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【69号特集4】インタビュー カワテックス(株)代表取締役社長 河戸三千之(砂川)

2021年01月15日

滝川市で生まれ、幾度の危機を乗り越え60年。タンクの製作に未来を見た。

 

 昨年度退任するまで、道北あさひかわ支部の副支部長を8年間務めてこられた河戸社長。どのような経営者人生を送られてきたのでしょうか。会社の話、そして同友会との関わりについてお話をうかがいました。

 

 

 


 

─本日はよろしくお願いします。早速ですが会社のことについて教えて下さい。


 当社は1960年に創業し、各種タンク類の製作や補修に加え、製罐加工なども行っている会社です。道内に3拠点を構え、本州や海外にも開発拠点や工場を持っています。昨年度の売上高は10億円を超えました。


 一概にタンクといっても、その用途に応じて様々な種類があります。当社ではガソリンスタンドやビルに据え付けられる油タンクや水道・設備関係で使うことの多い水タンクのほかに、化学薬品を保存するためのタンクや温泉タンクなどの製作も行っています。多様なニーズに応えることで、地下オイルタンクの分野では道内年間ナンバーワンの出荷本数となっています。

 

─創業した時からタンクの製作をされていたのですか?


 いえ、そうではありません。創業者は私の父なのですが、ビートの移植機などを製作する会社に勤めていた父が60年前に独立し、農機具の修理を始めたのが始まりです。時代の流れとともに農機具から鉄工業に徐々に主軸を移していきました。私が社長に就任したのは1998年です。危機突破のための社長交代でした。

 

タンク製作を主力に

 

─どのような経緯で現在のタンク製作に至ったのでしょうか。


 バブル経済崩壊の余波が長く続き、当社と取引のあった建設会社も徐々に疲弊していきました。仕事が減り続ける中、このまま手をこまねいているわけにはいかないと経営コンサルタントに入ってもらい、経営上の問題について徹底的に調査しました。そのコンサルタントは、「鉄工の仕事は利益が少ないからやめた方がいい」と言うのです。鉄工業をやめたとして何ができるのか、頭を悩ませる日々が続きました。


 ある日、コンサルタントの紹介を通じて石川県のタンクメーカーである玉田工業(現タマダ)の玉田善明社長(現代表取締役会長 石川県同友会相談役)とお話する機会に恵まれました。話を聞いてみると、北海道でタンクを製作できる工場を探しているということでした。これは願ってもないチャンスだと思い早速交渉したところ、なんと取引を即決していただくことができたのです。以来今日に至るまで良好な関係を築くことができています。


 ちなみに河戸家のルーツは石川県加賀市にあります。もしかしたら何かの導きがあったのかもしれません。

 

地下オイルタンク埋設施工

 

同友会との出会い

 

─同友会に入会されたきっかけは?


 私が社長に就任して10年ほどが経ったときのことです。クローバーシステムの粟田和成社長から「勉強のできる会だから」と同友会に誘われました。経営の勉強は嫌いではありませんでしたし、学べる会なのであれば入ってみようと、最初は軽い気持ちで入会を決めました。


 しかし、いざ入会したものの例会にあまり参加できず、一時は退会も考えるほどでした。


 そんなとき、支部幹事をやりなさいと粟田社長からお声がけをいただきました。少し悩みましたが、悩んでいるくらいならと参加した支部幹事会では、百人百様な経営者の方々と出会い、これまでにないつながりを持つことができました。そこから徐々に同友会活動にのめり込んでいきました。支部幹事として取り組んださまざまな活動から得たものは、今でも私の大きな財産になっています。


─同友会活動の中で、特に印象に残っていることは何ですか?


