【50号】老舗企業の新しい挑戦
2002年01月01日
株式会社西林◆にしりん◆ 社長 廣川 雄一(札幌)
老舗を感じる瞬間
今日のテーマは「老舗」と言うことですが、老舗と言われても自分ではそう強く意識することはありません。「老舗」を感じる時と言えば、いろんな方と名刺交換をする中で、だいたい五十代以上の方は西林と言えばそれだけで分かっていただけるので説明の必要がありませんし、四十代の方は八雲といえば分かってくれます。若い方は、名刺の裏にある八雲の名前を見せると、「ああ、おそばやさんですね」という反応が帰ってきます。幅広い年齢層に支持されていることを実感するとき、私が「老舗」を感じる瞬間でもございます。
喫茶店そして「八雲」の開店
喫茶店の商売は、父の時代からやっておりました。今のように喫茶店経営が難しい時代ではなく、父に言わせれば、目をつぶっても喫茶店はできると言うくらいの時代だったようです。
そば屋の八雲は27年前に松坂屋(今のロビンソン)の地下に開店いたしました。私も父もうどんが好きだったのですが、当時は、うどんが10万円売れると、そばなら25万円は売れると言われ、札幌は、うどんよりもそばが主流だったようです。
加えて父が言うには、当時そば屋はほとんどが家族経営で、大手の参入が考えにくく、そば屋なら十分に力を発揮できるのではないか、ということでした。これが、そば屋八雲を始めた理由です。店一軒のスタートから始めましたが、開店初日は目がまわるほどお客さんが来てくださいました。
雑誌「じゃらん」での好評価~女性に受け入れられる店づくり~
八雲が雑誌「じゃらん」の人気投票で一位になったことがありました。「じゃらん」は主に23~4歳の女性が主な読者の雑誌です。
札幌市内では、手打ちそばやそば居酒屋など、今はいろいろな店がありますし、おいしいところはもっとたくさんあるのです。そんな中で八雲が人気を獲得できたのは、女性が一人でも入りやすい店づくり、豊富なメニュー、手頃な値段などの理由があるのではないでしょうか。実際、現在ではお客さんの7~8割が女性でございます。
本来なら昼はサラリーマンの方にももっと来ていただきたいのですが、出店している場所も4丁目プラザやマルサなど女性が多いところですので、女性の方に圧倒的に多く来ていただいております。
また、高齢の方から高校生まで幅広い年齢層に支持されているようです。あと八雲はたれが少し甘口ですので、それがまた女性に人気の点なのかもしれません。
老舗企業の新しい挑戦
最近販売促進活動としてやっていることとして、20円券の利用があります。食事をしていただいたお客さんに20円の割引券を配布するわけです。昨年の十一月から始めて、最初は一日500枚位が帰ってきました。今では800枚くらい帰ってくるようになりました。いかに同じお客さんに御利用いただいているかの証だと思います。
8月、実験的にこの券の配布をやめてみたことがありました。すると売上がとたんに減少したのです。ちょうど1日分の売り上減になりました。割引券はそれほど効果のあるものだったわけです。
それから、土・日と毎月8と9のつく日に、890円の天ざるも始めました。今だとこれがメニュー全体のだいたい20~23パーセントを占めるまでになりました。あまりにもお客さんが多すぎて天ぷらを揚げるにも全く追いつかない状態です。
これからのそば業界
これからの話ですが、今そば屋の客数がどんどん減っております。同時に売上が減っています。しかし値上げはできません。そういう根本的な厳しさを抱えているのが現在のそば業界です。さらにお客さんの好みの変化になかなか対応ができない、という悩みがあります。そして新規参入も加速してきました。それでも、女性中心にメニューを作り、「じゃらん」のような雑誌を熱心に読んでくれる層の女性を確実にお客さんにしていく努力を継続したいと思っています。
それに加えて、健康食品としてそばをとらえていこうとも考えております。実はそばの一番の問題はそばアレルギーでございまして、それがそばにとって一番の致命傷でございます。しかし、そばが健康的な食品であることは、細かいことを知らない方であっても、皆さんご存知だと思います。これから高齢化がますます進みますので、流動食も含めて、高齢者への対応としていかにそばを位置づけるかが問われています。
それからサラリーマンをターゲットにした立ち食いそばの店が、札幌でも当たるのかなとも思っております。都会的な24時間対応の立ち食いそばと言うのもある程度成長が見込めるのではないでしょうか。
そば居酒屋の業種、そして手打ちのそば、早くて値段の割においしい立ち食いの形態が、これからは注目されるようになると思います。
札幌近郊そばブランドの夢
将来は札幌近郊のそばブランドを確立したいという夢を持っております。先日手稲山口を見てまいりましたが、そば畑が5反くらいございました。機械が入らないような小さな畑も多いのですが、「いいそば、すぐそば、札幌のそば」というキャッチフレーズをつくり、札幌近郊のそばブランド確立に取り組んでいるところでございます。
実際にブランドが使えるようになるのは何年先になるかわかりませんが、一軒で頑張っていても限界のあることでございます。そば業界全体として取り組むことを考えております。
(2001年9月18日 札幌支部中央東地区例会より 文責 事務局 塩地)
プロフィール
1947年設立、資本金5,000万円、従業員169名(パート含む)、年商11億5千万円、喫茶店「西林」、ごまそば処「八雲」8カ店、4プラプレイガイド他を経営。