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【70号特集4】ゼロカーボン型ビジネス、私たちの挑戦

2022年02月05日

ゼロカーボン型ビジネス、私たちの挑戦
―創エネと省エネで明日を拓く―

 

 「2050年までに脱炭素社会の実現をめざす」。これは21世紀を生きる企業にとって大きな課題です。豊富な再生可能エネルギーが賦存する北海道で、創エネ・省エネを通して新たな成長をめざす4人の経営者たち。環境問題に立ち向かう各社の取り組みから学びます。

 

 

〈報告1〉脱炭素、世界、日本、北海道
  (株)大地とエネルギー総合研究所 代表取締役 小野 尚弘(札幌)


〈報告2〉住宅政策から見たゼロカーボンの取り組み
  武部建設(株) 代表取締役 武部 豊樹(三笠)


〈報告3〉海洋プラごみゼロへ! 使用済みプラスチック分散型エネルギー利用モデル
  (株)エルコム 代表取締役 相馬 督(札幌)


〈報告4〉小水力発電への取り組み
  興和工業(株) 代表取締役 鈴木 高士(登別)

 


 

【報告】1 小野 尚弘

 

 いま、世界中でゼロカーボン型ビジネスが急速に拡大しています。私からはその背景や今後の方向性についてお話しいたします。

 

 

 

脱炭素社会に向けた潮流

 

 皆さんはESG投資をご存知でしょうか。Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を取ってつくられた言葉で、最近は新聞やニュースで聞くことが多くなりました。これは環境経営や地域社会への貢献など、財務情報以外の取り組みを投資判断の材料にする概念のことで、投資基準のひとつとして重要視されるようになっています。ESG投資残高を集計しているGSIA(世界持続可能投資連合)の発表では、2020年度のESG投資残高は約3880兆円に上るそうです。一方で、ESGに配慮しない企業からの投資撤退(ダイベストメント)の流れが加速しています。


 成長分野として考えられているゼロカーボン型ビジネス。欧米諸国では莫大な予算が脱炭素やIT関連分野に割り当てられています。残念ながら日本のそれは10分の1程度に留まっており、経済規模の違いを考慮してもあまりにも低すぎます。


 再生可能エネルギーへの置き換えは急速に進んでおり、20年前に比べておよそ90倍になっています。その理由のひとつに、再エネ発電の導入コストが年々低下していることが挙げられます。国内の事業用太陽光発電の導入コストは、2013年には1kWhあたり36円でしたが、2019年に13・1円に激減し、2030年には5・8円にまで減少する予測が立てられています。


 RE100(Renewable Energy 100%)という、事業で使う電力の全てを再生可能エネルギー由来で賄う国際イニシアティブがあります。世界中の大企業がこの取り組みに参加し、国内の企業もおよそ150社が参加しています。これにはサプライチェーン全体での取り組みが求められているため、私たち中小企業も脱炭素経営を意識せざるを得ない時代がすぐそこまでやってきているのです。

 

なぜ脱炭素なのか?

 

 2021年7月、EUはゼロカーボンを達成するための一連の計画を発表しました。この背景にあるのは、脱炭素を実現する過程で生まれる技術革新が産業競争力を強め、世界経済を牽引する力になると確信しているからにほかなりません。省エネは我慢と引き換えに行うもの。そのようなネガティブな考えは過去の考え方です。制約要因として捉えるのではなく、新しい成長の機会として考えるべきです。


 北海道では、2030年までに2551万tの温室効果ガスを削減(2013年比)することが計画されました。このうちおよそ3分の1を森林などで吸収し、残り3分の2を削減することが基本シナリオになっています。


 国内の化石燃料購入額は17兆円に上り、これは国内輸入額全体の24%を占めます。北海道は6千億円もの化石燃料を購入しており、その割合は47%に上ります。この多くが国外に支払っているお金ですから、日本経済への貢献割合はごく僅かです。そのようなわけで、地域で使う電力を地域で発電することでエネルギー収支を改善し、地域の発展につなげることが可能です。このスキームをどのように構築するかが問われています。

 

日本・北海道のポテンシャル

 

 豊富な再生可能エネルギー資源を有する日本。海に囲まれた国土は洋上風力発電の可能性がとても高く、急峻な山岳地帯が国土の7割を占める特性から、小水力発電も期待できます。全国各地に温泉が湧くことから、地熱発電のポテンシャルも高い。その中でも北海道における太陽光、風力、バイオマス、中小水力発電の賦存量は全国№1と言われており、これらを使わない手はありません。地域ごとの特性を活かしながら発電することで北海道のエネルギー事情は大きく変わります。また、本州などに売電することも主要なビジネスになってくることでしょう。ゼロカーボン関連産業を成長産業にできるかどうかがこれからの地域づくりの鍵になってきます。

