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【55号】今、会員企業はどんなことに力を入れているか~景況調査にみる会員の声~

2007年01月01日

北海道中小企業家同友会 経営・政策局長 西谷 博明 氏

 

 2006年4月から、中小企業家同友会全国協議会(中同協)の景況調査(DOR)に合わせ、北海道独自の景況調査を実施することになりました。地域業種を勘案して600社の会員企業を抽出し、四半期ごとに中同協から送られてくる調査用紙に回答していただいています。


 これまで、4~6月期、7~9月期の2回の調査結果をまとめ、「中小企業家しんぶん(北海道版)」で発表してきました。業況判断DI(「好転の割合」―「悪化の割合」)は、別表のように北海道と全国との格差は拡大し、道内の経営環境はますます悪化する気配です。その中で、会員企業は様々な経営努力をし、厳しい経営環境を乗り越えようとしています。紙幅の関係で「中小企業家しんぶん」では紹介できなかった会員企業の経営努力を、本誌を借りて7~9月期調査よりまとめてみたいと思います。



経営努力の共通点
 調査用紙に記述していただいた「経営上の努力」には、業種を越えて共通した特徴がいくつかあります。
第1に、新規事業、新分野への進出を模索する動きです。
第2に、自社ブランド製品や新商品の開発に力を入れ、付加価値を高める努力です。
第3に、組織運営の見直し、コスト管理の徹底や生産性の向上などによって利益率を高めることです。
第4に、販路の拡大です。首都圏を中心とした本州市場の開拓、中国など海外市場への挑戦などです。
第5に、多品種少量生産、短納期、設備投資などに力を入れ競争力を高める攻めの経営に徹することです。
第6に、金利の動向に注意を払いながら、金融機関との連携をより強化することです。
第7に、経営指針を確立し、社員教育に力を入れ、企業全体のレベルアップをはかることです。



新分野、新規事業に力を入れる建設関連業
 建設関連業では、地道な営業努力を続けながらも、新分野、新規事業に力を入れている記述が目立ちました。「新たに建築廃材や木くず、流木等の受け入れを開始、炭を生産する設備投資をした」(舗装工事業)。「当社は環境保全関連のコンサルタントとして、道内外に多くの実績と高い評価を受けている。これらのノウハウを元に、環境関連分野への役務の拡大を図っている」(建設コンサルタント)。「外部機関と連携した技術力向上と技術者育成をはかりながら、新領域、先端技術分野の開拓に力を入れる」(建設コンサルタント)などです。


 しかし、「小都市においては、やはり民間のみでは会社はなり立ちません。官公庁の継続的な発注を期待したい」(建設関連業)との声が、多くの建設関連業のいつわざる気持でしょう。



短納期、多品種少量生産、オリジナル製品の開発で競争力のアップをはかる製造業
 原材料の価格の上昇、中国など海外からの安価な製品の流入など、国際的な競争にさらされている製造業ですが、自社の強味をいかして展望を切り開こうとしています。


 「最近は中国から安価な製品が入ってくるようになり、従って新規顧客を増やし、短納期物件、及び工事込みの物件の受注に努力をしている」(強化プラスチック製造)。「多品種少量生産を更にきめ細かくロット割りを実施し、変化に対応可能な体制づくりをめざす」(農業機械の製造)。「当社の得意とする分野に対する技術力の向上と、オリジナル製品で提案営業の強化をはかる」(金網の製造)などの声が寄せられています。

営業力の強化、利益率の向上をめざす流通・商業、飲食業
 個人消費の低迷で、厳しい価格競争を強いられている流通・商業、飲食業は、積極的な店舗展開や営業力の強化、コストダウンによる利益率の向上に努力しています。主な事例は次の通りです。


 「通販、100円ショップ等物流商流の変化への対応業として営業活動を強化して成果をあげたい」(事務用品販売)。「新規需要の開拓による売上高の増加、さらに人件費、その他経費の節減を強化する」(スポーツ用品小売)。「店舗展開による新製品の輸入、陳列により来店客が増加し、新規客を常客とできる。新規商品の事業所を立ち上げ、訪問、店舗、ネットにて売上拡大を計る」(食料品小売)。「営業利益の確保を第1目標として、経営会議を必ず行い現場への落し込みを徹底。金利動向を確認し、各金融機関と密に話し合いをする」(飲食業)。「年度頭初から売上より粗利益率の向上を目標にし、全社員がそれぞれの持場でコスト管理に力を入れ、思った以上の改善につながった」(卸売業)。



経営指針の確立で、企業の総合力を高める
 各業種を越えて共通しているのは、経営指針を確立し、共育に力を入れて企業の総合力を高め、販路の拡大や地域になくてはならない企業づくりへの挑戦です。


 「経営者側と従業員とが社内状況・情報など色々なことで話し合いを重ね、今何をしなければならないかの共通認識を強めたい」(総合レンタル業)。「経営者及び幹部の成長なくして部下の成長なし、共育関係の実践継続をより強化したい」(建設業)。「人材育成―1)経営者の視点と自己思考のレベルアップ、2)社員とベクトルを合わせ学び、成長する、3)社員と共に自己成長、豊かさの実現をはかる」(設備工事業)。「官公需の減少により民間での情報収集につとめ、付加価値をつけた新しい商品開発に力を入れ、東京の人員を増強したい」(卸売業)。「当社得意の土壌分析技術を活かし、中国での油汚染土壌の改良にも取組んでいる」(緑化工事業)。


 そして「地域に信頼される、かかりつけ薬局を目指し、安心・安全な調剤の実践へ向け、事故や過誤をなくす取組みを強める」(保険調剤薬局)というように地域からあてにされる企業づくりを着実に進めています。