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【54号】ご存知ですか?『これきてドットコム』

(株)桐光クリエイティブ 代表取締役社長 吉田 聡子(札幌)

 

 当社は昭和53年に開業している映像制作の会社です。もともと、父がHBC映画社でCMプロデューサーをしていたのがきっかけです。私はマスコミに興味がなかったわけではないのですが父の会社に入るのはいやだなと思っていました。しかし、なりゆきで入社してしまいました。ところが、私の入社後父が倒れてしまいました。父のもとで修行をしながらやっていけばいいのだろうと簡単に考えていました。これから設備投資をして人員も増やし、少し大きくしようと思っていたところに放りだされましたので外部の方に色々教えていただきながら、仕事を少しずつ増やしていきました。


 独立プロで居続けるというのが父の信念でしたのでどこの子会社でもなく、各テレビ局の番組を当社で作り放送できる状態で納めるという形のプロダクションです。現在はTV局、行政、企業、大学をお客様に持ち映像制作、情報発信のお手伝いをさせていただいています。

 

これきてドットコムとは

 

 「これきてドットコム」は、北海道旅行に何を着ていけばいいのかの疑問に答えるサイトです。当社にとっては異質なビジネスです。ある会合で知り合った経営者とITコーディネーターの2人から、観光で何かやりたいという相談があったのがきっかけです。私も観光に興味があり、情報発信するという仕事に携わっているので一緒に考えていきました。北海道の魅力を全国に発信というけれど、本当に有効なサイトがあるかと言われると非常に難しいと思います。そんな話をしていたときに何が観光で困るかなという話になりました。


 私が出張に行く時には、必ず行く先の天気をインターネットで調べます。何を着ていったら良いか気になるからです。旅行に行くならおしゃれに行きたい、恥ずかしい思いや、暑かったり寒かったりしたくない、快適な環境ですごしたいからです。しかしどんな服装で行けば良いのかを教えてくれるサイトはありませんでした。これは今の情報社会の中では不親切だと思い「これでいこう」と、4社が手弁当でそれぞれ得意の分野を分担して始めました。


 始めた当初はシンプルなサイトを作りました。というのもニーズを探るのが目的だったからです。サイトを分析して、何をすればこれきてドットコムに行きつくのかと検索分析をしました。それからクリック場所、滞在時間などでユーザーが何の情報を欲しがっているか、集約し精査しました。そして本当に有効な観光情報ツールを育てるということを今も繰り返しています。


 現在のサイトの目玉の1つは、札幌の美容室でその日の服装にふさわしく、なおかつおしゃれな人を写真に撮ってもらい携帯電話のメールに添付して紹介するコンテンツです。


 もう1つの目玉は掲示板です。1日約1,300件のアクセスがあります。その中からどういう服装で行けばいいか聞きたいという人たちが質問をしてきます。たとえば「帯広での服装を教えてください19日~25日まで」と掲示板に書き込むとそこに道民ボランティアの方が回答してくれます。これを繰り返しています。


 最初は誰も答えてくれませんでした。私と運営の仲間が必死に答えました。そうすると次第に観光客に認知されていきました。北海道に行くのに親切に教えてくれるらしいというのが、インターネット上で拡がりました。プレスリリースすると、全国新聞やインターネットでもとりあげていただきアクセスが殺到してサーバーが一時ダウンしました。NHKの全国放送でも2回取り上げられ対応に負われました。ひたすら質問に答えていったところボランティアの方が増えていき、今ではその人達が答えてくれています。

 

北海道観光への不安の解消

 

 雪祭りの直前のアクセス数が最も多く、多いときでは1日2万件近くになりました。春になったらアクセスがなくなるだろうと思っていたのですが、ゴールデンウイーク前も1日1,500件を超えました。なぜ季節が変わっても人気が変わらなかったのだろうかというと、北海道は異国に行くようなものだからだと思います。「これきてドットコム」をやろうと決めたときに検索サイトを分析し、天気ならばどこを見るであろうと調べた所、上位は海外の天気でした。ところが、その中に突然北海道の天気がランクインしています。本州の人にとって北海道に行くことは海外に行くのと同じということです。ということは服装がわからない、不安だと言っていますが実は北海道の観光がわからなくて不安なのではないでしょうか。これきてドットコムも服装が心配なのではなく、なんとなく心構えがいる勇気がいるという、なんとなくの不安という潜在ニーズにピンポイントで答えられたので、ここまで認知されたのだと思います。服装を解決しているようで実は北海道観光の不安を解消できたのかもしれません。