 

もっと明るい未来のために

 

 今年、札幌市で連続真夏日記録が97年ぶりに更新され、小平町で8月の道内最高気温が記録されるなど、異常気象とも言える状況が続いています。北海道環境生活部気候変動対策課の調査によると、21世紀末には、今よりも夏日が52日増加し、冬日が58日減少するだろうという見通しがなされています。このままでは北海道らしい季節感がなくなってしまいます。また、この気温変動により悲劇も起こっているのです。天塩川の水系に天然のイトウが生息しているのですが、水温上昇などで酸欠になったとみられる死骸が大量に発見されています。私たちは温暖化の現実に真正面から向き合わなければなりません。


 北海道大学の環境科学研究院のレポートでは、このままCO2排出量の大幅削減がなされなければ、ホタテガイやエゾバフンウニにとって危険な高水温水準になってしまうと警鐘を鳴らしています。温暖化を防がないことには次世代にマイナス影響をもたらすであろうことは確実です。


 私はお寿司が大好きなのですが、このまま海産物の個体数が減少すれば玉子とガリしかないような寂しい寿司桶が届きかねません。そんなことにしないためにも、脱炭素環境の実現に向けて皆さんと一緒に取り組んでいきたいと思います。

 

 


 

【報告2】武部 豊樹

 

 当社は三笠市に社屋を構え、主に住宅などの木造建築を行っている建設会社です。本日は「住宅政策から見たゼロカーボンビジネスの取り組み」をテーマに、生活に一番密着した住宅分野でのゼロカーボンの位置付け、そして国のゼロカーボン政策の動きと、今後どのように対応すればいいのかということについてお話します。

 

 

 

ゼロカーボンの2つの柱

 

 当社の建築物は外壁に厚さ200~300㎜の断熱材を使用しており、室内の大きな空間に薪ストーブを設置することで外気温がマイナス20℃を下回る厳寒期でも、室内温度を均一に保つことができます。そしてその性能は熱画像によって確認することができます。当社の特徴のひとつに民家の再生がありますが、ここには建築木材、林業、あるいは雇用の問題、大工の職人の問題、そして現在では省エネという問題などを含めて、建築に関する大学というような存在になっていると感じています。


 当社のゼロカーボンに関わる柱は2つあります。まず、「新木造住宅技術研究協議会(新住協)」という研究機関を通じて、1990年代から省エネ技術の開発・普及に取り組んでいます。当初の一番の目標は温かい家を建てることでしたが、その延長線上に現在の省エネ技術も位置づけられます。積雪寒冷地である北海道では、本州の住宅に比べて高いレベルの断熱性能や気密性能が求められます。加えて、適切な暖房と換気を行うことにより、熱をコントロールする技術が発展してきました。


 2つ目は古民家再生の事業です。一般的にあまり知られていませんが、古民家とは明治以降の開拓期に本州から移ってきた方が、出身地の様式に倣って建てた住宅のことです。これを今の時代に引き継ぐ形で残すという取り組みが古民家再生です。現在では3R(リデュース、リユース、リサイクル)のコンセプトにも合致しており、古民家の再生はその中のリユース分野にあたります。木材などを再利用することで廃棄物の減少につながります。

 

住宅分野の現状と今後

 

 これからの国の政策は住宅分野でどのように展開されるのでしょうか。国は2030年までに温室効果ガスを家庭部門で66%削減するという目標を掲げています。部門ごとに目標値が示されていますが、その中で家庭部門に最も高い目標値が設定されています。つまり、今後は住宅のゼロエネルギー化に向けた取り組みを一層強化していかなければなりません。


 例えばZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の推進があります。これは住宅で使うエネルギーを創エネルギー(家庭で太陽光発電などでエネルギーを作り出すこと)で賄うことでエネルギーの収支をゼロにする住まいづくりのことです。


 このような状況の中に置かれた私たち地域工務店は、良質の住宅をつくるために産・官・学が連携し、「北方型住宅」の開発に取り組んできました。その実績をふまえて国の省エネ基準ZEHに、薪ストーブを北海道の住文化に根ざした省エネ暖房機として評価してもらうべく活動しています。その一例として、道庁と南幌町、そして私たち北海道ビルダーズ協会が進める「きた住まいるヴィレッジ」という家づくり・街づくりプロジェクトの中で、薪ストーブの推進を始めました。

 

薪ストーブの有用性

 

