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【54号】世界自然遺産「知床」から考える北海道観光のあり方

◆(株)知床グランドホテル 代表取締役 桑島 繁行

◆特定非営利活動法人知床ナチュラリスト協会 代表理事 藤崎 達也(ウトロ)

 


 

桑島繁行氏の報告

 

知床の世界自然遺産登録までのプロセス


 知床には大正3年に、国の開拓計画の下、本州より開拓者が移住してきました。私も開拓3代目で、先々代は大正5年に香川県より入植した12戸の1つです。しかし、自然環境の厳しさから引き上げる者も多く、殆どが夢破れ帰郷しています。


 知床半島は、オホーツク海に突き出るような形で形成されており、周囲は断崖絶壁と特異な形状をしています。これは、長期にわたる流氷の侵食の結果と研究されています。流氷と波・風が演出した自然が知床半島にはあるのです。知床は北半球で最も流氷が南下する地域で、この流氷が運んでくるプランクトンが豊かな海を創り、知床をつくりあげているのです。


 観光の歴史は昭和39年に知床が全国で29番目の国立公園に指定されたことから始まっています。その後昭和45年から翌年にかけて「知床旅情ブーム」がおこり、一方では時の首相が日本列島改造論を唱え、この地も投機家から注目されるようになりました。しかしそれでは知床の自然を守ることが出来ないと、開拓地を保全し、原生林を復元しようと始まったのが、知床で夢を買いませんかとのキャッチフレーズで始まった100平方メートルの土地買ってもらう「知床100平方メートル運動」という1種のナショナルトラスト運動です。元斜里町長の藤谷さんが推進し、昭和52年の2月から始まりましたが、これが知床における自然保護運動のスタートでした。スタートしてずいぶん経ちましたが、460ヘクタール、と予定の97%までは保全が完了しています。次の段階として、平成9年より「100平方メートルの森トラスト運動」を展開し、前運動で植えた木を保護し、森をつくり、そこに生息する野生生物を向かえ入れようと始まったこの運動は、開始後約8年間で1万人の参加と、寄付の総額は12,000万円の寄付が集まっています。


 世界自然遺産登録に向けては、平成5年に斜里町で調査を行ったのが始まりです。平成8年に隣接している羅臼町と共同で、総合計画を作成し、2年後には環境庁・林野庁・道に要望書を提出しています。平成11年になると、国の方でも本格的に登録への動きが始まり、調査を継続した結果3年後ユネスコへの申請の申し立てを決定しました。その間には、砂防ダムや、漁業者との折衝等解決しなければ成らない問題が山積していました。これを乗り越え、今年(2005年)の7月17日、ダーバンで開催されたユネスコの世界遺産委員会の終了を持って世界自然遺産への登録となりました。

 

観光サイドから見た世界遺産と、登録後の課題

 

 登録後は、過去数回あったブームをはるかに超える集客がありました。高速道路が整備されたことと、夏休みの時期も重なり、道内、特に札幌ナンバーの車が非常に目立ちました。まだ統計は出ていませんが、私は200万近いお客さんが知床を訪れたと思っています。結果として、全てがオーバーフローしました。宿泊予約、それに伴う交通渋滞、飲食店の不足問題、公衆トイレの不足があがってきました。宿泊に関しては、ウトロ・羅臼はもちろんのこと、網走や、果ては川湯方面までが、予約でいっぱいといった状況になりました。観光船・クルーザーに関しても、今まで予約制になどしたことはなかったのですが、今年に関しましては、対応しきれずに、予約制へ移行しました。このようなことが、サービスの低下を招いたのではないかと、現在危惧しています。過去の例からも、ブームの後は、必ず悪評が立ちます。それがじわじわと、客数の減少を招くことも事実なので、これをブームだけにしないことが重要になってきます。


 また、年間を通して夏だけが突出した状況を改善するために、平準化を図っていくことと同時に、訪れるお客さんに対しても、自然保護へのマナーの遵守と教育を行っていくことが観光地における、自然環境の保全と適正な利用と考えています。そして、知床だけでは観光は成り立たないので、近隣の網走市、中標津町、弟子屈町等と連携をし、エリアとして知床対策を講じなければ、ならないと考えます。


 遺産への登録はゴールではなく、スタートであると私は思っています。登録されたからといって全てが守られる・保障されるといったことではありません。日本の国、特にその地域で暮らしている人々がどのように、この知床の自然を守っていくかが大きな課題であると今、強く感じています。(文責 山地)

 



藤崎達也氏の報告

 

エコツーリズム


 現在、知床でガイド業を営んでいる業者は約15あります。私たちは、夏・冬関係なく通年でガイドを行っています。年間約3万人の入込があります。


 具体的な内容ですが、ガイドというと、秘境の道先案内人のイメージがあると思いますが、私どもは、誰でもいけるような所をより深く理解してもらうことを中心に行っています。例えば、皆さんがよく行く知床五湖で昆虫や動植物を観察したり、普段歩く遊歩道の、すぐ側で熊がコクワの実を取るときに木に登ってつけた爪跡を見せたりそういったものをご説明して、歩いています。またカムイワッカの滝ではワラジを履いて、登った後、皆で滝つぼに浸かって楽しんだりと、様々なご案内をしています。


 冬の企画として私どもが始めた、ドライスーツを着用しての流氷ウォークはウトロの冬の風物詩にまでなりました。わざと氷の薄い箇所に連れて行き、海に落ちるハプニングを演出するなど5感を使って流氷を味わってもらっています。冬は、ガイド業においても、雇用が発生しなかったので、経済効果的にも期待されているものです。


 このような体験ツアーにはリピート効果があります。アンケートを取ると、季節や内容の違うプログラムへの希望が多いことがわかりました。知床にはすばらしい四季があるので、年4回来てほしいのが本音ですが、最低2回来てもらえるようなPRをしています。内2割程度のリピート効果がありますので、課題は多いけれども、ビジネスチャンスだと思います。

 

道東の自然と、広域プロモーション

 

 皆様は、知床の世界遺産の登録に関しては、マスコミを通じて、ご存知の方が多いと思います。本日はその中で、現場で実際に行っていることや、感じていることを中心に話題提供致します。報道では、知床では自然が完璧に守られて遺産に登録した印象がありますが、実は、課題が山積しており、ある方に言わせると、60点の達成率だとのことです。


 私は、東京から知床が好きで移住し、現在ネイチャーガイド業を行っています。社員は五名、アルバイトも同数おり、年間を通じて知床の自然を観光客の方々にご案内しています。現在、知床のみが集中して、紹介されていますが、実は、道東には、4つの国立公園が立地し、それぞれ1時間半圏内で移動できます。釧路湿原や今後ラムサール湿地に指定される箇所など、知床に負けない位の自然にあふれています。私は、この道東全体で1つの国立公園と考えてもよいと思っています。


 今後の、道東観光の課題として、知床というスポットだけでなく、この道東を広域的に捉え、互いに連携を取り、外部にプロモーションを行っていくことが今後益々重要になってくると感じています。(文責 山地)

 


 

■会社概要


(株)知床グランドホテル
【設  立】1962年
【資 本 金】17,700万円
【従業員数】85名

 

特定非営利活動法人知床ナチュラリスト協会
【設  立】 1998年
【従業員数】 5名