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同友会は、中小企業の繁栄と、そこで働く全ての人の幸せを願い、地域社会の発展のために活動しています。

【54号】みんなのおいしい顔が見たいから

2006年01月01日

(株)金剛園 代表取締役 須藤 精作(苫小牧)

 

みんなのおいしい顔が見たいから

 

 当社は、今年で創業20年になりました。ようやく成人を迎えたかなという気持ちです。今後も社会に責任ある会社として経営して参りたいと考えています。


 私は焼肉店を始める前は旭川のホテルで洋食の料理人として働いていました。当時、苫小牧では姉と姉の夫が金剛山という焼肉店をやっていました。姉から新たにレストランに展開していくという相談があり、それを手伝うために苫小牧へ来ました。


 しかし、私が苫小牧へ来てすぐに焼肉店が火災に遭い店を閉めることになりました。なんとか再建しようと自宅を売却して住宅ローンとの差額300万円を元手に私が焼肉店を始めることになりました。私は焼肉のことは何もわかりませんでしたから、札幌の焼肉店で3カ月間修行をし、1985年4月に金剛園をオープンしました。苫小牧の焼肉店としては後発でしたので、他店に無い特色を持とうと考え、まだ一般的には普及していなかった無煙ロースターを導入しました。


 オープン初日、本当にお客様が来てくれるのか不安でしたが、お店は満席となりました。お客様に満足してもらい、喜んでもらうことが生きる道だと感じ、この頃、広告のキャッチフレーズに使っていた『みんなのおいしい顔が見たいから』が当社の経営理念となっています。


 33坪十二テーブルのスペースで、月商500万円くらいからスタートしました。3年後には年商1億円となり、大変忙しい状態が続いていました。当時、どんなに混んでいてもお客様から「空いてるの」と聞かれたときに断ったことがありませんでした。「すぐに空きます」と答えお待ちいただいていました。待っているお客様がいたためか、長居しにくい雰囲気があったのか非常に回転が良かったようです。


 同友会へは18年前に入会しました。同友会の事務局から「帯広にすばらしい焼肉店があるので会ってみないか」と紹介されたのが、平和園の新田社長との出会いでした。新田社長のお話を聞きながら、「社会のお役に立てる、地域に貢献できる仕事をしたい」という思いが強くなりました。ちょうど、帯広から苫小牧へは日勝峠を越えて4時間かかります。車を運転しながら新田社長から教えていただいた事を考えていました。お店を始めた頃、お店は生活のためであり、いわば家業でした。「お客様に喜んでもらいたい」という思いとハングリー精神から、新田社長に教えられたことを素直に聞き、実践し、家業から企業へと変えていく努力をしました。

 

人口17万人の苫小牧で年間36万人の来客

 

 その後、住居であった2階部分を改装し宴会場として、60坪で年商2億円まで来ました。このときビール会社にビールサーバーを付けてもらいましたが容量が小さく宴会に間に合いません。しかし、ビール会社からは、「おたくの実績から考えるとこれくらいのサーバーで充分」と取り合ってもらえず悔しい思いをしました。このとき、やはりお客様に満足していただける店にするためには、もっと店に力を付けなければ行けないと感じました。


 1992年に店舗の隣の住宅を購入、改装し18坪23席で牛タン専門店「初代牛タン赤兵衛」を開店しました。また、苫小牧西部にショッピングモール建設の話しがあり、はじめて本店とは離れたところに「金剛園だんらん亭」を出店することになりました。


 それまでは、夫婦でキッチンとホールの仕事を分担し、店のすみずみまで目が行き届いていましたが、2店目となると目が行き届かなくなってきました。このとき店舗を安心して任せられるように人材育成の必要性を感じました。


 1999年には、大正ロマン風を意識した120坪120席の金剛園ろまん亭をオープン。老舗である他店との差別化を図るため、あえて甘いタレを使うなど工夫を凝らしました。2001年にはmaimai亭をオープン。1階を炭火焼きの店、2階をカラオケとしました。こうして、各店舗メニューは同じですが、それぞれの地域性に合わせお店のコンセプトを変えてきました。今では人口17万人の苫小牧市で、年間36万人のお客様に来ていただけるようになりました。

 

BSE問題から新業態へのチャレンジ

 

 こうして順調に店舗を増やしてきましたが、2002年に国内産牛肉からBSEが発生します。売上は減少し食材は高騰するなど厳しい経営環境の中、新たな取り組みをはじめることにしました。地域の食材を活用しようと、苫小牧の特産品であるハスカップやホッキを使った料理を作り、またお米は地元産ではありませんが契約栽培のものを使うようにするなど、食材にも一層こだわりを持つようになりました。


 また、新業態にもチャレンジしました。フランチャイズ展開している店の店長や従業員育成方法などのノウハウを学ぶためFCでとんかつ専門店をはじめました。また、この経験を生かし自ら豚どんの専門店も始めしました。


 金剛園としても、新たに焼肉の宅配を始めました。持ち運び可能な無煙ロースターを貸し出し、食器もすべてお店で使っているものと同じものでお届けしています。これは、お店が混んでいない時間帯にお届けするようにすることで、人を増やすことなく、今いる従業員で配達をしています。


 さらに会社の宴会などで、お店をご利用しやすくするために無料バスを導入しました。現在は月に20回程度稼働しています。


 また、当社はセントラルキッチンを持っていますので、これを活用しながら「肉」を中心とした展開をこれからも考えていきたいと思っています。

 

サービス業は人材

 

 当社は焼肉店としては後発でしたから、他にはないことをやっていかなくては勝ち残れないと考えました。飲食業ですから確かに味も大切ですが、味に加え我々はサービスに自信を持てるお店にするよう取り組んできました。品切れを起こさないためのメニュー作りからはじまり、本場韓国の焼肉料理の本質を追究し、人材育成に力を注いでいます。


 外部研修へも積極的に社員を出し、2カ月に1回は社内で勉強会を開催しています。QSCサークル(品質、サービス、クレンリネス※清潔・衛生)にも取り組んでいます。例えば各店がランチの売上や水道光熱費の削減などについて、自分たちで目標を設定し達成すべく挑戦しています。サービス業は人材育成がすべてだと思います。人をどう育て、適材適所で生き甲斐を持って働いてもらえる会社にしていくかが重要です。


 社員研修を通じて、モチベーションを下げる人や否定的な人は少なくなってきています。ただ、自分で考え表現することの苦手な人が、自信を持ち自ら考え行動し、お客様の立場に立ってサービスができ、料理を作れるように育てていくことが、これからの課題です。今年、社員旅行で韓国へ行きました。社員に本場の味を知ってもらい今後に生かしてもらえればと思っています。


 これからも地域密着型の焼肉店として胆振管内で事業展開を図りながら、おいしさとサービス胆振管内ナンバーワン企業を目指し、お客様と社員の幸せを実現する企業にしていきたいと思っています。

(文責 事務局 岩本聖史)

 


 

【経営理念】
 わたしたちは「みんなのおいしい顔が見たいから」をモットーにお客様の満足を第一として人間になくてはならない食べ物を通して健康で幸せな生活に貢献します。
【当たり前のことを当たり前にそれが金剛園の事業戦略です。】
・丁寧で愛情ある接客
・明るく個性的なお店
・独創商品と品切れ防止
・安全で新鮮な商品提供

 


 

■会社概要
【創  業】 1985年
【資 本 金】 1,000万円
【従業員数】 160名
【業  務】 焼肉レストラン、豚どん・とんかつ専門店