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【53号】「お客様主導」で変わり続けるラッキーピエロのone to one戦略  ~味と楽しさにこだわるスローフードなハンバーガーレストランの実践~

2005年01月01日

有限会社シルクロードグループ 社長 王 一郎 氏

 

構造変化とビジネスチャンス


 皆さん、おはようございます。今日は、構造変化の中の経営戦略について、私なりに皆さんに問題提起をしたいと思います。


 今私は、様々な最先端のマーケティングの本を読んでいます。それらの本が共通して訴えているのは、これからのビジネスは、いかにして「パレートの法則」を見つけるかということです。私は12年間スタッフに手紙を書いていますが、ここでパレートの法則(20対80の法則)について書いた手紙を部長に読んでもらいます。

 

(手紙朗読)
 「パレートの法則とは、上位20%が全体80%を占めるというもので、ビジネスではお客様やメニューの20%が売り上げの80%を稼いでいるということを表します。この法則から、商売とは、お客様でもメニューでも売上の80%を稼ぐトップ20%をいかに磨きをかけ、ブラッシュアップするかということです。」


 私たちにとってメニューの2割は何なのか、ロイヤルカスタマーの2割は誰なのかを発見することが、ビジネスを繁栄させる最短距離です。ラッキーピエロの戦略は、一言で言えば、お客様を感動、感激させて、お客様に口コミ宣伝マンになっていただき、生涯買っていただくというのが目的です。顧客満足型経営とは、顧客と信頼関係を築き、維持することがすべてです。


 今、高齢化や環境問題、技術革新など大きな構造変化が起きています。しかし、こういう変化の時期こそ、私はチャンスだと思っています。当社のような中小企業もホームページでは大企業と並んで表示される時代です。今、当社では毎日700人ものお客様がホームページから情報を得ています。企業規模によらない最高の機会が来た、中小企業のチャンスだと思っています。


 このような構造変化に対する対応策を考えていない企業は、二宮先生も話されていたように、市場から退場を迫られるのです。

 

3つのキーワードと具体的実践

 この時代のマーケティングとして、当社のワン・トゥ・ワン・マーケティングでは、3つのキーワードがあります。1つは「個店化」です。当社にはひとつとして同じお店はありません。テーマ、カラーを決め、同じ店はつくりません。


 2つめは「個客化」です。顧客という「お客様」(全体)ではなく、個人の「個」客です。「お客様」という捕らえ方をしているのは、まだマス・マーケティングの捕らえ方をしているということです。私たちは、お客様に個別対応をしなければ相手にされないようになりました。個別対応するお客様それぞれにライフスタイルがあり、私たちが1人ひとりの個客にどうコミュニケーションを深めていくかがポイントです。


 さて、皆さんは、2割の個客に生涯に渡って買っていただくために、どのようなコミュニケーションを実践しているでしょうか。当社では、個客を準団員、正団員、スター、スーパースターの4段階に分け、スーパースターの個客に対して年末に各店の店長が一軒一軒お礼の挨拶に回っています。個客化、個客の差別化を図るということは、「自店の2割の個客は誰か」ということをどのようにして発見できるかが重要です。また、そのターゲットに向かって、他の個客と違うコミュニケーションがどのようにできているかが企業課題だと思います。ですから、カスタマーリレーションマーケティング(個客とのつながりを重視したマーケティング)と言われているのです。


 マス・マーケティングからワン・トゥ・ワンマーケティングに変わった3つ目のキーワードは、「地域化」です。学校の近くにある当社のお店では、学生さんの少ないお小遣いに合わせて170円でジュースを飲み放題にしています。


 当社では同じドリンクでもお店によってすべて違う値段です。それはなぜか。やはり、私たちに値段をつける権利があり、その地域に一番多い個客に合わせてサービスしたいので、値段を変えるのは普通のことだと考えています。


 さらに3つのキーワードをもとに3つのことを実践しています。


 まずは、製品の差別化です。今でこそ「安心」「安全」と言われるようになりましたが、当社では、17年前から遺伝子組み換えではない丸大豆100%の醤油を使っています。当社が仕入れているポテトフライはカナダ産ですが、農薬のポストハーベストは使われていません。使わないでと頼んでから2年間かかりました。


 商品には経営者の哲学が現れますし、商品は経営者の愛情そのものです。個客にいいことをしよう、きっと必ず個客は分かってくれると、卸業者に頼んでやっとその思いがかなったのです。小さくても、個客のためにやろうと思えばやれるということです。


 また、2つ目に、来店が命である当社では客離れを止めることにも力を入れています。もし新規のお客様がいなければ、年間24%の客離れが起きると言われ、4年間でお店がなくなってしまうという危機感を持っています。


