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【69号特集1】ウィズ・コロナの経営戦略

ウィズ・コロナの経営戦略

 

(株)秀岳荘 代表取締役社長 小野 浩二(札幌)

 

 登山とアウトドア用品店「秀岳荘」は新型コロナウイルスの感染拡大による休業要請を受け、ゴールデンウイーク期間の約2週間、札幌市内の2店舗を休業しました。その結果、約2億円の売り上げを喪失します。会社始まって以来の困難に、全社一丸となって立ち向かい損失を挽回。ピンチをチャンスに変えた秀岳荘の「ウィズ・コロナの経営戦略」の実践から学びます。

 

 


 

 当社は、登山とアウトドア用品の販売をしています。札幌市内に北大店、白石店の2店舗と旭川店の3つの実店舗に加え、ヤフー、楽天ならびにアマゾンでネットショップを展開しています。創業から65年、営業を続けていますが、一貫して「お客様に対して良いものを安く親切に」ということを大切に商売しています。

 

闘えない中での決断

 

 当初、私は新型コロナウイルスの影響を少し甘く見ていました。まさかこのような状況になるとは夢にも思っていなかったのです。1月に中国の武漢で新型コロナウイルスが発生したというニュースを耳にした時は、少しひどい風邪が流行っているのかなという認識でした。2月になるとダイヤモンド・プリンセス号で700人を超える乗客が感染するなど、国内外で感染が広がります。ついに4月には北海道でもクラスター感染が発生し、不安が募りました。


 4月17日、北海道にも緊急事態宣言が拡大され、大型店舗などに対し、4月25日から5月6日の間、休業要請も出されました。当社では毎年、ゴールデンウイークにバーゲンセールを行っています。セール期間中の1日の売り上げは、白石店だけでも最大で約2500万円になります。休業による売り上げへの影響を考えると本当に恐ろしくなりましたが、休業要請に該当する床面積1000㎡以上の白石店と北大店は休業し、旭川店は営業時間を短縮することを決断しました。札幌市内の2店舗の休業中は、通常営業を続けるネット販売の手伝いなどをしていました。


 仕事を終えて帰宅途中の車の中で、「闘う能力があるのに闘うことができない」というやり場のない悔しさから思わず涙を流したこともありました。

 

休業で2億円の売り上げが喪失

 

 休業の影響はすぐに、経営に重くのしかかってきました。4月25日から6日間休業しただけで、4月の売り上げが前年比48%まで減少しました。さらに5月6日までのバーゲン期間中は約2億円の売り上げを失いました。本来ならば、バーゲンセールの売り上げをそのまま5月の支払いに当てるところですが、売り上げを失ったことで現金が枯渇してしまいました。各銀行の預金を全部かき集めても、5千万円ぐらい不足します。銀行から借りればよい話なのですが、このような緊急事態にはできるだけ借金はしたくない。そこで、定期預金を解約して手元資金に約4千万円の余裕ができました。この間、社員には自宅待機をお願いし、100%の力で仕事に戻れるよう安全を確保しました。同時に雇用調整助成金の申請を行い、雇用と給与の保障をしながら営業再開に備える体制づくりに注力しました。


 休業要請は、最終的には5月15日まで延長されます。しかし、このまま休業を続けたら当社は存続できないと判断し、5月11日から営業を再開しました。


 ようやく再開に漕ぎつけたものの、3密になるようなバーゲンセールは開催できませんし、チラシ広告や新聞、ラジオでの宣伝も一切できません。本当に手も足も出ない状態です。5月の売り上げは前年比70%弱という非常に厳しい状況でした。


 そのため、創業以来初めて社長は役員報酬を3カ月間50%カット、他の役員については3カ月30%カットしたうえで、社員のボーナスの20%カットも行いました。また、再び休業しなければならない事態に備え、銀行から充分な資金の借り入れも行いました。

 

 

SNSによる販売戦略

 

 コロナ禍における販売戦略として、2月末に開始したLINEアカウントの活用を模索しました。偶然ですが今年の2月頃、今後の経営戦略の一つとして便利なツールを探していました。Facebook・Instagram・Twitterなど数あるSNSの中でも、LINEは全人口の60%の人が利用しています。さらに大企業も使用している点と、月々の費用が1万5千円という手軽さから、秀岳荘の公式LINEアカウントを開設していたのです。


