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【70号特集1】ブレない理念で日本一の削蹄会社をめざす!

2022年02月10日

ブレない理念で
日本一の削蹄会社をめざす!

 

(有)ライズ 代表取締役 沖田 太一(富良野)

 

沖田氏は2008年、経営者になるために同友会に入会。経営指針研究会を受講する中で、やりがいを持って経営に取り組む覚悟を学びます。つくり上げた理念とビジョンを社員と共有し、日本一の削蹄会社をめざしています。

 


 

 当社は1999年7月に設立しました。会社は富良野市布礼別市街地にあり、支店が宮崎県都城市にあります。乳牛の削蹄とフットケアサービスを行っています。


 乳牛は牧草地にいるイメージがあるかもしれませんが、ほとんどは牛舎で飼われています。牛舎の中は掃除や管理がしやすいようにコンクリートの床になっており、乳牛はその上を歩いています。草の上を歩くのと違い、滑りやすく、爪も伸びます。ですから年に2、3回は爪を切る「削蹄」いう作業が必要になります。


 「削蹄」はまず、アメリカ製の油圧式枠場に牛を追い込みます。牛を完全に動けない状態にしてからグラインダーを使って爪を切っていきます。1台500万円程の枠場が3台富良野にあり、九州に1台あります。多いときは1日に3台稼働させ、150頭以上の爪を切っていきます。一頭につき、作業時間は3分から5分程度。切れるようになるまでその人のセンスにもよりますが、3年から5年を要し、一人前になるには10年以上かかります。

 

同友会で学んだ経営への覚悟

 

 同友会には2008年に入会しました。きっかけは、当時同友会に入会していた先代社長(現㈲藤井牧場 藤井裕一会長)に経営者になるために学びなさいと入会を勧められたからです。入会後は、第4期経営指針研究会で夜通し経営の話をしたのを今でも覚えています。当時は経営に対してモチベーションが全くなかったのですが、半年かけて理念を作成した結果、やりがいを持って経営に取り組む覚悟ができました。完成した理念は「人と人、地域を大切にする会社」。これに「仲間とともに成長できる会社」「確かな技術とサービスで牛の健康を守ります」「地域酪農業がより元気になるためにできることを考え行動します」という方針が連なります。


 理念完成後の最初の思いが「会社らしくしたい」ということです。そのために社屋を買い、労務士に就業規則の作成を依頼しました。私自身も決算書やその他、経営に関わる様々な勉強をしました。役員とぶつかることもありましたが、とにかく「普通の会社にしたい」というのが最初のビジョンでした。

 

日本一の削蹄会社をめざして

 

 2012年に役員の一人が病気で亡くなり、それをきっかけに私が代表取締役に就任しました。代表として課題に感じていることは、職人から経営者への切り替えです。自分が現場に出なくても仕事が回る仕組みにしたいのですが、一方で自分は経営者として座っているだけでいいのかという思いが常にあります。


 代表に就任した当時は同友会で経営指針の委員長を務め、青年部でも活動していたので、報告の機会が多くありました。そのような中で日本一の削蹄会社をめざそうという気持ちが沸き上がり、方針に掲げるようになりました。まだ日本一になったわけではありませんが、掲げた以上どうやって日本一になるのか、売り上げ、会社の規模のことなどいろいろと考えました。機械やトラックなどはお金を出せば買えるのですが、やはり人を育てなければならないというのが一番の思いです。


 当社では、人を育てるための取り組みとして毎朝、朝礼をしています。交代で日直を行う社員が、自ら話したいと思う明るい話題のニュースを選び、それについてどう感じたかという内容を話してもらいます。この取り組みは人前で自分の考えを伝えることに慣れ、主体的に考える社員が増えてほしいという思いから始めたものです。


 私もあまり話すのが得意ではありません。朝礼の最後に「社長のひと言」という時間を割いてもらい、自分自身の考えや会社の現状など、とにかく何かを話すようにしています。この毎日の積み重ねにより、社員も人前で話す力がついてきているのではないかと思っています。

 

油圧式枠場に牛を追い込む作業員

 

九州への事業展開

 

 私は同友会の青年部で活動するなかで、全国交流会などにもよく参加してきました。自分と同年代の経営者が様々な事業展開を行っているのを見て、とても強く影響を受けました。乳牛は世界中にいるので、技術さえあればどこででも削蹄を行うことができます。そのため海外にも進出したいと考えていました。中国やアジアなどに牧場が増え、チャンスだと感じましたが、伝染病や口蹄疫などの心配もあり、断念せざるを得ませんでした。


 どうしようかと悩んでいたところ、仲の良い同業者から「九州で独立する」という話を聞きました。1人で独立するのが不安とのことだったため、一緒にやろうと声をかけ、2017年4月に九州支店の立ち上げを決めました。立ち上げには私が直接携わった方が良いと考え、2年間、宮崎県都城市に単身赴任しました。


 九州支店の初年度は大赤字でした。仕事がなく辛い期間が続きましたが、2年目から口コミで少しずつ仕事が増え、軌道に乗ってきました。そうなると、今度は自分が本社に戻ることを考えなくてはなりません。九州でスタッフを探すことにしました。


 この時期、たまたま隣で飲んでいた若い子たちが、仕事を辞めようと相談している話が耳に入ってきました。とても人柄が良さそうだったため、その場で名刺を渡してスカウトし、入社してもらいました。今その社員は九州支店のナンバー2に育っており、とても頼もしく思っています。そんな出会いもあり、3年目には本社のナンバー2と交代し、私が富良野に戻りました。

 

九州支店の成果とライズのこれから

 

 九州支店を立ち上げたことにより売り上げも伸び、1億円を超す規模になりました。私が同友会に入会した2008年の売り上げが4200万円ですから、約10年で売り上げが倍以上伸びたことになります。


 また、2018年に北海道胆振東部地震が発生し、北海道がブラックアウトで停電した際も九州で仕事を行っていました。そのため、会社の売り上げはゼロにならなくて済みました。この時、九州支店を立ち上げておいて本当によかったと思いました。


 いいことばかりだけではなく、九州支店を立ち上げたことによる代償もありました。社員の一人がカレー屋さんをやりたいと言って辞め、次の年には他の社員も独立してしまうなど厳しい事態に直面しました。また、この仕事はお客様が離れるということはほとんどないのですが、九州支店を立ち上げている際に富良野のお客様が数件離れてしまいました。


 それとは別に、最近年間500万円程の顧客が2年弱で離れてしまうなど苦労しています。その顧客は規模拡大を予定していため、合わせて、新しくトラックや機械を購入していたことも追いうちをかけました。一昨年までは売り上げはずっと右肩上がりでしたが、昨年は新型コロナウイルスの影響とは関係なく売り上げが大きく落ちてしまいました。


 ただ、今年はラジオCMやツイッターなどの取り組みを行い何件か仕事が取れているため、昨年よりは良い状況に持っていきたいと考えています。自社の理念、ビジョンに関しては毎朝朝礼で社員と共有できていると感じています。また私は、悩んでいることは社員に相談するようにしています。自分が孤独ではないということを再認識し、同友会の仲間と協力し合いながら、社員と一丸となって日本一の削蹄会社をめざし精進していきます。

 

グラインダーを使い、削蹄するようす


(2021年7月26日「道北あさひかわ支部7月例会」第2部より 文責 清水大地)

 

(有)ライズ 代表取締役 沖田 太一(富良野)


■会社概要
設  立:1999年
資 本 金:605万円
従業員数:10名
事業内容:牛の削蹄及びフットケア

http://happycow.co.jp/