【講演録】「インボイス制度学習会 ~概要と中小企業への影響を学ぶ~」/RITA税理士法人 代表社員 山美幹生氏
2021年11月15日
インボイス制度とは
インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、複数税率制度に対応した仕入税額控除の新方式。ポイントは①2023年10月1日から消費税仕入税額控除にはインボイスが必要②税務署に登録する適格請求書発行事業者のみインボイスを発行③消費税を納める課税事業者だけが発行事業者になれる―の3つです。
例として、ある宝石店が顧客から対価110万円(消費税10万円)を受け取り、問屋には77万円(同7万円)を支払う場合。従来だと納税額は3万円ですが、今後は問屋がインボイス発行事業者でなければ控除されず、納税額は10万円となってしまいます。
留意点
発行側には「取引先の要求に応じて交付」「7年間、交付した写しを保存」という2つの義務が生じます。
また、現在は区分記載請求書等を使う企業が多いですが、インボイスはこれまで不要だった3万円未満の請求書の保存が必要となります。記載項目も「税率ごとの消費税額」「発行者の登録番号」など内容が追加。記載に誤りがあれば再発行が必要で、交付された側で追記・修正はできません。一方、必要事項を満たせば手書きの領収書、複数書類を合わせても認められます。
発行事業者となるには
発行事業者となるには「登録申請書を所轄税務署に提出し、事前に登録申請」「免税事業者は課税事業者を選択した上で登録申請」と2つの要件があります。事前とは原則、前期末の1カ月前。免税事業者は登録自体ができず、まず課税事業者となる手続きが必要ですが、特例として23年10月1日を含む事業年度に限り、9月30日までに発行事業者の登録を申請すれば、自動的に課税登録事業者となります。
申請受け付けは、21年10月1日からすでに開始。制度開始と同時にインボイスを発行したい場合、原則は23年3月31日までに登録が必要ですが、「提出が困難な事情の場合は制度開始前日の9月30日まで」とあり、困難の度合いは問われていません。ですが、申請から通知までにタイムラグはあるので注意してください。提出方法はイータックス、郵送、窓口持参となっています。
経営・経理への影響
経営面では、免税事業者のままであれば消費税やインボイスの事務作業は不要な一方、今後は消費税の請求ができません。また、取引先が仕入税額控除を受けるために外注先の切り替え、課税事業者との新規開拓を図る際に敬遠される可能性も。課税事業者となった場合、免税事業者との差別化を図れますが、インボイスなどで事務作業が増えます。
経理面では、請求書等の様式変更が必要です。新たに登録番号や税率ごとの消費税額といった記載が増え、会計ソフトでも「インボイス発行事業者でない事業者からの仕入れ」「経過措置の仕入れ」といった区分が追加されます。
企業では全社員が事前にインボイスについて知っておくことが最も大切です。経費精算でも要件を満たすものでなければ、仕入税額控除が出来ません。今後特に、小規模事業者やフリーランス等との取引で、発行事業者ではなかったという場合もあり得ます。国税庁のHPで、発行事業者を確認できます。
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