 ストーブは明治時代以降、薪、炭、石炭、灯油というエネルギーの変遷を経て北海道の住文化のひとつとして位置付けられます。大手ハウスメーカーはヒートポンプなどの高効率設備機器を主として活用していますが、薪ストーブはこれと同等の暖房性能を持つ省エネ機器として再評価されるべきです。薪ストーブの有用性をさらに広め、住宅省エネルギー評価基準に組み入れてもらうよう、薪ストーブ業界や工務店、研究者、一般ユーザーたちが北海道薪ストーブ協会を立ち上げ、関係省庁などに働きかけを行うところです。


 薪ストーブには多くのメリットがあります。薪は灯油やガスよりも高価ですが、ユーザーが唯一手づくりできる燃料です。また、再生可能な循環型のエネルギーです。薪ストーブを高気密、高断熱住宅で利用する場合はオーバーヒート気味になってしまうため、燃焼力の調整には多少の経験が必要です。そのため、余った熱を蓄熱して、暖房効果を長く保たせる試みにも挑戦しています。このように蓄熱などの技術課題が残る薪ストーブですが、地域の工務店が技術を磨き施工実績を積み重ね、より多くの建物で採用されることで、住宅分野におけるゼロカーボン環境の実現に向けた手段のひとつになるはずです。

 

余った熱量をブロックに蓄熱する

 

より良い北方型住宅へ

 

 薪ストーブを主暖房にした事例を挙げると、外気温がマイナス25℃にもなる東川町の古民家再生で、薪ストーブ1台で全館暖房を可能にすることもできます。北海道の高性能省エネ住宅技術がそれを可能にしているのです。


 また、南幌町の「きた住まいるヴィレッジ」では、室内の壁に積み上げたブロックを蓄熱体として利用する試みも行いました。最近建てた木造のレストランでは、床暖房と併用した薪ストーブが、インテリアと融合する省エネ機器として活用されています。このような取り組みをもっと広めていきたいと考えています。


 大手ハウスメーカーは薪ストーブをほとんど使いません。つまり、薪ストーブを使いこなすことは地域の工務店にとって大きな競争力になるのです。薪ストーブを使う建物の屋根には立派な煙突が立ちます。煙突がある建物は地域工務店が地域材で建てた北方型住宅。そんな認識にしていきたいのです。私たち地域工務店は、北海道の地域特性を活かし、ゼロカーボンという社会の大きな流れの中で目標をしっかりと見定めながら、未来に向かって家づくりに取り組んでいきたいと思います。

 


 

【報告3】 相馬 督

 

 当社は1991年に創業し、今年で30周年を迎えました。「エルコム」の社名は、Earth&Life Communicationの頭文字から名付けました。主に環境機械の企画開発や全国販売を行っていますが、自社工場を持たないファブレスメーカーのため、製造は外部へ委託しています。事業の柱として「産業マシナリー事業」「環境ソリューション事業」「エネルギーシステム事業」の3つを掲げています。

 

 

行き場を失う廃プラスチック

 

 廃プラスチックはこれまで中国をはじめとした東南アジア諸国に輸出して処理を行っていました。しかし2018年に中国が輸入制限を開始すると、各国も追従するように輸入制限を始めました。そして2021年には有害廃棄物等の輸出入等を規制するバーゼル法が改正され、廃プラスチックの輸出入が厳格に制限されました。つまり、大量の廃プラスチックは行き場を失ってしまったのです。


 日本国内では使用済みプラスチックのほとんどが再利用されています。特にマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルは、理想的なリサイクル方法に挙げられます。しかし、このリサイクルができるプラスチックは、汚れておらず単一原料で製造されたものに限られていて、再利用される使用済みプラスチックの3分の1に留まります。


 残り3分の2の使用済みプラスチックは、焼却した際に生じるエネルギーを再利用するサーマルリカバリに回されています。しかし、大型燃焼炉によるサーマルリカバリは、エネルギー変換効率がとても悪いという問題があります。


 どの方法も自社だけで行うには非常にハードルが高く、持続可能な側面で限界があります。脱炭素社会の実現が叫ばれる中、排出元となる企業はどのように廃プラスチックと向き合い、責任を果たしていけばいいのでしょうか。それにはこれまでの常識に囚われない新しい発想と手段が必要です。

 

排出したプラスチックを燃料に

 

