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【講演録】北海道での地域共生型の再生可能エネルギー拡大/一般社団法人ローカルグッド創成支援機構事務局長 稲垣 憲治氏

2021年09月15日

 

 「RE100」とは、再生可能エネルギー100%使用を掲げる国際的な企業連合で国内では59社が参加しています。スターバックスコーヒージャパンはさらに踏み込み、地域に貢献する再エネを選定するとしています。富士通は地域が賛同して開発・建設した発電設備を要件に明記。単なる再エネではなく、地域に貢献できることが最近の特徴です。

 

 一方で、課題も多くあります。景観への配慮、柵や塀の未設置違反といったトラブルも顕著です。そのため自治体では、規制や地域との調和を図る条例ができていますが、これには開発が地域主体ではないものが多いという側面もあります。大規模開発の多くは地域外企業が主体です。本来、再エネは地域の資源を使い地域への貢献が理想ですが、現実はそうではありません。

 

 しかし、地域の力だけでは限界があり、地域企業と地域外企業との連携が必要です。鹿児島県の小水力発電では、地域外企業とネットワークを構築し、ノウハウを蓄積してメンテナンスも地域主体で行った事例があります。最初は小規模開発でしたが、発電規模を拡大した次のプロジェクトにつながっています。

 

 地域の反対も多い太陽光発電ですが、地域に求められた事例もあります。京都府宮津市ではイノシシによる獣害に悩んでいましたが、メガソーラーの設置で地域課題を解決。説明会では拍手が起きるほど歓迎されました。開発は地域外企業と地元建設会社によるSPC(特別目的会社)を設立しましたが、地元企業が6割の株式を取得。地域が意思決定権を持ちます。開発が好評で、地元の要請を受けスキー場跡地で第2弾の開発も計画されています。

 

 新規参入した小売り電気事業者である新電力のうち、その一つである地域新電力が増えています。さらに自治体が出資・協定で関与する「自治体新電力」は全国で約80に上ります。自治体新電力の価値は、地域の担い手となって再エネの拡大と地域経済循環を牽引できることです。

 

 ドイツのアーヘンという町では、1995年に電気料金を1%値上げし、これを原資に固定価格で再エネ電気の買い取りを実施。このモデルは、後のFIT(固定価格買取制度)の原型になったと言われます。この町を視察した当時、小さな町が世界の再エネを牽引したことに感銘を受けました。

 

 今後、自治体と連携して開発・事業を進める場合、自治体は第三セクターのトラウマが必ずよぎります。バブル時代、自治体は三セクに対する貸し付けや損失補償などで出資金以上の損失を被りました。特に50歳以上の意思決定層である職員にトラウマがあります。これをうまく解いてあげなければ、連携はできません。

 

 現在、自治体が三セクに貸付や損失補償を行うことはほとんどありません。過去のトラウマに過剰に支配されることなく失敗を教訓として、自治体側と丁寧に議論することが重要です。

 

 (811日、HoPE8月例会)

 

いながき・けんじ=文部科学省原子力計画課、東京都庁再エネ推進課等を経て、2020年7月から現職。京都大学大学院でまちづくり事業の地域経済効果、地域における内発的発展等の研究も手掛ける。