【69号特集4】一本の電話から… ―辞めようと思った同友会が救世主に―
2021年01月15日
一本の電話から…
―辞めようと思った同友会が救世主に―
(株)ハートケアライフ 代表取締役 森田 勝由(北見)
知人に誘われ入会した同友会。活用方法がわからず退会を考えていた森田社長ですが、紹介者や会員に支えられ、学び合いや交流が広がり退会意思が薄らいでいきます。コロナ禍で事業に大きな打撃を受けた際にも会員に助けられ、危機的状況を乗り越えることができました。だからこそ、今皆さんに伝えたい、一人でも多くの人に教えてあげたいという森田社長からのメッセージです。
私は北見で生まれ育ち、運送会社を経て、カー用品・部品を販売する会社に12年間勤務しました。2003年に独立し、建築関係にも足を踏み入れましたが、将来性を考え介護事業に進むことに決めました。介護の経験を積むため、2004年から一年間札幌で学び、翌年、ハートケアライフを設立します。
当時、北見市内にあった居宅介護支援事業所は約30カ所。早速営業に回ったものの、実績のない当社はどこも相手にしてくれません。それでも諦めずに毎日営業に通い続けていると、ある事業所でこう言われました。「また来たの? あんた本当にしつこいね」。仕方なく帰ろうとしたところ、「この利用者さん、お願いできる?」と声をかけていただきました。この利用者様が当社のはじめてのお客様であり、当社の本格的な介護事業の始まりです。
現在は、住宅型有料老人ホーム「ファミリーハウス虹の空」を主力とする介護関連と、修繕、改修工事、冬期間の除排雪を含む環境事業関連という二つの事業を展開しています。
同友会に入ろうよ
そんな日々でしたが、ある日知人から「同友会に入らないか」と誘われたのです。私は入るとどのようなメリットがあるのかわからず入会を断りましたが、知人は二回、三回と私のところに来て、「やっぱり同友会に入ろうよ」と誘うのです。私とその知人とは、気心の知れた間柄で、そんな彼から何度も誘われ、最終的に「嫌だったらすぐにやめればいいよ」と言われ、2015年に仕方なく入会しました。
その年、帯広で「全道青年部・後継者部会交流会」(以下、道青交)が開催されました。何もわからないまま参加した私は、誰かに紹介されることもなく、ただ隅の方でポツンと座っていたことを覚えています。
こんなつまらない会はやめる
北見に戻り数日後、入会を誘ってくれた知人に帯広で誰とも知り合えなかったことを話し「こんなつまらない会はやめる」と言いました。しかし彼から「3月までの会費を払っているのだから、今すぐ退会しなくてもよいのでは」と説得され、とりあえずそれまでは残ることにしました。
3月に入ってすぐ、知人に「やめる」と言いましたが、彼は粘り強かった。こんなに同友会が嫌だと言っているにも関わらず「せっかくだから一年間はやろうよ」と言うのです。同友会に入っていてもまったく意味がないと思っているのに、どうして引きとめるのか。その時は彼の考えが理解できませんでした。とうとう彼の粘り強さに折れ、「そこまで言うのなら、一年間だけ付き合ってあげる」と、当時は上から目線で言ったと思います。
北見で道青交が開催される際、私も打ち合わせに何回か参加しました。周囲は相変わらず知らない方ばかりで専門用語が飛び交い、内容も理解できず、ただ座っているだけの状態でした。
道青交当日は前日に雪が積もり、頼まれた駐車場の除雪を終えて会場に戻ると、すでに青年部の集合写真は撮り終わっていました。その後の食事も独りでポツンと食べ、誰に気を遣ってもらえることもなく、非常に虚しい思いをし、すぐに帰宅したことを覚えています。
僕がフォローするからもう一回、一緒にやろう
そんな状況で今度こそやめようと思っていたころ、同じ青年部会員の会社を訪問させていただく機会がありました。その際、今までの同友会に対する不満をその会員に思い切りぶちまけました。「こんなつまらない会が今時あるのか」というたぐいのことを言ったと思います。
すべてを吐き出したあと、その方は「森田さんの言っていることはすごく理解できるし、間違っていないと思う。誰かが入会したら、誰かがフォローしなければならないのは当たり前だ」。そして私に「森田さんを僕がフォローするからもう一回一緒にやろう」と言ってくれました。このひと言が、私のターニングポイントのひとつになったのです。
さらに青年部の代表を紹介され、同友会に対する不満をお話すると、同様に励ましてもらいました。その言葉と出会いが第二のターニングポイントだと思うのですが、今振り返ると「やめる」と言い続けてきた私に、しつこく「やめるな」と言ってくれた知人が一番のターニングポイントだったのかもしれません。
その後、交流が始まった会員の方たちから例会や行事に誘っていただけるようになり、参加していく中で顔見知りや知人も徐々に増え、同友会をやめようと思う気持ちが次第に薄れていきました。
勇気を出してかけた一本の電話
そんな私も50歳を超え、青年部の卒業が目前になった頃、日に日に新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響が膨れ上がっていきました。当社でも2月末に役職者会議を開き、この先の方向性を検討した結果、3月からデイサービスを一カ月間休業し、施設入居者の病院受診も止め、送迎や院内介助を中止にしました。デイサービスも施設入居者も介護報酬で行っていますので、かなりの痛手になります。新型コロナがいつ収まるのかもわかりません。4、5カ月なら何とか企業体力も持ちますが、半年以上この状況が続くと間違いなく当社は潰れると考えた時に、不安でいっぱいになり眠れなくなりました。どうにかしなければと思うのですが、その方向性がわからないのです。
このまま何もせず時間が経つのを待つのか、今自分ができることを行動に移すのか考えた時、意を決し先輩会員に電話をかけ、恥を忍んで相談したのです。先輩会員からはさまざまなアドバイスをいただき、最後に多方面に精通している方を紹介されました。迷わずその方にも自社の状況をすべてお話し、今後の方向性について適切なアドバイスをいただきました。抱えていた不安も消え、無我夢中で対応に当たりました。そのお陰で当社は少しずつ良い方向に向かい、コロナ前に近いところまで立ち直ることができています。
こういう言い方は不適切かもしれせんが、新型コロナのお陰で、個人的には大きなものを得られたと思います。私と同様、中小企業の経営者は何かと不安や心配を抱え、孤独な方が多いのではないでしょうか。また内部事情を話したくない気持ちもわかりますが、勇気を出して仲間に打ち明ければ、良い方向性が見つかることもあると思います。同友会のメンバーは他人の会社のことも親身になって考えてくれるということを、今回学びました。
入会した当初は退会することばかり考えていた私ですが、今は同友会に誘ってくれた知人をはじめ、辛抱強く引きとめてくれた会員の皆さんに感謝しています。
今後は私が、私のように悩んでいる仲間のために、でき得る限りのフォローを行い、共に学んでいこうと思っています。
■会社概要 設 立:2005年 資 本 金:300万円 従業員数:23名 事業内容:介護業務、修繕工事一式、遺品整理、草刈業務、除雪・排雪 |
(2020年7月13日「オホーツク支部同友会120%活用術」より 文責 畠山幸治)