要が蒸発し、国内旅行客も激減したことにより、今期は29億円まで落ち込みました。経常利益は2016年が4億円、今期は1億2000万円の赤字でした。


 ホテル業界では1~6月迄に72件倒産しており、負債総額は430億円。経営体力のない会社が倒産している状況です。

 

テトラの64手

 

 弊社では毎年、経営計画書を作成しており、その中で自社の強みと弱みを分析します。2020年度はコロナ禍をふまえ、強みを生かした策を積極的に打ち出しました。その一部をご紹介します。


(1)「支出の削減」。最初に、主に固定費の削減に取り組みました。

(2)「ターゲットの変更」。外国人もメインターゲットの一部でしたが、海外営業を中止し、半径200m圏内の営業を中心にシフトしました。

(3)「口コミの獲得」。他社が休業している間に点数が上がるように取り組みました。その結果、札幌のホテルスピリットはトリップアドバイザーで全国25位になりました。

(4)「売上アップ テイクアウト」。飲食の来店がないのでテイクアウトを強化しました。

(8)「テレワークのワークスペース」。宿泊の客室の使い方を再考し、時代に合った商品を打ち出しました。

(9)「1泊3食付き」。工事関係者の需要を見込み電話営業をしたところ、八戸の宿泊需要が爆発的に増加しました。

(17)「テレワークの法人契約作戦」。北九州での契約が多く、首都圏でも需要がありました。

(21)「手作りマスク」。お客様にプレゼントして会社の価値向上を狙いました。

(23)「コツコツ作戦」。少しでも売り上げをつくる、イメージアップを考えてアイディア出しを行いました。

(35)「農業部」。もともと函館の新人研修の一環で、農地を借りて宴会で出た食品廃棄物をたい肥化して枝豆を育てていました。今年は管理職を中心に100万円の売上目標で販売し、宴会にも使用。本州のホテルでは屋上などを利用しています。

(36)「漁業部」。自分たちで釣った魚を活魚にして提供しています。

(46)「NHKの受信料削減」。これまでは部屋ごとに払っていましたが、閉鎖したフロアの分は払う必要がなくなりました。

(52)~(54)GoToキャンペーンにちなんだ企画も展開しました。「ゴトウ」という名前に対する割引や、お祝いでシャンパンタワーを提供する宿泊プラン、ホテルの部屋からリモート通信ができるサービスを実行しました。

(59)(60)№2や料理長の勉強会も始めました。

 

 それ以外にも、10月から社長が「幹部塾」を月1回、各料理長が「星三つ塾」を月1回、各管理職が入社3年未満の従業員を対象に「たまご塾」を、エリア・ブロック長は「幹部のたまご塾」を開催する予定です。皆で学んでパワーアップするために当社は動き出します。

 

<テトラの64手>

支出の削減

ターゲットの変更

口コミの獲得

テイクアウト

家賃の減額交渉

各館で収支を考える

ネットテスト

テレワークのワークスペース

1泊三食付き

マスクの転売禁止

テイクアウトのバージョンアップ

電話営業

ターゲットは国内客

パートの経費削減

広告を中止

油価格交渉

テレワークの法人契約作戦

人材の確保

キャンプ グランピング

マスコミ

手作りマスク

バイキングの中止

コツコツ作戦

バーベキュー

首都圏封鎖を予測、準備

東洋の魔女作戦

アベノマスクVSハゲノマスク

緊急事態宣言

テイクアウト合同チラシ

1泊3食営業

横手の宿泊停止

鶴岡の船乗り営業作戦

消毒液プレゼント

立山閉館

立山閉館

漁業部

エレベーター保守料金削減

社内ソーシャルディスタンス

買い物代行

つまようじ

新聞の解約

温泉の湯を販売

掃除の目標時間を朝礼で

山菜採り作戦

部屋出し強化案内

NHKの受信料削減

ОYО

ホテルテトラ千葉みなとオープン

フトバンクの掃除機ロボット

入口の手洗い場

ナイト1人・調理1人

GoToさんキャンペーン

GoToシャンペーン

GoToリモート

オンライン飲み会プラン

抗体検査キット付き宿泊プラン

ハンドフック付きプラン

感染防止機器購入

No2勉強会

料理長会議

スリーストーンズ会議

花火打ち上げプラン

貸し自転車

おせち、オードブル作戦

 

早く動いてチャンスを掴む

 何ごとも早く動き出すことが大事です。当社は、コロナ禍でホテルを閉めても閉めなくても厳しいのなら、閉めないで続ける方法を考えて実行してきました。マスコミへのPRも強化し、効果的に宣伝しました。


 さまざまな経済対策が打たれていますが、ホテルの復調には時間がかかります。何もしなければ淘汰されてしまいます。学びを積み重ね、チャンスを掴んでいきたいです。

 

■会社概要
設  立:1980年
資 本 金:1,000万円
従業員数:382名
事業内容:宿泊施設・レストラン・宴会・岩盤浴・ペットホテル・酸素バー・居酒屋等の経営



(2020年9月28日「函館支部9月例会」より 文責 佐合恵)