 そして客離れの理由で1番多いのは、実に68%が「店員の応対が冷たい」「客への無関心」なんです。ですから、冷たくなくしたら、68%の客離れを止められるということです。客離れを避けるためにクレーム対応をされている方も多いと思いますが、その数を数えている方はほとんどいらっしゃいません。それでは、的確な対応はできません。そしてその対応は、例えば「商品の入れ忘れを2割り減らそう」というように具体的でなければならないと思います。つまりは、新規のお客様に向かうよりは、今のお客様にしっかり対応するほうがずっと効果があるのです。


 そして、3つ目は既存の個客から常に新しいビジネスを獲得しようと努めることです。例えば、そのお客様が健康をテーマにしているなら、健康食品や薬、エクササイズなど健康をキーワードにした商品を買っていただけるようにするということです。


 「規模の経済」を重視する時代から「範囲の経済」を重視する時代になり、大企業よりも中小企業である我々にとって、有利な時代が来ました。まさに、製品指向のマーケティングから個客指向のワン・トゥ・ワン・マーケティングへ移行し、お店側もお客様側もお互いに個客選別する時代に入ったのです。個客が誰なのかをきちんと決めるということが顧客満足型経営では大切です。そして、その変化に対応できない企業はどんどん淘汰されていくのです。

 

個客・地域密着に次のヒントが
 
 これからの時代はQSC(Quality, Service, Cleanliness)が良いというのは当たり前だと思います。品質が良い、サービスが良い、清潔感の3つだけではお店は繁栄しないかもしれません。それは、われわれは今こそ地域に密着した商売をしなければならないからだと思うからです。この3つに加え、地域の人にどうやって愛していただくか、どう密着しているかということが大事だと思います。


 地域密着への取り組みとして当社では、毎月1日はボランティアの日として、お店を中心に広範囲にわたって清掃をしています。さらに年に3回、海の清掃もやっています。この時、個客に参加を呼びかけると2割ぐらいの人が参加してくださるのです。このような経験からも、地域密着にこそ、私たちの新しいマーケットを探しだす秘密があると思っています。


 びっくりするかもしれませんが、私たちのお店ではお客様にお名前を聞いています。実際、お客様の方が驚いています。でも、そうしなければお客様の名前を覚えませんし、きちんとご挨拶もできません。私たちはどこかで「効率のお化け」に巻き込まれて、心をどこかに置き忘れてきているのではないか。本当に個客の立場に立って考えているのでしょうか。また、当社では個客から毎日いただく100~150通ものアンケートに基づいて会議を行っておりますが、それだけでは深い議論ができません。そこで、スタッフが店頭やフロアでお客様から直接聞いたものをまとめる「お客様の声は宝物カード」というのを、スタッフに対して1週間に1枚は提出して欲しいといっています。会社の都合でお客様の不満足にしてしまっていることもあるので、やはりスタッフに直接届いたお客様の声というのは大切です。第一線のスタッフの声を聞くことが大事だと思います。


 ここで皆さんに当店がテレビで紹介されたときのビデオを見ていただきたいと思います。


 
 (ビデオ鑑賞)


 テレビもそうですが、今年もこれまで72回マスコミに取り上げられています。当社では一切広告は出さないことにしています。前にお話した通り、口コミで広げていき、お客様が広がる戦略です。それには、もちろん食べてもおいしいですが、食べて楽しい、食べた体験を他人に語りたくなるという仕掛けが必要なのです。

 

お客様が喜ぶために

 経営を変えていかなければトップの役割は終わりです。私は何を変えたかというと、旗印を変えました。経営理念を「お客様主導」、「お店はお客様が喜び、満足するためにある」としました。


 時代は今、工業経済社会から情報経済社会に変わった。ものの時代から心の時代に変わった。十人一色から一人十色の時代に変わった。会社中心の時代から個客中心の時代に変わった。今までは、効率を重視して社長の一声でスタッフが動き、いっぺんにものを作れる大きい会社が有利でした。しかし、今は逆ピラミッドの組織が大事だと言われています。お客様が一番上で一番大切、一番下が社長です。そうしなければ先を見通す情報が集まってこないということです。


 何より、個客を満足させられるのは、第一線のスタッフだけなのです。経営者はスタッフと共に学び合いますが、その後はスタッフの品性、品格にお任せなのです。ですからスタッフの仕事に対する気持ちが何より大切です。「なぜ仕事をするか」ということをスタッフにはいつも言っています。仕事って何でしょうか。スタッフが喜びをもって仕事をできなければ、お客様に喜びが伝達しません。マズロー教授の5つの欲求説では、充実感だとか生きがいは一番高度な欲求です。まず、経営者がスタッフに「生きている意味は何なのか」ということを熱く語れない限りだめなのです。そして、「スタッフと共に学び行くが人生」と考えております。


 本当に大事なものは何か。お客様の幸せや喜びを真剣に考えた人だけが、最終的には数少ない成功者になるのではないかと思っています。


(第23回全道経営者「共育」研究集会 第1分科会の報告より 文責 事務局 中上)

 


 

【会社概要】
有限会社シルクロードグループ
設 立 1968年
資本金 500万円
社員数 62人
事業内容 飲食業、ラッキーピエロ11店舗他経営