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【53号】顧客ニーズの追求から日本の酪農を変える  ~産学官連携による自動給餌システム「MAX」の開発~

北原電牧(株) 社長 北原 慎一郎 氏

 

 当社の取扱商品は、皆様にはなじみが薄いと思いますが、「鹿柵」「牧柵」「酪農用自動給餌機」「酪農用アプリケーションソフト」など、酪農家あるいは農家向けの施設、機械などです。

 

MAXFeederとは


 MAXFeeder(マックスフィーダー)とは当社オリジナルの酪農家向け自動給餌機です。1日に1度、牧草をストッカーに入れておくと、設定時刻に給餌機が無人で牧草を搭載し、各牛の位置まで走行し、設定量の餌を給餌します。通常、酪農家は夫婦合わせて1日4~5時間を給餌に費やしていますが、このMAXを使うとストッカーに牧草を入れておくだけなので15分程度に大幅に省力化されます。


 MAX導入による圧倒的な省力化で経営規模の拡大が可能になり、最適な個体管理で乳量も増加します。しかし、MAXの真価はそういった生産面の寄与ばかりではありません。「子供の幼稚園の遠足に初めてついていくことが出来た」など生活面が大きく変化します。

 

HoPEが開く未来への扉


 このシステムを開発する上で大きな力となったのは、同友会の産学官の連携研究会「HoPE」です。HoPEには現在220社の企業が参加しており、大学・研究機関などの100名を越すアドバイザーの支援を受け、月例会のほか、8つの専門研究会が独自の活動をしています。


 当社もこのHoPEの活動を通じて産業クラスター形成事業の助成金をいただき、産学官連携での開発に取り組みました。北海道大学の大久保教授をコーディネータに、北海道立根釧農業試験場技術普及部 次長 小関忠雄氏、北海道酪農畜産協会 総括畜産コンサルタント 須藤純一氏にアドバイザーをお願いし、(1)IT活用でMAXを使いやすくする、(2)既設の牛舎でも導入できるようにする、この2つをテーマとして研究開発に取り組みました。

 

(1)IT活用でMAXを使いやすくする
 無線LANにより、自宅から各牛給餌量や給餌時刻などMAXへの設定を遠隔で行えます。又、万が一MAXにトラブルが発生した場合は、携帯電話へメールを送信します。


 給餌量を自動計算する機能も設けています。乳量などに基づいたモデルを作成しておくと、日々のデータをもとに各牛の給餌量を自動計算します。このようにITを活用し、MAXをより使いやすくするということが一つ目のテーマです。

 

(2)既設の牛舎でも導入できるようにする
 古い牛舎で経営している酪農家は、新築牛舎で動くMAXを見て大きな興味を持っても、自分の牛舎じゃこんなに大きなMAXの導入は無理だなと諦めることが多かったのです。そこで既設の牛舎でも導入できるように、全高を低くしたMAXを開発しました。全高を低くしても牧草の搭載量が減らない工夫をし、狭い牛舎のなかでレイアウトを自由に決められるようにレール分岐も設けました。これで既設の牛舎でもかなり導入しやすくなりました。これが二つ目のテーマです。

 

メイドイン札幌グランプリを受賞して


 開発は当初の目的を達成しました。しかし、アドバイザーの方からさらなる小型化が出来ないかとの問題提起をいただきました。これに真正面から取り組み、餌がなくなれば自動的に補給するシステムを考案し、ついに5分の1の大きさにすることができました。この大きさであれば小さな牛舎でも導入することができるのです。この商品は、昨年札幌市のメイドイン札幌グランプリをいただくことができました。

 

農学部と共同研究して感じたこと


 一般に産学連携というと「工学部の技術を民間が商品化する」といったイメージが強いのですが、当社は農学部と連携して商品開発を行いました。我々が商品開発で失敗するのは、製品化技術の未熟よりも製品コンセプトがニーズとずれている事の方が多いと思います。つまり、どう作るかよりも何を作るかの方が大問題なのです。農学部と連携することで農家の様々な生の声を科学的に評価してくださり、ニーズとして正確に把握することができました。


