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同友会は、中小企業の繁栄と、そこで働く全ての人の幸せを願い、地域社会の発展のために活動しています。

【55号】地域ブランドをつくる~カキにあう日本酒づくりとディアハンター~

2007年01月01日

丸成鈴木建業(株) 代表取締役 石森 将敬 氏

(北海道中小企業家同友会釧路支部 幹事長)

 

 

地域ブランドをつくる
 こんにちは。報告に入る前に、釧路支部が11月1日に発売する「北のさくらさく」と厚岸の「カキえもん」を召し上がってください。釧路支部会員の牡蠣漁師の中嶋均さんが参加していますので、最初に牡蠣の説明をお願いします。


 釧路支部の管轄地域は釧路支庁管内全域です。法人企業数は4,600社で、同友会会員数は440社です。法人の10%にあたる460社会員を目指して会員拡大運動を積極的に行なっています。


 2006年1月に「地域ブランドを考える会」を立ち上げました。厚岸のカキに合う地酒づくりを目指す「カキに合う地酒グループ」、道東で急激に増えて社会問題になっているエゾ鹿を狩猟する「ディアハンターグループ」などを組織して、地域のブランドをつくろうと活動しています。


厚岸のカキにあう地酒づくり
 カキにあう地酒は2005年11月に三重同友会代表理事で、(株)宮崎本店(清酒「宮の雪」製造)の宮崎社長を講師に招いて講演会を開催したことがきかっけになりました。宮崎社長は中同協の副会長も務めていらっしゃいます。講演が終わってから宮崎社長に厚岸で「カキえもん」を召し上がっていただきました。その時に宮崎氏は「こんな美味いカキは食べたことがない。牡蠣にあう酒は白ワインだと日本人は長らく信じてきたが、地酒が一番合うと思う。支部で地酒を開発してはいかがですか」と助言をいただきました。


 早速、牡蠣漁師の方と地元の福司酒造の社長さんに集まってもらい、酒づくりが始まりました。酒の名前は全国に公募して800件の応募がありましたが、京都同友会会員の創夢西日本社長の峰松日出夫さんの作品に決まりました。桜はカキ産地の厚岸町の町花で、花見をする5月は牡蠣が一番美味しくなるのでこの名前に決めました。ロゴと瓶の挿絵は釧路管内厚岸町在住の画家、安田枩平さんに依頼しました。安田さんは流氷をモチーフにした作品が多く、アフリカや中国にも取材旅行に出かけている日本画家です。


 「北のさくらさく」は2006年11月14日から発売を開始しました。北海道産米を100パーセント使用した純米吟醸酒が500ml瓶で3,000本完成します。『北のさくらさく』と厚岸の最高級カキ『カキえもん』をセットにして限定1,000セットを5,000円(送料税込)で販売しました。


 釧路で日本酒を造っている酒蔵は福司酒造しかありません。それは日本酒を造るにはあまりにも過酷な気候のせいです。1887年には釧路には26軒の酒蔵がありました。1970年には福司酒造だけになってしまいました。社長の梁瀬之弘(やなせ・ゆきひろ)さん(49)は「戦争中の米不足によるアルコール添加日本酒が戦後も流通して、日本人が古来から呑んでいた純米酒が減ってきている。北海道の酒の消費の80%は本州の酒だ。灘や伏見などの大手酒造メーカーが攻勢をかけてきて、地域の酒蔵が消えていった」と指摘しています。地元の牡蠣と純米吟醸酒を楽しむ食文化を釧路支部は提案したいと思います。


エゾ鹿狩をツアー商品に
 東北海道には30万頭を超えるエゾ鹿が生息し、農業や交通に多大な被害を与えています。会員の皆さんには,鹿に衝突されて車を全損する方も続出しています。道東の人は命がけで暮らしているのです。行政は個体数を5万頭まで削減するために様々な施策を講じていますがなかなか成果があがりません。私たちはエゾ鹿と住民との共存のためには適正な狩猟が欠かせないと判断しました。


 しかし、地元のハンターは高齢化が進み、エゾ鹿の繁殖に狩猟が追いつかないのが現状です。そこで、広く全国のハンターにエゾ鹿狩猟を呼びかけるツアーを釧路支部は企画しました。「本州のハンターの皆さん、北海道の鹿を減らしてください」と呼びかけたのです。地元のガイドと一緒にエゾ鹿猟を楽しんだ後は、狩猟したエゾ鹿肉を真空パックで自宅に送付できます。さらにエゾ鹿を剥製にして送付できるサービスをつけました。12月25日に狩猟が解禁になりましたが、全国各地から問い合わせが相次いでいます。


会員の連帯が強まる
 地域ブランドについて突拍子もない意見を自由に出し合う中で、会員の間に連帯感が生まれました。会議で話し合っているうちに、夢がどんどん膨らんでいきます。ゼロの状態から企画を組み立てる喜びがあります。一つひとつハードルを乗り越えていく過程が企業経営と似ていて面白いのです。会議がとても楽しくて、会社の会議もこのように進めたら中身のあるものになると思いました。外に向かって情報を発信していく同友会。そのことによって内部の連帯も強まるのではないでしょうか。


 上手くいかなかった企画もありました。医療と旅行を結びつけた「メディカルツーリズム」を企画しましたが、お客さんが集まりませんでした。しかし、グループの会員は来年度に向けて新たな企画を練っています。上手くいかなくても会の商品企画力が磨かれてくるのです。失敗もできる会なのだと会員は伸び伸びと活動しています。


 活動を通して会員が地域のことを考えるようになりました。地域がよくならなければ企業はよくなりません。地域をよくするために汗を流す意識が会員の中に生れました。会員以外の経営者も地域ブランドの活動に参加していますが、同友会に入会してくる人も沢山います。


同友会は運動体
 同友会は運動体です。会員が増えないと会や会員の質は高まりませんし、地域は良くなりません。同友会の会員はこのことに確信を持たなければなりません。釧路支部の会員数は440社ですが、昨年の4月から今まで120社入会しています。順調に会員拡大が進んでいる要因として、地域ブランド考える会の存在が大きいと思います。同友会の企画にマスコミや市民が注目するようになります。そうすると新会員が増えます。会員も会の動きがよく見えるので、退会者が減るという好循環が生じています。


 地域を愛そうという気持ちを同友会が育てていかなければなりません。釧路は景気が悪いし、シャッター通りや駐車場ばかりが増えてきました。でも若い経営者が地域のことを考えるようになった。地域の文化を育てる価値観で会員が結びつくようになった。私は、強い絆で結ばれた共同体を築きあげたいと思います。会員は同友会の活動を通して、金銭だけではない大切なものが世の中にはあることを理解できるようになった。中小企業で働く誇りが呼び覚まされた。これは同友会運動の偉大な成果です。


〈座長まとめ〉
 ブランドとは消費者に意識される無形の価値です。目標をしっかりと掲げて、支部として地域に何ができるのかを実践していく。地域の隠れた可能性を発見する試みが「地域ブランドを考える会」です。リスクをおそれず、会員の拡大につながる運動体として企画を磨いていくことの大切さを確認したいと思います。そして同友会の実践を自社の発展にいかして参りましょう。