【レポート】北海道中小企業家同友会景況調査報告(2020年7~9月期)
2020年10月01日
景況感の改善がみられるも、先行きは不透明
―緊急事態宣言時の反動、改善幅は前回の悪化幅を上回らず―
文責:大貝 健二
(北海学園大学 経済学部)
北海道中小企業家同友会2020年第3期(7-9月)景況調査における業況判断DI(前年同期比)は、マイナス53.2からマイナス43.2へ、10.4ポイントの大幅な改善となった。前回調査では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言の影響が大きく、2008年の世界同時不況時期と同程度の水準にまで落ち込んだが、今期はその反動ともいえよう。この傾向は、「全国企業短期経済観測調査(短観)」や中同協DORにおいても表れている。しかし、次期に目を向けてみると、4.8ポイントの「やや悪化」見通しであり、その水準もマイナス40台にとどまる。ウィズコロナを見据えて経済活動が動き始めたものの、欧州で「第二波」の拡大があるように、道内でも今冬にかけて感染拡大が再燃する懸念、それに伴う経済活動停滞への不安をぬぐい切れない。それらの要因が次期見通しの弱さにつながっているのであろう。
業況判断DIを除く、今期の調査結果の概要は以下のとおりである。第1に、売上高、採算、採算の水準、業況水準の主要各DIは、それらのほとんどが大幅な改善を示している。しかし、前回調査の大幅な悪化を克服する改善幅ではない。加えて、次期見通しについては、いずれも「ほぼ横ばい」ないしは「やや悪化」であることから、先行き不透明な状況であると判断できる。第2に、一人当たり売上高、一人当たり付加価値に関しても、同様の推移である。今期調査において、両指標とも10ポイント以上の大幅な改善を示してはいるが、2019年第4期(10-12月)から前回調査までで、実に50ポイントもの悪化していることから今期の改善幅でこれまでの悪化を克服するには至っていない。第3に、本調査では4業種分類(建設業、製造業、流通商業、サービス業)でクロス集計を行っているが、景況感に関しては、これらの業種分類のほか、日常生活を送るのに不可欠な仕事である食品、生活必需品、福祉などのエッセンシャルワークに該当するような業種は、新型コロナウイルス感染症による経済的な影響はないものの、これらに該当しない業種で大きく影響が出ていると考えてよいだろう。
10月19日に実施された景況調査分析会議では、上記のような議論のほかに、興味深い意見交換が展開されたので、少し紹介してみたい。「4-6月期の売り上げは大きく落ち込んだものの、8月以降でようやく少しずつ持ち直してきているが、密を避ける対策を取る必要があるため生産性は低下してしまう」、「観光業界はコロナの影響を大きく受けたが、Go Toキャンペーンや小中学校の修学旅行などがあり持ち直している」といった企業経営、業界の動向に関してのコメントのほか、「コロナ禍での雇用調整の憂き目に遭った人たちの就職活動の様子をみると、20~30代はハローワークよりもむしろインターネットを駆使している」、「コロナ禍で会社のウェブサイトを見て依頼をしてくる人が増えた」というような、ウェブの活用次第で可能性が広がるのではないか、といった意見も聞かれた。
最後に、今期調査での自由記述(コメント)をいくつか掲載しておく。
「不動産購入意欲や動機がコロナ禍で減退しているので売り方を変える工夫をしている。ターゲットをより具体的に絞り込むターゲティング広告に努めている」(流通商業)
「人材育成、中堅社員に対する、マネージメント教育により次世代経営者の創出を図る。資本金の社外流出防止対策として株主構成の見直しと役員・従業員持株会の設立により社内のモチベーションの向上を図る。」(サービス業)
≪景況調査について≫
・景況調査は、回答者の意識・マインドを基に景気動向を分析する調査です。
・特に、同友会が実施する景況調査は、経営者の意識を反映するものであるため、景気動向がはっきりと表れやすいと言われています。
・景況動向、および「次期見通し」を自社の経営指針等の見直し等に活用してください。
≪DI値について≫
・DI値は、「良い」と回答した割合(%)から「悪い」と回答した割合(%)を引いた数値です。
・「良い」と回答した企業が多ければ多いほどDIは高水準で推移するが、その逆もしかり。
・景況調査では、(1)DI値の水準(プラスかマイナスか、また水準はどの程度か)、(2)前回調査からの好転幅、悪化幅の大きさを主に見ていきます。
・DI値の変化幅について
①1ポイント以内の場合:「ほぼ横ばい」と表現します。
②1~5ポイントの場合:「やや」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。
③10ポイント以上の場合:「大幅な」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。