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【わが人生わが経営 122】(株)ダテハキ 取締役会長 守 和彦さん(77)(札幌支部)

2021年07月15日

 

北海道発想の靴開発 経営は3兄弟の力合わせ

 

 67日の全道総会で、18年務めた北海道同友会代表理事を退任しました。40年に上る同友会との歩み。「多くの会員と出会い、豊かな人生を送らせてもらいました」と感謝の気持ちがあふれます。

 

 ダテハキの前身である伊達履物は、1941(昭和16)年に創業。祖父である儀蔵が、伊達町内にあった下駄製造の個人事業主を集め、機械化による一貫生産を取り、量産体制を構築しました。この会社を父の信彦さんが復員後に買い取り、49(昭和24)年に代表取締役社長に就任しました。

 

 守さんは62(昭和37)年に伊達高校を卒業して入社。下駄製造を専業とする会社でしたが、新業態を目指して守さんは卸売り営業を担当。婦人用草履を中心とした和装履物卸の開拓を進めます。70(昭和45)年には台湾製サンダルの北海道代理店となり、道内での商圏が拡大。75(昭和50)年1月に札幌営業所を設立し、同年8月に現社名に変更しました。

 

 事業が順調に進む中、顧客ニーズを踏まえた靴の販売を計画し、積雪寒冷地の北海道に適した冬用ブーツを企画します。政令指定都市の札幌は、冬季の年間降雪量が6㍍にも上る世界にも例がない環境。冬にはゴム長靴が一般的な中、市民生活の防雪・防寒・防滑は機能として欠かせないと考え、さらに機能強化をはかりました。そして83(昭和58)年に「ノースデイト」を販売、好評を得ます。その後も商品開発を進め、中でも95(平成7)年販売の「ムートンブーツ」は学生を中心に全国的な人気を博しました。

 

 ダテハキの社是は「北国の冬の生活に役立つ」という言葉から始まります。特異な地域条件を持つ札幌。「徹底して冬の生活を見つめ、〝不便をより快適に〟を目指して北海道発想の靴づくりを進めてきました」と守さんは語ります。

 

 経営者としての道のりは、「兄弟の協力があったからこそ」。守さんに続き、次男で副社長の晃さん、三男で社長の眞さんが入社。全員営業からのスタートでしたが、次第に営業を晃さん、商品開発を眞さん、財務・労務を守さんが担うようになりました。困った時は力を合わせて難題を乗り越えてきた自分の姿を「3分の1社長」と例えます。「3人がそれぞれの分野に責任を持つことが経営にとって強みになりました」

 

 ことしで創業80年。「次は100年企業を目指してほしい」と期待しますが、経営については見守る方針を取っています。信彦さんが仕事に決して口を挟まず、守さんの自由にさせてくれた姿勢を受け継いでいるそうです。

 

 同友会へは80(昭和55)年に入会。それまで経営者団体に対して疑問を抱いていた守さん。同友会も同様でしたが、小樽で開かれた第2回全道青年経営者〝共育〟交流会に誘われたことが転機となります。経営者とは建前で話し、内部事情を表に出さないものと思っていましたが、分科会で会員が率直に意見を交わす姿に〝目から鱗〟。その日に入会しました。

 

 2003(平成15)年5月に代表理事、7月に中小企業家同友会全国協議会(中同協)副会長に就任。同年、福岡市での中同協総会に参加したことが、守さんにとって再びの転機に。総会では中小企業憲章の制定が提起され、守さんは地域や経済にとって中小企業の必要性を明確化できるものと重要性に気づきます。すぐに北海道同友会内で憲章の必要性を提起。政策委員らを中心に学びの場を設け、自らも各支部で憲章の地域版ともいうべき中小企業振興基本条例づくりの必要性を呼び掛けました。

 

 07(平成19)年には、当時の帯広支部幹事長で故・岩橋浩氏の活躍もあり、帯広市が道内初となる条例を制定。これを契機に道内での条例制定の動きが加速していきました。6月現在、道内の条例制定数は57市町村に上っています。

 

 19(令和元)年11月には、北海道同友会創立50周年という記念の節目に立ち会うことができました。しかし翌年、コロナが世界的に流行。道内の中小企業経営にも深刻な影響をもたらし、同友会として国への支援策要望などに奔走したほか、オンラインを活用した新たな同友会活動も展開。経営者へ希望の明かりを灯し続けました。

 

 1年以上経過した現在も収束は見えず、依然として厳しい経営環境が続きますが、「地域や会社の現状など足元をしっかりと見つめ直し、将来に向けて経営の仕組みをつくり直すチャンスに」と呼び掛けます。そして「困ったことがあれば悩みを持ち寄り、経営者が明日への意欲を持てる同友会活動を」とエールを送ります。

 

もり・かずひこ 1943年12月26日、伊達市出身。高校卒業後、父の経営する伊達履物に入社。代表取締役社長を経て、2009年から現職。

 

ダテハキ=本社・札幌市。1941年創業、75年に現社名へ変更。靴・履物の開発・製造・卸売り。