【55号】市場が四割減少する中で、社員と共に取り組む経営指針づくり
2007年01月01日
(株)牧野 代表取締役 牧野 康則 氏(豊浦)
当社の推移
当社は、1959年に私の父(現会長)が個人商店として創業致しました。人口5万人の地域に、建材販売店が8社あり、その中で、もっとも小規模会社でした。
創業から私が入社するまでの期間は現会長による総需要拡大期でした。私が入社してからは、前職の経験(国際港湾運送業、内装工事業)を生かし、北米・中国からの直接調達、地産地消、建築業界の中で健康・安全・安心というキーワードに基づく商品開発など他社との差別化に取り組んできました。
当社の置かれている現状
中同協発行の「経営指針の手引き」の中に、自分の会社の置かれている現状を知る事が重要と書かれております。
建築業界の目安として、新設住宅着工件数という数値があります。住宅を新築する際は必ず国に報告し、許可を得ないといけません。その数値をみますと、1990年は、全国で1,707,000戸、北海道90,000戸ございました。2003年には、全国で1,172,000戸、北海道50,000戸になっており、着工数は4割以上縮小しております。こういう状況下ですので工務店が10%減少。しかし、建築資材販売店はほとんど減少しておりません。
また、北海道は景気低迷による可処分所得の減少、公共事業の減少、さらに流通経路の変化により競争の激化が進んでおります。
かつては、メーカーから商社、販売店に、そして工務店へという流れでしたが、現在では、メーカーから直接工務店に、あるいは、商社も直接工務店に卸す、といったような様々な変化が生じております。
また、通信販売が発展し、メジャーな商品が、当社の仕入れより更に安い価格で販売されたり、ダイレクトメールによる商品の直接販売が増加しております。
経営指針研究会に参加
「経営理念」「経営基本方針」「会社の基本的方向と目標」「オンリーワン企業の具体的方向性」と色々作成し、1990年から、社員全員と月に一回の勉強会を開催してきました。「どうすればわかってもらえるのだろうか」と考え、文字の大きさを変える等の試行錯誤を繰り返して参りました。私は、「きっと社員は、少しはわかってくれているであろう」と思っていたのです。
ところが、5年前、勉強会を終えた後に、当社No.2の社員から「社長の言っている内容を理解できている社員は、誰もいませんよ。」と言ってきたのです。今でも、その時受けた衝撃は昨日の事の様に思い出します。私は色々と悩み、いままでの道研では、必ず経営指針の分科会に参加してきました。
苫小牧支部では、昨年経営指針の研究会が立ち上がりました。社員にも学んでもらおうと思い、社員数名と参加しました。研究会が進行し、グループ討論になって分れていて討論していた時のことです。私は、過去の自社の勉強会の中で「安全、安心で快適な暮らしの中で提案する」が当社の経営理念だと言い続けてきたにもかかわらず、社員の一人から「当社に経営理念などありません。」といった発言が耳に入りました。グループ討論をしていたのですが、それ以降の内容がまったく耳に入らなくなってしまいました。「私は一体何をしてきたのだろう」、自分の力不足を痛感させられました。
そこで、私が所属する西胆振支部でも「なにがなんでも経営指針研究会を立ち上げてほしい」と働きかけ、今年1月に立ち上がりました。現在、研究会に参加し一生懸命学んでいます。
経営指針研究会に参加し明確になったこと
経営指針研究会に参加して学んでいる内に、当社の長所が明確化されて参りました。
一、社員が商品知識に明るく経験が豊富である。
二、特定の建設会社との関係が深く、相互の信頼関係が構築されている。
三、本物に特化した商品のバリエーションが豊富である。
四、オリジナル建材を有している。
五、木材、合板に関する豊富な知識と、幅広い人的ネットワーク。
六、北米・中国からの輸入商品事情に明るい。
七、ダイレクトメールによる実績。
八、建材販売業として工事関係に明るい事。
九、財務内容が健全である。
十、経営者一族による会社の私物化を極力排している
一方、短所も明確になりました。
一、社員一人一人が会社の理念・方針を理解しようとしていない。又は理解しても実行に移し、結果を出すことが出来ない。
二、営業担当の若いスタッフが育っていない。
三、特定の建設会社との関係が深いことによる反発。
四、新規得意先の広がりが不足している。
五、輸入商品知識、事情の情報の共有化が図られていない。
六、安易に社長に頼ろうとする雰囲気がある
ということです。
差別化経営に取り組む
私は、「価格競争をする事は会社をダメにする」と、嫌と言うほど聞かされて参りました。ですから、「とにかく様々な差別化」をして参りました。
一、事業領域~建築に関わる専門業者として経営理念に基づく商品、技術サービスを個別に提案する。または「健康、安心、安全」をキーワードとしたパッケージとしてお客さまへ提案する。
二、商品~「健康、安全、安心」で本物に特化した建築資材(特に木質系建材)を中心としてお客さまに提案する。
三、技術~専門工事のノウハウを提供する。
四、サービス~商品の特性、施工技術をお客さまに提案する。
以上のような差別化に取り組んでおります。
個別とは、木材やシステムキッチン、浴槽といった単体商品を個別にお客様に提案するということです。
パッケージとは、例えばスポーツセンターの内装工事を請け負った場合、内装工事だけではなく、そこに入れるトレーニング機器も一緒に提案をしていくということです。要は、責任の所在をあきらかにしていくと言うことでございます。
これらの点をふまえ、経営方針、経営理念作りに取りかかっているところです。
【設 立】 1984年(創業1959年)
【資 本 金】 1,000万円
【従業員数】 10名
【業 種】 木材並びに建築資材の卸売業、内外装仕上工事業、外構資材、外構工事用資材の輸入・加工・販売、インテリアグッズ、家具の輸入販売及び据付工事