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【55号】地域の誇りとなる『洋菓子きのとや』目指して~お洒落な街「札幌」を提案~

2007年01月01日

(株)きのとや 代表取締役 長沼 昭夫 氏(札幌)

 

 

五つの日本一をめざして
 牧場やスーパーに勤めた後、35歳のときに「お菓子屋ってすばらしい、お客様が幸せそうな顔をしている」と語る義父の勧めで、『洋菓子きのとや』を創業しました。オープンしてからしばらくの間、思うようにお客様にお越しいただけず、悩んでおりました。悩んだ末、「お客様がお店に来られるのを待つだけ」という「待ちの商売」ではいけないと思い、積極的にお客様のところへ売りにいくことを考えました。それが、バースデーケーキの宅配です。しかし、注文をいただくためには、お客様に「美味しい」と認められなくてはなりません。そのため、最高の材料で、手間をかけ、新鮮なものをお届けする努力をしました。当時珍しかったケーキの宅配はメディアで取り上げられ、創業して4年目には、おかげさまで1店舗で2億5,000万円を売り上げるまでになりました。


 ある時、親交のあった問屋さんの営業担当者から「洋菓子専門店で年間売り上げ5億円になれば日本一になる」と聞かされました。その話に感化され、「目標は高いほうがよい」との思いから、


1)1店舗当りの売上高日本一
2)おいしいケーキ日本一
3)お客様満足日本一
4)1店舗当りの利益日本一
5)従業員の賃金日本一


を目標に掲げて営業を続けております。目標を持って挑戦を続け、創業後12年目には1店舗11億5,000万円の売り上げとなり、1店舗当たりの売上高日本一と言われるようになりました。



美味しいケーキをより多くの人に
 創業から長らく白石店(創業店舗)のみで営業を続けて参りました。おかげさまでお客様からの支持が増え、たくさんのお客様に来店していただけるようになりました。有難いことに札幌市内でも遠方から足を運んでくださるお客様も増え、1店舗だけでは多くのお客様に満足していただける十分なサービスを提供していくことが難しくなってきました。


 白石店は札幌の東に位置しておりますので、「西の地域にもう1店舗あると、北区や西区に住んでいるお客様が利用しやすくなる」と考え、1997年に琴似店をオープンしました。


 長い間、百貨店へ出店する意思はありませんでしたし、お話があってもお断りしていたのです。しかし、大丸百貨店から2000年(大丸札幌店開店の3年前)に「札幌店を開店するので出店してほしい」とのお話があり、「この縁を大切にしよう」と思い切って出店を決意しました。2001年には、三越札幌店からも出店要請があり、受けさせていただきました。こうして4店舗になり、郊外のお店にお越しいただくことが難しいお客様にも、『洋菓子きのとや』のケーキをお届けできるようになりました。おかげさまで三越店も大丸店も順調に売り上げをあげさせていただいております。



『きのとや』ブランドの新商品開発
 『洋菓子きのとや』といえば生ケーキというイメージがお客様にはあります。ですから、生ケーキは、最高の素材を使い、最高の技術と手間をかけて、極上の美味しいケーキを提供したい。そうすると生ケーキの個数を今以上に増やすことが難しい。その一方では、社員が夢と誇りを持ち、企業として成長し続けることも課題になります。そのため、既存店舗での販売だけではなく、全国の北海道物産展やネット販売などへと販路を広げていくことが求められてきました。


 そこで、最近は長距離輸送可能な商品開発に力を入れています。たとえば、「チーズタルト」・洋風どらやき「きのら」・「札幌農学校」などの焼き菓子・クリームチーズでふんわり仕上げた「札幌スフレ」など、全国に販売できる商品を作りました。2年前、大阪のデパートで開催された北海道物産展に初めて出店。チーズタルトが何と1万2,000個も売れ、「こんなすごいマーケットがあるのか」とびっくりいたしました。最近では、北海道物産展でのスイーツの売り上げが急増しています。


 現在も新商品のコンセプトを商品企画室で考案し、商品開発担当のプロ・パティシエ集団がそのイメージを形にして、新商品の試作を重ねています。これからは、お土産菓子以外の分野でお客様が認めてくれる高い価値を提供し、優れたブランドイメージを獲得出来るお菓子企業を目指していきたいと思っています。



スイーツ王国さっぽろ構想
 北海道はスィーツ原材料の宝庫であり、札幌は洋菓子が似合うロマンあふれる街です。また、道外のデパートでは、「北海道物産展ならはずれがない」と言われています。それほど北海道は食の品質に定評があります。「新鮮な素材が入手でき、お菓子がおいしいと感じられる気候である」という恵まれた環境に道内のお菓子業者も消費者も気付いていませんでした。いまこそ、札幌といえばスイーツの街と呼ばれる「スイーツ王国さっぽろ」の実現に向けた運動に力を入れ、常に新しい話題を提供していかなくてはなりません。


 最近札幌で注目を集めたスイーツは、チョコモンブランです。「みんなでチョコモンブラン作ろう!」と札幌洋菓子協会の会員に呼びかけると、各店がオリジナルの味にこだわったチョコモンブランを発売し、大変な話題を呼びました。その後「コンペをして、グランプリを獲得した作品を皆でつくるのはどうか?」という気運が高まり、スイーツ王国さっぽろ推進協議会が設立され、「札幌スイーツ2006」というコンペが開催されました。この推進協議会の目的は、


1)札幌らしいオリジナルスイーツの開発
2)札幌のスイーツを世界にPR
3)スイーツを中心とした新たな都市型観光の提案
4)優れたパティシエの育成です。


 “スイーツ王国”という言葉には、札幌をスイーツの生産基地にし、日本全国に広く販売するというイメージもあります。しかし、当協議会では、「全国から札幌にスイーツを食べに来ていただきたい」という思いが強いのです。そのためには、スイーツを食べられるカフェをもっと作らなければいけません。スイーツは、雰囲気の良い所で、美味しい紅茶やコーヒーとともに食べて初めて美味しいと感じられます。観光客がスイーツを購入しホテルの部屋で食べるような状況では、決して美味しいとは感じられないでしょう。ロマンと恋の街札幌をパリのようにオープンカフェ、スイーツカフェでいっぱいにし、ケーキを食べながら市民や観光客が語り合う街を提案しています。


 また、「お菓子の勉強をするなら札幌」と誰しもが思えるような街にしたいものです。個人経営をしているオーナーパティシエの店がどんどん増え、それぞれのお店にオリジナリティあふれるお菓子が並び、それぞれのお店にファンがいる。そんな街に出来れば素敵ですね。
札幌にオーナーパティシエは増えてきていますが、まだまだ不十分だと思います。独立しようとするパティシエの不安を軽減し、開業をしやすい地域環境を整えるなど、多様な支援策を充実させる必要があります。


 今大通り近辺では、ビルの建て替え計画が進んでいます。この時期に、30年後を見据えてしっかりとした街づくり計画を立てることが大切です。ファッション業界も、理美容業界も、そして洋菓子業界も協力して札幌をファッショナブルな都市空間にし、市民も観光客も笑顔で幸せそうに語り合う街になること願っております。

 


 

【設 立】 1985年12月
【資本金】 3,000万円
【社員数】 180名
【業 種】 洋菓子製造販売