有効なサイトに育てる


 ビジネスとしては成功しているかというと、まだ成功していません。あいかわらず運営費は出ません。私達が未だに手弁当でやっています。ただこの1年は人気サイトであり続けることに集中したいと思っています。「これきてドットコム」というこのツールをもっと有効なものに育てることが必要ではないかと思っています。


 誰もが見るサイトではないのですが、来週か来月か来年かわかりませんが、必ず北海道に来る北海道観光にとって非常に有効なターゲットの人が見ています。その使い方は様々だと思います。「おみやげは何がいいだろう、冬靴はどうしよう、地域の情報はどこだろう、おいしいお店はどこかな、2泊3日で何したらいいの」というニーズをもった人たちが、北海道観光に何着ていこうかと思った時にここに集まります。服装を見たい人は、北海道に必ず行く人なのでそこに向けて発信していけば、たくさんというのは無理かもしれませんが確実というサイトにはなると思います。「これきてドットコム」は、服装情報のサイトですがこの裏側にはあらゆるニーズがあります。これをビジネスモデルとして育てていけると考えています。


 「これきてドットコム」の役割の一つとして、観光客が何を求めているかという調査ができるツールであるということです。ターゲットを絞り込んで、商品を試すことができるマーケティングのサイトでもあると思います。そして、最終的には北海道への観光客と北海道の企業、特に中小企業とのマッチングサイトになりたいと思っています。

 

今後の展開

 

 今後の展開として、全道各地への質問が殺到してくれば「これきて大雪」のようなその地域から答えてもらうサイト、これに付随して観光情報を見られるようになっていくと使いやすくなると思います。また旅行業者と提携し、ミニツアーを作りたいとも考えています。


 北海道のありあまる冬物中古品を使い、冬物のフリーマーケットも考えていますし、アジアから来る人向けの情報提供もしていきたいと思っています。それから、小物などを扱う「これきてブランド」を販売してみたいと考えています。


自社チャンネルとしてのこれきてドットコム


 当社が「これきてドットコム」をやっている理由の一つに、自社チャンネルを持ちたかったということがあります。当社のビジネス思想は、翻訳者になりたいということです。情報発信というのは、発信すればOKかというとそういうわけではなく発信されているけれども意味がわかりにくいもの、せっかく発信しているのに有効に活用されていないものがたくさんあります。その情報をわかりやすく翻訳し、より効果的な情報発信の手助けをさせていただくのが私たちの仕事だろうと考えています。


 現在当社には、いいコンテンツは作れるメンバー、環境はあります。でもこれをどこで発信すればその企業にとっていいマッチング、いいビジネスチャンスが生まれるのかと言われたときに自信をもってこれというものがありません。独自で低コストで発信できる仕組みがあれば、もっとビジネスにつながるだろうと考えています。その一つのチャレンジが「これきてドットコム」です。「これきてドットコム」のような独自のチャンネルをこれからも開拓し続けることで、制作から本当に有効な情報発信までをお客様に提供できることになります。「これきてドットコム」は、それ自体が新たなビジネスモデルではありますが、コンテンツの制作から発信前をトータルに請け負うことのできる新しいビジネススタイルという大きなチャレンジでもあるわけです。


 ただ、これきて単体でみたときにも、非常に有効なターゲットが存在する価値あるマッチングツールとして、ビジネスモデルとしてとても面白いツールであると思います。そのツールをたくさんの北海道企業に役立てていただくというのが私の役割だと思っています。

 

観光はジャンル

 

 観光というジャンルが当社にとっても大変重要なキーワードになっています。みんなで連携してやっていくと、すべての企業に平等に与えられたチャンスなのではないかと思えるようになりました。観光というのはジャンルであって、すべての企業に共通に与えられたものと考えるようになりました。


 あるホテルの社長が、ホテルというのはあらゆる業者の方が出入りするとおっしゃっていました。なぜならホテルというのは「暮らし」であると。わたしたちはどうしても「観光客」として見てしまいますが、視点を変えれば彼らも「生活者」なのです。3日間、1週間と、北海道で暮らす人たちです。そう考えると、人の生活に関わる産業全てにビジネスチャンスがあるのではないでしょうか。こうした視点で、北海道の企業の方々と連携して、これからもどんどんチャレンジを重ねていきたいと思っています。


(文責 工藤)

 


 

■会社概要
【設  立】 1978年
【資 本 金】 1,000万円
【従業員数】 10名
【業  種】 TV番組、企業・行政のPRビデオ CMなどの企画制作