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【69号特集4】インタビュー 渡辺農機(株)代表取締役 渡辺幸洋(旭川)

私と同友会 ―社員と共に成長、変化する会社づくり―

 

 同友会に入会して2年目の年、社長就任を打診された渡辺氏は「社長とは何をすればよいのか」と悩み、「経営指針研究会」に入ります。「何のために経営するのか」を考え抜き、完成した経営指針は経営の羅針盤として勇気を与えてくれる存在になります。現在、全道の経営指針委員長として活躍する渡辺氏に、社員と成長、変化する会社づくりについてお話を伺いました。

 

 


 

─はじめに、会社と同友会入会のきっかけについて教えてください。


 当社は1908(明治41)年に創業しました。木製の臼の製作から始まり、今年113年目を迎える農業機械の製造販売を行う会社です。道内外を問わず受注しており、大手メーカーではできないお客様の細かなニーズに応えられるよう日々精進しています。


 5代目である私は札幌の専門学校を卒業後、当社に入社し社長を務めて12年になります。私が同友会に入会したのは、2007年のことです。知り合いから紹介を受け入会しましたが、2年経った頃、社長就任を社内で打診されます。「社長って何をすればよいのだろう」と悩む中、2009年に経営指針研究会第5期への参加を決意しました。


─経営指針研究会に所属した当初はいかがでしたか。


 経営指針研究会は同友会の活動の中でも学ぶ意欲の高い方が集まる会なので、同期や先輩経営者との交流の中で得たものはとても大きかったです。研究会所属当初、経営指針などは当社にはありませんでした。「何のために経営するのか」という問いに答えを出せず思い悩むことも多くありました。ですが、3カ月ほど経った頃、ふと自分の中で「何のために」という軸が明確になり、次のような経営理念として形にすることができました。

 

『信頼され続ける企業を目指して~
 私たちは、誇りを持ってお客様に喜ばれるモノづくりをおこない、地域と農業に貢献します。
 私たちは、感謝の気持ちを持って、常に前向きな姿勢で成長し、安心と満足を提供します』


 それ以来、経営指針は私が会社を経営していく上で勇気を与えてくれる存在となります。


 当社の経営指針書は「理念」「方針」「損益」「行動計画」の4つから構成されています。「理念」は変わりませんが「方針」は社員からの要望も加味して更新しています。経営指針はつくって終わりではありません。毎年、社員との会話の中で良いなと思うことがあれば盛り込むようにしています。毎年、社員だけでなく、融資先の銀行にも提出しているので、できるだけシンプルで伝わりやすくなるよう気をつけています。


─経営指針を作成した後、社内はどのように変わっていきましたか。


 当社では、私が社長に就任してから新しいことをたくさん始めてきました。とは言っても特別なことではありません。月1回の社内会議や年1、2回の個人面談、日報、社内報、朝のラジオ体操などです。きっかけは社員からの提案や私の希望です。大きなことというよりは、小さなことの積み重ねで、会社の一体感や社員同士の情報共有の場がつくられていったように感じます。


 数十年働く社員が新しいことを毛嫌いせず理解を示してくれたこと、慢性的な赤字から黒字に転換でき、結果がついてきたことも大きかったと思います。やめたこともたくさんありますが、やってみて初めて、自社になじむかどうかが分かるのでどんなことでもチャレンジすることが大切だと学びました。


 数年前には『働く環境づくりの手引き』に掲載されている10年ビジョンを活用し、社員全員に10年ビジョンを書いてもらいました。仕事、プライベートを問わず好きなことを書いてもらったところ、「給料は○年後にはこれだけほしい」「娘が○歳の頃、私は○○で…」という率直な気持ちを知ることができました。社員と会社の将来を想像しながら会社としての10年ビジョンの作成も行いました。


 当社は社員と共に変化、成長してきた会社です。社員が声を上げやすい環境、居心地の良い職場をめざしていけるよう経営者としてどんな時も穏やかでいることを心掛けていきたいと思います。


─同友会の魅力はどのようなところだと感じていますか。


 同友会は関われば関わるほど返ってくるものがあると感じています。私自身の学びの土台となり、学び続けなくてはいけないという原動力になっています。学びの幅が広く、さまざまな経営者と知り合えることも魅力のひとつです。飲み会の席でも真面目な話ができることが好きなところでもあります。また、同友会の例会ではお決まりのグループ討論も欠かせません。講演内容のアウトプットや参加者との意見のやり取りなど、講演会とは質の違う学びを深められます。“聞く”→“話す”→“実践する”のサイクルが大切です。


─2020年から全道経営指針委員長を担当されていますが、今後の委員会の展望は。


 私は全道経営指針委員会副委員長を5年ほど務めた後、今年、委員長となりました。全道の会員に向けて、経営指針や労使見解の周知、『企業変革支援プログラム』の活用と普及を掲げ活動に臨んでいます。労使見解にうたわれている企業家精神を基軸とした経営指針づくりは経営者の責務であり、全社一丸体制づくりの基本です。そして新しい時代の要請に応えるために、自社の存在意義を改めて問い直し、「21世紀型中小企業づくり」(※注1)の大切さを全道の会員企業に広め、経営指針成文化の実践を進めていきます。また、全道の会員を対象としたオンライン研究会などの実施も検討していきます。そうすることで今まで参加が難しいと感じていた会員にも普及できる良い機会になればと考えています。


 何より次の世代の経営者の方々に貢献できるよう活動していきます。私自身の成長や社内変革ができたのは、同友会で気軽に相談できる仲間や、ぶれない姿勢で経営に臨む経営者に出会えたからこそだと感謝しています。


─ありがとうございました。

 

■会社概要
設  立:1962年
資 本 金:4,980万円
従業員数:15名
事業内容:農業用機械器具等製造販売

 


※注1 「21世紀型中小企業づくり」(中同協第25回定時総会、1993年)
⑴ 自社の存在意義を改めて問いなおすとともに、社会的使命感に燃えて事業活動を行い、国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業。
⑵ 社員の創意や自主性が十分に発揮できる社風と理念が確立され、労使が共に育ちあい、高まりあいの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業。

(2020年9月30日収録 聞き手 西澤まどか)