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【54号】環境改善に微生物を利用

2006年01月01日

(株)アース技研 専務取締役 長田 正宏(帯広・(株)ズコーシャ取締役)

 

 (株)アース技研は、(株)ズコーシャが15年ほど前に立ち上げた会社です。(株)アース技研の環境分野の事業への取り組みや考え方をお話します。


 (株)ズコーシャは、元々測量業の会社で、現在はコンサルタントを主な業とする会社です。業暦は50年以上になりますが、環境分野など様々な事業に取り組んできました。現在の取り扱い分野は、地域振興、都市計画、環境調査、農業調査、土木設計、情報処理サービス、技術サービスなどで、多くは官公庁からの仕事を受注しています。又、札幌をはじめ、全道各地に支社や支店があります。

 

環境分野への進出~苦戦した3年間~

 

 (株)ズコーシャの環境分野の事業への取り組みは34年前、1972年に環境調査室を新設して、スタートしています。私は、その時に入社しました。


 当時、当社は、すでに200名規模になっていましたが、社長は「これからは環境の時代になる」と考え、私を誘ってくださったのです。私も「すぐに、沢山、仕事が取れる」と感じていました。時代は、イタイイタイ病だとか、光化学スモッグなどの公害が社会問題として注目されていた時でもありました。


 しかし、現実は厳しいものでした。新設したばかりの環境調査室に仕事を発注してくれる役所や団体・企業はありません。やっとの思いで、小さな仕事をかき集め初年度に500万円の仕事を受注したものの、コストが1,200万円もかかってしまいました。この時は、社内で「環境なんて儲からない仕事はやめてしまえ」という声が大きくなり、苦境に立たされました。しかし、当時の社長は、環境分野の仕事を捨てませんでした。将来、測量分野の仕事が減ると考え、環境分野の仕事や、町づくりの仕事をすすめていかなければならないと考えたのです。その結果、今日、私は、こうしてお話しすることが出来ています。

 

環境計量証明事業の順調な受注

 

 その後、原子力潜水艦の放射能漏れデータのねつ造などの事件がありました。そのような背景のもとに、31年前に環境計量士資格制度が設けられ、環境計量業務が民間企業にも発注されるようになりました。当社も、その機会を捉えて、努力を重ねました。そして、官公庁からの受注も飛躍的に伸びたのです。現在では、飲料水の検査やアスベスト、又、ダイオキシンの検査など、幅広い仕事が受注出来るようになりました。


 環境計量士の資格は、全道でも1年間に数人しか合格していない資格です。この資格を持っている人間には計量・証明数値のデータを「調整」してほしいという声が聞こえてくることもあります。しかし、当社では、厳に断っています。環境計量士には、独立した測定数値の証明者として、公正で正確であることが絶対的に求められているからです。


 又、最初の数年間は、休んだのは正月の3日間だけで、寝る間も惜しんで必死に働いたことを、よく覚えています。


 その後、(株)ズコーシャでは、1980年(昭和55)に環境土質研究所を設立、1996年(平成8)には総合科学研究所を設立して質的な充実をはかり、2005年(平成17)には環境評価センターも設立しています。当初、食うや食わずで開始した環境調査室の業務が、今では、課だけでも10を数える規模と組織で運営されるようになっています。

 

微生物の活用で安全な「食」と良い環境づくりを

 

 (株)アース技研は、(株)ズコーシャが受注している仕事の対極にある分野を対象に設立した会社です。官公庁の仕事や、大きな規模の仕事を中心に受注している㈱ズコーシャに対して、民間の小さな仕事、50万円から100万円ほどの費用でも環境の保全・改善が図れる仕事を受注しているのが㈱アース技研です。微生物を活かして、「官」の発想ではなく「民」の発想で仕事をしています。これは、私が環境の仕事を始めたとき、34年前から、やりたかったことでもあります。


 (株)アース技研では、15年前に「アースジェネター」を開発して販売しています。これは、一言でいえば、牛などの家畜に食べさせる善玉菌で、14種類の微生物を組み合わせたものです。


 「アースジェネター」の開発コンセプトは、1)他人のお金をあてにしない、2)酪農家の役に立つ、3)薬品を使用しない、4)環境保全に役立つ、5)お金や手間をかけないというものでした。


 私たちが考えていることは、ひとつは家畜の健康です。家畜は、人間の食物になりますから健康でないとだめですね。家畜が病気になるのを防ぐために、ワクチンや抗生物質が投与されていますが、これは、よく考えてみると異常なことです。


 私どもは、九州の宮崎大学と提携して、家畜の疾病予防の研究をすすめていますし、論文も発表されています。又、広島大学とは、疾病予防と餌の効率改善研究を共同ですすめています。もちろん、帯広畜産大学とも協力しています。そして、抗生物質をできるだけ少なくすることを考えています。そうすることで、食の安全を図ることができるでしょう。


 又、「アースジェネター」によって、糞の堆肥化にも良い結果が出れば、環境にも、良いことになります。めざすのは循環型の社会づくりです。


 「アースジェネター」は、今の時代に合った商品なので需要が伸び、販売先は道内・本州・九州、沖縄にまで広がっています。


 又、(株)アース技研では、新しい農業のモデル像をつくる試みも幕別町で行っています。大豆、トマトなど無農薬栽培技術の研究です。現在は、まだまた挑戦中ですが、確立できたら公開します。そして、農業への生ゴミの活用も考えています。


 (株)アース技研は環境分野のニッチ市場をターゲットにしています。無農薬栽培も、大きな市場にはならないだろうという予測があります。


 世の中にある、あまり光が当たらない影の部分に、ビジネスの素材があるという発想は、私たちの最初の失敗が、育ててくれたものです。私達は、相反するものにも着目し、挑戦する姿勢を持っていますが、こういうことをやっている会社は多くないようです。

 

北海道労働局から「均等推進企業」表彰を受ける

 

 今でこそ、新卒者の採用は順調に出来ていますが、(株)ズコーシャも(株)アース技研も人の採用では苦労してきた歴史があります。しかし、私たちの事業は、人材次第ですから、採用と教育には手を抜くわけにはいきません。


 私達は、大学の先生方にもお願いして、採用にも力を注ぎ続けてきました。


 又、教育にも力を入れ、今日では、博士号を保有する社員だけでも6人を数えるようになっています。


 又、女性社員の力を引き出すためにも、女性管理職の登用に取り組み、給与や待遇も男女差が無いことを当たり前のこととして実施してきました。その結果、(株)ズコーシャは「均等推進企業」として、2002年度(平成14)北海道労働局長表彰を受けています。


 又、経営理念は、地域に根ざしていることを第1にしていますので、会社が大きくなっても北海道、帯広から本社を移しませんでした。

 

環境は、みんながプロ

 

 現在の実感として、環境にプロフェッショナルはいないと感じています。逆に言うと、みんながプロなのです。


 環境を保全し良くしようと考え行動していけば、必ず会社は動き、ビジネスモデルもつくれるはずです。最初から、大きなことに挑戦するのではなく、小さなことを見つけていけば、環境は、これからの時代に求められるビジネスになると確信しています。


(文責 武田)

 


 

■会社概要
【設  立】 1967年
【資 本 金】 2,500万円
【従業員数】 13名
【業  種】 飼料、肥料の製造販売