 その解決手段のひとつとして提案する方法がセルフリカバリです。セルフリカバリとは、自社から排出したプラスチックごみをエネルギー化し、自社で再利用することです。当社が製造している世界初の樹脂ペレットボイラー「イーヴォル」は、廃プラスチックから再生した樹脂燃料を主燃料として稼働します。エネルギー変換効率は従来の大型施設と比較して3倍以上の70%におよびます。つくり出された温水や蒸気によって既存設備の負荷を軽減することが可能で、処分費の抑制や燃料コストの削減につながります。最大のメリットは、廃プラスチックの処理を発生元で完結させることで環境負荷の最小化が実現できることです。環境負荷面を分析すると、従来の方法に比べ1システムあたり年間290tのCO2の削減が実現できます。

 

離島循環モデルで海ごみゼロへ

 

 さて、生態系に深刻な影響を引き起こす海洋ごみ問題が叫ばれて久しい昨今、私たちにもできる対策を考えていかなければなりません。日本に漂着する海洋ごみの約80%はプラスチック由来です。この海洋ごみには異物が混入しているため、リサイクルを行うことが非常に困難なのですが、マイクロプラスチックになる前に手を打つ必要があります。


 そこで当社では、水産庁の外郭団体と協力し、漂着発泡スチロールの圧縮と燃料化に取り組んでいます。これまでに1万6千本の漂着フロートを圧縮減容し、燃料化を行っています。2021年2月からは大量の漂着ごみの処理に悩んでいた長崎県対馬市で、漂着プラスチックの燃料化をスタートさせました。処分対象でしかなかった海洋ごみを価値化できれば回収率も上がります。都市型油田として新たな価値化をめざし、離島循環モデルを提唱しています。これは漂着ごみを回収して燃料化し、生まれたエネルギーを島内で活用するという循環フローです。

 

 

現実的なプラスチック有効利用

 

 2017年のデータによると、およそ900万tの廃プラスチックが国内で排出されています。マテリアルリサイクルに回された廃プラスチック量は211万tで、うち29%が国内で再資源化されました。これは排出量全体の1割にも満たない数値です。


 当社のシステムは、私たちがこれまで外部に委託していたプラスチックごみを、自社でクリーンエネルギーとして有効化が可能です。独自の搬送装置、燃料化技術、安定した温度制御を行うことで、黒煙も臭いも発生せず、ダイオキシン類発生量は国の基準量の40分の1程度に抑えることができます。クリーンエネルギーは自社でつくることができるのです。


 環境負荷を軽減させるためには各々が責任を持って取り組まなければなりません。しかし、その実現には、環境負荷軽減と同時に、廃プラスチックの抑制や、エネルギー問題の改善など、多面的なメリットがなければ進みません。当社では、海洋汚染ストップと環境負荷軽減の両立を現実的にできることを第一に考え、このシステムを開発し、発生元での循環利用(セルフリカバリ)モデル構築をめざしています。エルコムはこれからも持続可能な社会のために貢献してまいります。

 


 

【報告4】 鈴木 高士

 

 当社は省エネルギー対策の一環として、2007年10月から約1年かけて室蘭テクノセンターの省エネ診断を受診しました。当時は、リーマンショック前で原油価格の高止まりが続いており、工場の暖房費高騰対策のため節電に取り組みました。その結果、年間平均31㎘(原油換算)のエネルギー削減が実現でき、5年間で1300万円のコストと381tのCO2を削減することに成功しました。「平成25年度省エネルギー・新エネルギー促進大賞」を受賞し、北海道グリーン・ビズ認定を受けることもできました。

 

経営危機からのV字回復

 私は2008年に創業者である父親から事業を継承しました。リーマンショックの影響で売り上げは大きく下がりましたが、前述した省エネ診断や事業の集中などの効果もあり、増益を果たしました。しかし、2013年11月に営業社員による架空取引・横領事件が発覚、大きな痛手を負いました。社長になりたてだったこともあり、傲慢になっていた私の驕りや隙が放漫経営を生み、債務超過に陥ってしまったのだと思います。


 再建に向け、中小企業再生支援協議会の再生計画により3年目で債務超過が解消し、7年目で自己資本比率が40%を超えるV字回復を果たすことができました。これはひとえに社員をはじめ、金融機関、取引先など多くの方々の尽力の賜物だと思います。皆様への恩返しも含め、これからは地域に貢献できる新たな事業の柱の構築が必要であると考えました。


 しかし、コロナ禍による客先の設備投資延期や再検討、紙パルプ産業の集約化など道内基幹産業の陰りを受け、既存事業の売り上げが減少してしまいました。コロナ後のための新事業の検討が急務でした。