 そこで、LINEクーポンによるセールであれば、集客をこれまでの6割程度に抑え、3密を避けながら一定の売り上げを確保できると考えました。6月1日から2週間、10%の割引クーポンを発行したところ、予想を大きく上回るお客様が来店され、白石店だけで1日に400万円を超える売り上げになりました。週末はさらに混雑することが予想されましたので、クーポンの期間を21日まで延長することにしました。この時期はメーカーも通常営業をしていたため、商品が不足する心配はありませんでした。3密を避けるためにも、あせらずに来店して下さいというメッセージをFacebookやTwitterに投稿しました。


 結果的にはこのセールが5月15日のボーナスシーズンと重なったこともあり、来店者と売り上げが日に日に増えていきました。また、LINEに未登録のお客様も今回は10%割引になり、年に数回お得なお知らせも届くシステムにしたため、1日に500人から600人が新たにお友達登録をしてくれました。その結果、6月の売り上げは前年比160%を達成しました。昨年の6月は創業以来最高の売り上げでしたが、その1・6倍の売り上げを記録しました。

 

 

キャンプブームを追い風に

 

 6月の売上内容を見て確信したのが、バーベキューも含め、空前のキャンプブームだということです。そこで7月18日から26日の9日間に「キャンパー応援クーポン」という企画を打ち出しました。その予告に合わせたかのように新聞、雑誌やラジオの取材がたくさん来てくれて、費用をかけることなく宣伝をすることができました。7月の売り上げは前年比127%。2カ月で失った2億円の売り上げのうち、1億6千万円以上を挽回しました。言い換えれば、お客様にそれだけのお買い物をしていただいたということになります。


 たくさんのお買い物をしてくださるお客様の姿を見ていると、休業期間中の辛く悔しい思いが消えていきました。今までの60%程度の集客になるので利益は減るかもしれませんが、新たなツールを活用し、お客様の安全にも配慮しながら、コツコツと売り上げをつくっていくのが一番良いのだと思いました。

 

北大店リニューアル店舗イメージ図

 

ピンチをチャンスに

 

 白石店は、国道12号線と環状通が交差する立地であるため、店舗周辺で渋滞を引き起こすことが長年大きな問題になっていました。2車線の国道に400mほどの車の列ができることもあり、渋滞のたびにバス会社や周辺住民からのクレームの電話が鳴り響いていました。そこで、コロナ禍をチャンスと捉え、国道に面した入り口を閉鎖し、駐車場にあった壁を取り払うことにしたのです。出入り口を変更することで車の流れが各段に良くなりました。


 また、店舗裏側の社員駐車場15台分もお客様に開放しました。6月と7月は駐車場の満車が続く状況でしたので、警備員に加え、私を含めた役員が駐車場内の交通整理をしました。こういう時だからこそ、役員が率先して雑務をすることで、社員が自分の仕事に集中できる環境づくりに努めたのです。

 

社員とともに

 

 当社は今回のLINEクーポンセールによって、今までとほぼ同様の売り上げをつくりながら渋滞問題も解決することができました。地域住民の安全を守るという意味合いでも大きな進歩を遂げることができたのです。加えて、LINE公式アカウントに登録していただいた新規顧客の男女比や年齢構成という貴重なデータも得ることができました。これらの副産物を利用してあらたな展開を検討していきたいと思います。


 現在進行中の取り組みとしては、20年以上にわたり登山専門店として営業している北大店を来春、リニューアルします。キャンプ用品の取り扱いを再開、強化し、白石店に来店するお客様の3割程度を北大店に誘導することで、白石店の混雑緩和と北大店の事業拡大につなげるのが狙いです。


 今回あらためて一緒に働く社員とその家族の安全を守ることが第一ということに気づかされました。コロナに罹患させない「安全」と、しっかりと給与が支払われることで、生活に不安がない「安心」です。地域で商売をさせてもらっているからこそ「買い手よし、売り手よし、世間よし」の精神で、社員とともにこの難局を乗り越えていきたいと思います。


(2020年8月24日「札幌支部会員応援連続企画(第2弾)第2回」より 文責 村井靖彦)

 

■会社概要
設  立:1962年
資 本 金:5,000万円
従業員数:72名
事業内容:登山・アウトドア用品の小売・製造