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【レポート】北海道中小企業家同友会景況調査報告(2021年1~3月期)

2021年05月01日

3期連続の改善も、先行きに不安

―仕入価格の上昇、採算を圧迫か?―

 

文責:大貝 健二

(北海学園大学 経済学部)

 

 

 北海道中小企業家同友会2021年第1期(1-3月)景況調査における業況判断DI(前年同期比)は、12.3ポイントもの大幅な改善を示しマイナス23.6となった。しかし、その水準は低い。他方で業況水準は4.6ポイントの「やや悪化」、マイナス28.0にとどまっている。このことから、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、全国に先んじて独自の緊急事態宣言を出した昨年同時期と比較して景況感は改善しているものの、依然として景況感は悪いととらえることができるだろう。また、次期見通しに関しては、今期と同様に16.9ポイントの大幅な改善見通しである。同様に、主要指標である売上高、採算においても次期見通しは大幅な改善見通しとなっている。

 

 今期の業況判断を「全国企業短期経済観測調査(短観)」と比較すると、以下のような差異がある。今期の景況感は、本調査と短観で、ともに改善しているのに対して、次期見通しに関しては、短観では悪化見通しとなっている。短観の調査時期は、本調査とほぼ同時期である。新型コロナウイルス変異株が猛威をふるい始める以前の調査であることを注意しておく必要があることは確かであるが、なぜ、本調査において、次期は「大幅に改善」する見通しになるのか、明確な理由がわからない。販売単価DIは、今期上昇を示したが、同様に仕入単価も上昇しており、両指標のギャップは埋まっていない。さらに、一人当たり売上高と販売単価DIは、ともに悪化していることも踏まえると次期見通しは「希望的観測」の感が強いのではないだろうか。

 

 新型コロナウイルス感染症に翻弄され、ワクチン接種が一向に進まない中で経済活動を行うことの難しさ、個々の企業努力による対応も限られ閉塞感が強まっている現状、そして変異種の急拡大など、先行きが全く分からない状況がある。さらに、次期以降、仕入単価が上昇していく可能性は大いにありうる。原油価格がコロナ禍以前の水準を回復し、さらに産油国が強気に出るとの報道があるほか、中国やアメリカにおいて建材を中心に資材需要が高まりを見せていることから、グローバル規模での調達が困難になりつつあるといった見方もある。

 

 過日行われた景況調査分析会議では、各業界、地域の状況についても意見交換が行われたが、より多くの意見が出されたのは、景況調査回答サンプル数や、次期の経営上の力点(自由記述)の大幅な減少に関してである。景況調査の傾向として、景気が悪化すれば回答サンプル数が増え、改善すると減るといったことがある。この点からすれば、前回調査、今回調査でのサンプル数の減少は、景況感の改善と捉えることも可能である。しかし、回答数が大幅に減少すると、DIが果たして正確な値を示しているのかどうか、疑わしくなってくる。極論を言えば、調査が成立しなくなる可能性が出てくるのである。

 

 景況調査を意味あるものにするためには、一定程度のサンプル数を確保しながら継続することが何よりも重要である。さらに、調査分析をまとめる立場としても、景況調査をもっと活用して頂きたいという思いは常に持っている。若干愚痴めいた表現になったことを反省したいが、次回以降、新たな取り組みを展開している企業の紹介など、景況調査結果と連動させながら、行ってみたいと考えている。

 

 


 

≪景況調査について≫

・景況調査は、回答者の意識・マインドを基に景気動向を分析する調査です。

・特に、同友会が実施する景況調査は、経営者の意識を反映するものであるため、景気動向がはっきりと表れやすいと言われています。

・景況動向、および「次期見通し」を自社の経営指針等の見直し等に活用してください。

 

≪DI値について≫

・DI値は、「良い」と回答した割合(%)から「悪い」と回答した割合(%)を引いた数値です。

・「良い」と回答した企業が多ければ多いほどDIは高水準で推移するが、その逆もしかり。

・景況調査では、(1)DI値の水準(プラスかマイナスか、また水準はどの程度か)(2)前回調査からの好転幅、悪化幅の大きさを主に見ていきます。

・DI値の変化幅について

①1ポイント以内の場合:「ほぼ横ばい」と表現します。

②1~5ポイントの場合:「やや」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。

③10ポイント以上の場合:「大幅な」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。