 そうした折、下水道管老朽化対策として道銀ビジネスマッチングによるFRP製管更生材料製作検討依頼があり、2023年の操業開始に向けて取り組みを始めました。また、良いタイミングで「第2回事業再構築補助金」に採択されました。こうした補助制度を活用しながら始めた事業は、建築確認申請段階まで進んでいます。計画では7年で費用を回収できるものと見込んでいます。

 

地域貢献としての小水力発電

 

 一方で、地域資源を使った地元への貢献を真剣に考え始めました。そこで登別温泉地区に地熱発電事業の可能性がないかと、室蘭工業大学の先生と地熱発電理解促進事業に参加しました。調査のため、3年にわたり国内各地の地熱発電所を見学したのですが、登別温泉旅館関係者から泉源への影響を懸念する声があがり、計画は休止となりました。また、小水力発電の可能性を探るために室蘭地区産学連携『創造』の小水力発電検討例会でも検討しましたが、こちらも前進しませんでした。


 こうした状況を打開するため、「産学官連携研究会HoPE」の前代表世話人を務めていた三晃化学の渡辺民嗣社長に相談したところ、小水力発電に明るい、大地とエネルギー総合研究所・小野尚弘社長を紹介されました。小野社長とはすぐに意気投合し、北海道内での小水力発電施設の実現に向けて決意を固め合いました。こうして我々とその活動に意気を感じとった専門家2名を加えた4名で、2019年4月25日に北海道小水力発電株式会社を創業しました。

 

 

小水力発電のしくみと課題

 

 国内での小水力発電は100年以上前から行われています。その仕組みは、まず上流の堰堤から取水し、水圧管を通して発電所に送水します。発電所の中では水車が回転し、その回転力により発電機が稼働することで電力が発生します。発生した電力を配電盤・変圧器を経て配電線へ送電するといったメカニズムです。水車を回した後の水は、放水路を通じて再び河川に戻します。小水力発電事業は、非化石電源として自然保全の観点のみならず、地元貢献や雇用創出の側面を併せ持ち、SDGsにも貢献しています。


 当社の小水力発電に対する現在の取り組みは、北海道内の河川60カ所の机上調査に加え、現地調査・検討箇所20河川、1年間の流量観測8河川、北電への接続検討申込が6河川となっています。3年以内の着工は4河川を予定しています。
 小水力発電の課題は、系統連系に長い時間を要すること、新たな取り組みのため抜けが出てしまうこと、多岐にわたる関係先との協議が中々進まないことなどが挙げられます。また、河川調査(通称「藪漕ぎ」)は熊と出くわさない対策も必須となります。

 

小水力発電の可能性

 

 小水力発電の先行事例として、奥飛騨温泉郷安房谷水力発電所を紹介します。この発電所は地域貢献型小水力開発として①地元企業との連携により新規地場産業創出②地元産業の優先活用③売電収益の一部を地域振興基金として地元に還元するなど、すばらしい取り組みを行っています。私たちもこれらの取り組みを良い手本にして発電所の建設を進めたいと考えています。


 北海道の未開発包蔵水力は、小水力発電の盛んな岐阜県、長野県、新潟県などを上回る4226GWhです。これは原発1基分以上の安定電源の創出が可能な数値です。この値は1700億円にもおよぶ市場規模として捉えることができます。既に大手企業の系列各社は道内の河川調査を開始しています。我々もそれに負けないよう、地元の企業と連携しながら道内初の民間小水力発電所の稼働をめざします。


(2021年10月8日「第36回全道経営者“共育”研究集会in苫小牧」第6分科会より 文責 報告1 神谷大輔/報告2 土田慎悟/報告3 米木 稔/報告4 磯野弘幸)

 

(株)大地とエネルギー総合研究所 代表取締役 小野 尚弘
■会社概要
設  立:2012年
資 本 金:800万円
従業員数:2名
事業内容:小水力、地熱、バイオマス等再生可能エネルギーの開発、調査、コンサルティング及び人材育成

http://www.meri-inc.jp/


武部建設(株) 代表取締役 武部 豊樹
■会社概要
設  立:1972年
資 本 金:2,001万円
従業員数:32名
事業内容:建設業(建築)

https://www.tkb2000.co.jp/


(株)エルコム 代表取締役 相馬 督
■会社概要
設  立:1991年
資 本 金:2,900万円
従業員数:21名
事業内容:環境機器及び駐車機器等の商品開発、販売

https://www.elcom-jp.com/


興和工業(株) 代表取締役 鈴木 高士
■会社概要
設  立:1965年
資 本 金:5,000万円
従業員数:26名
事業内容:強化プラスチック製品製造業、薬品タンク、各種塔槽類及附帯工事ダクト配管

http://www.kouwa-frp.co.jp/index.html