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【55号】後継者の新しい社風づくり~悩みや課題と向かい合って~

2007年01月01日

北冷蔵(株) 取締役企画部長 西川 公人 氏(函館)

 

創業者と後継者の違い
 社長は私の父で3代目経営者。私は4代目の継承者です。


 創業者には、無から創業するパワー、他人に真似のできない独自の技術やノウハウ、カリスマ性があり、荒地を開墾し自分で設計した家を建てます。一方、後継者は、企業文化や企業風土、鍛えられた組織、確立した信用等、既にリッパな家が苦労せず手に入ります。ここに創業者と後継者の違い、後継者独特の悩みの原因があるのではないでしょうか。


 後継者同士で語り合う機会があります。後継者は社長に対する尊敬の念より劣等感や葛藤が強いように思います。そして、社長と競い合い、無理に結果を出そうとします。私もそうです。


 後継者は何をしなければならないのでしょうか。後継者は改革者であると同時に、リフォーム経営の担い手ではないのかと考えています。後継者のすべき事は、第1に、後継者と共に事業を発展させる人材を育てる。第2に、既存のビジネスモデルを時代にマッチさせる。第3に、信用を活用した財務体質の強化を目指すことだと思います。


業務改善運動
 私は大学卒業後、大手自動車メーカーで生産管理の業務を経験し、2001年当社に入社しました。入社後1年間は冷蔵倉庫荷役の現場作業に従事しました。この時初めて大企業と中小企業のギャップを痛感しました。作業は無駄だらけ。倉庫内の荷物を探す時間が多い。顧客意識の欠如。荷物の劣化、紛失は日常的でした。


 早速、業務改善会議を開催し改善活動に取り組みましたが、「できない」、「難しい」の連発。私は大手自動車メーカーの経験を生かし「なぜなぜ5回の法則」で真の問題点、原因を追究することから始めました。社員の努力の結果、1時間半の作業が1時間15分に短縮し、7人の作業が6.5人分で作業できるようになり、年間120万円のコストダウンに成功しました。改善結果報告会を開催しました。社長は「どうして今までできなかったのか」の一言。社員は「公人さんの言うとおりやったのに社長に怒られるのでは…」と言い出す始末。成果を出しても求心力は得られないものだと思いました。


 諦めずに、私は毎月一度の「役職者会議」を定例化しました。社内での情報を共有化し、各職場の懸案事項を討議しています。


 当社では「実務は体で覚える。実務以外の教育は必要ない」が当たり前でした。私は同友会と出会い、中小企業こそ教育が必要と実感しました。幹部教育は、同友会函館支部の幹部大学や共育倶楽部に受講・参加させ、中小企業大学校にも派遣しています。幹部への権限の委譲、新規設備の導入や積極的な営業展開、IT化の推進、社内システム構築等に取り組んでいます。ただ、幹部への権限の委譲は予想以上に進んでいません。


ISOの挑戦
 過去10年間の決算書を見て愕然したことがあります。7年間連続で利益が減少。利益が7年前の半分でした。


 私は同友会の先輩経営者にも相談し、お客様を大事にする、社内文化と社内風土を改革する、「共に育つ」を実践することを目的にISO9001の取得に挑戦しました。取得活動の方針は下記の通りです。


一、全社員、一人の落伍者もださないで取得しよう。
二、常にお客様の立場になって考えよう。
三、自分たちの仕事のルールを自分たちで決めよう。
四、「阿吽の呼吸」「言った言わない」を無くそう。
五、全ての書類はパソコンで作ろう。


出社拒否と、ISO再挑戦
 ISOのキックオフから3カ月。一部社員の出社拒否とISO9001取得活動のボイコットが発生しました。会議に不慣れなので話がまとまらない、パソコンが上手く使えない、記録を書くことばかりで仕事量が増えた、パチンコなど仕事後の余暇時間が奪われたのが理由です。その後、1カ月間ISO9001の取得活動はストップしました。そんな時、何人かの幹部社員が中心になって「生き残るためにISOは必要」「途中で止めないで最後までやろう」と全社員で話し合い、ISO取得再挑戦を社長に嘆願しました。


 ISO9001取得後、社員の意識は大きく変わりました。第1に、「お客様第一主義」の意識が芽生え始めました。第2に、「学ぶ」ことの重要性と楽しさが認識されるようになりました。第3に、社員に「自信」がつきました。第4に、「やらされる」から「やる」意識に変わりました。そして、第5に、社長の考えが少し変わりました。


社長就任に備えて
 社長にとって、今まで会社を支えてきた自信と事業は社長そのもの。成功体験は社長の勲章です。一方、後継者は現代感覚を身に付け情報も早く、危機意識が強い。社長と後継者、互いに思いが違います。


 最近、給与、賞与、退職金の改定で社長とぶつかり合うことがあります。親子であれば性格が似ているので“喧嘩”するのが当たり前と、考えると少し気が楽になるように思います。


 私が当社の代表に就任する時が来ると思います。その時を目指し、“社長から学ぶべき事を学べる環境”は大切にしたいと思います。社長の「これはダメだ」を反面教師に、焦らず、私の時代に備えて、今の私の思いを綴り学び続けて参ります。


補足 社長へのお願い
一、 名義株主をきちんと教えて欲しい。
二、 社長個人の資産・負債リストを作っておいて欲しい。
三、 社長が加入している生命保険を教えて欲しい。
四、 社長の人脈を教えて欲しい。
五、 社長の失敗談を教えて欲しい。
六、 引退する時期を明言して欲しい。

 


 

【設  立】 1950年
【資 本 金】 2,500万円
【従業員数】 25名
【事業内容】 冷蔵倉庫業、水産卸業