 牛の飼い方には、1頭1頭を繋いで飼う繋ぎ飼い方式と、牛が自由に歩きまわることのできるフリーストール方式の2つがあります。従来は繋ぎ飼い方式は多頭数には無理で、多頭化するとフリーストールに移行すると言われました。でも牛の健康面や投資の大きさなどからフリーストールへの移行は進みませんでした。MAXは、いわば第3の道で繋ぎ飼い方式のまま多頭化を可能にします。でも当初は正しく認知していただけませんでした。農学部との連携でMAXを新しい飼養管理方式として認知していただいた事も、MAXが普及する大きな力になりました。

 

時代とのマッチング


 当社では平成元年に1度、自動給餌機の開発に取り組みましたが、失敗に終わっています。しかし、このときに開発が成功していたとしても大ヒットはしなかったと思います。現在酪農家は、成牛約50頭、子牛を含めると約100頭を飼育していますが、当時は半分位の規模で、年齢も10歳以上若かったわけで、当時同じような給餌機を発売しても「若いうちから楽をすることを考えちゃいけない。今の苦労は1つ1つ身につくのだから…」と言われるのが落ちだったと思います。でも現在は限界を超えるほど多頭化し、ご両親がリタイヤされる年齢となってきています。そんな今だからこそ、夢の機械として受け入れられているのだと思います。難しいことですが、時代とマッチしているかが最重要です。同じ機械でも、タイミングを逃すと売ることはできません。

 

マーケットをどう捉えるか


 MAXは酪農家むけの自動給餌の機械ですが、酪農家の自動給餌に対するニーズは一様ではなく、MAXも多様なバリエーションを持たせるようにしています。


 もちろん、そういったお客様のニーズを捉える機会は現場にあり、それに異論を唱える人はいないでしょう。でも問題は「現場で発想するとはどういうことか」ということです。現場に足を運びさえすれば、酪農家がニーズを語り始めてくれるというほど簡単ではありません。試作したものを現場に持ち込み、正しく動作するかどうかの確認をしたとしても、それは現場確認であって現場で発想していることにはなりません。現場で発想するとは、酪農家がこのシステムに何を期待し、このシステムがどの期待をどれだけ満たし、その結果牧場の生産がどう変わり、経営がどう変化し、生活がどうか変わったかを知ることだと思います。そのためには話し込むことが大切です。いくつもの仮説を立て、それをもとに酪農家と時間をたっぷりかけ話し込むようにしています。現場でニーズをつかむというのは、それほど簡単なことでは無いと思います。それぞれの会社が、現場を理解するための自分流のやり方を見つけることが大切だと思います。

 

売ることは作ることの10倍難しい


 私もそうですが、技術の好きな社長は苦労して開発した自分の製品にほれ込んでしまいます。そして、こんなにすばらしい商品だから発表すれば大反響を呼ぶだろうと期待してしまいます。しかし、そんなことは絶対におこらない。販売の努力を積み重ねない限り商品は売れていきません。ただし、販売はいくつか類型化できそうな気がします。販売の経験やノウハウを蓄積していくことが役に立つと思いますのでお話します。


 まず初年度の販売先が極めて重要です。MAXは初年度に5台販売しましたが、別にそれは3台でも10台でも関係ない。ともかく良いお客様に使っていただくことが大切です。初年度に導入いただいたある酪農家の牧場には、年間100人以上の酪農家が見学に見えます。見学された酪農家は、機械だけではなしに牧場全体の印象で機械を評価されます。


 さらに2~3年目までは、一般的な興味は持っていただけてもなかなか成約に結びつきません。農業機械の場合は、良いと思ってもすぐには飛びつきません。信用できる情報を丹念に集めています。これには残念ながら広告は入りません。現地に行って自分の目で見たり、雑誌や新聞の記事を集めます。当社がメイドイン札幌に応募した目的もそこにあったのですが、ともかく記事にしてもらえるように動きました。


 その後、酪農家の懐疑心も解け、聞く耳を持ってもらえれば広告が効果を上げます。MAXはまさに今その時期だと考えています。昨年酪農家に4,000本(全道酪農家8,000戸)のビデオを配ったり、今年12月に酪農雑誌にCD-ROMを添付するのもそんな考えからです。

 

(第23回全道経営者「共育」研究集会 第9分科会報告より 文責 事務局 菅原)

 


【会社概要】
1953年(昭和28年)設立
資本金 6,000万円
売上高 14億円
従業員数 45名
本社:札幌市
工場:千歳市
営業所:盛岡市