 それは全国行事です。まだ参加したことのない会員の皆さんにも、ぜひ参加していただきたいと思います。誰々の話が良かったから、ということではありません。参加者一人ひとりから強烈なインパクトを感じます。知らない土地、知らない方々だから余計にそう感じるのかもしれません。全国の方々から聞く話は初めて耳にする事柄ばかりで、非常に参考になります。これを活かすことができれば経営者として成長することは間違いありません。参加費等はかかるかもしれませんが、間違いなくその価値はあります。

 

新たな地区会の立ち上げを支援

 

─空知中央西地区会の立ち上げに関わったと伺っています。


 現在の道北あさひかわ支部には、旭川市内を除いて8つの地区会があり、私は空知中央地区会に所属しています。名前を挙げていただいた空知中央西地区会は、2015年に発会したまだ新しい地区会です。前者は赤平市を、後者は滝川市を中心に活動しています。


 今から5年前のこと、当時空知中央地区会の会長を努めていた植松電機の植松努社長に「滝川市に地区会を作りたい」と提案しました。そして「両方の地区会を引っ張ってもらえないか」とも。植松社長からは、自分たちで考えながら作りあげたほうがいいよと言われました。そこでキーマンとなる方々や各方面にお声がけし、複数回の準備会を重ね、その年の11月に13名の会員で空知中央西地区会を発会しました。


 今や所属会員数は33名にまで増え、経営者のみならず経営幹部や従業員の方々も巻き込んで活発的な活動を続けています。

 

国際ビジネス連絡会

 

─今は北海道同友会の国際ビジネス連絡会代表をなさっていますね。


 2019年に代表に就任しました。国際ビジネス連絡会には、これまで支部ごとに行っていた国際的なテーマの勉強会や講演会を、連絡会が中継役となって広めようという狙いがあります。残念ながら道内すべての支部に国際的な活動を目的とした組織はありません。しかし、海外を相手にしたビジネスを行っている方々は全道各地にいらっしゃいます。


 こうした方々に情報を届けるために、今年度はグローバルな視点を持って国際ビジネスに関わっている中国・ベトナム・アメリカの企業・拠点の方々にご講演をいただいています。マスコミ等で伝え聞く話と実態が異なっていることも多々あるので、現地の人から実態を聞いてほしいという狙いもあります。


 このような活動を通して国際ビジネス連絡会の役割を知ってもらいたいですね。

 

変革期を見据え新たな挑戦を

 

─同友会や事務局へ望むことは。


 同友会はこれからが正念場だと思います。新型コロナウイルスの影響もあり、退会数は増えるかもしれません。しかし、悩みの多い経営者にとって、同友会会員を続ける意味は必ずあるはずです。


 事務局には会員訪問を続けてほしい。地元の会員同士では言えずとも事務局には言えることもあるはずです。会員に寄り添い、悩みや不満の種を摘んでいくことが大切だと思います。


─最後に、カワテックスの展望についてお聞かせ下さい。


 当社はこれまで20年ごとに訪れる大きな波を乗り越えてきました。最初の20年は農機具を、次の20年は機械と建築(鉄骨)を、そして直近の20年間はタンク製作と、主力の製作品を変えながらです。これまでの流れであれば、そろそろ次の変革の時期を迎えているのかもしれません。そのためにも5年後10年後を見据えて新しい技術を使ったタンク開発に挑戦しています。


 34歳の息子も今年入社し、後継者として日々頑張っています。息子は大阪オフィスに勤務していて、今月大阪中小企業家同友会に入会しました。まずは冷静に立ち振る舞う事の大切さを学んでほしいですね。


 会社は本当に弱いものです。何もしなければ会社はなくなってしまいます。どんな状況であろうと利益を出すように努力を重ねるのが知恵。コロナに負けず、地域の方々と共に歩んでいきましょう。


─本日はありがとうございました。

 

■会社概要
設  立:1960年
資 本 金:10,000万円
従業員数:67名
事業内容:各種タンクの設計・製作・設置・メンテナンス 各種プラントの設計・製作・メンテナンス 鋼構造物の設計・製作 第1種圧力容器設計・製作 鋼製地下タンク内面FRP施工 天井クレーン設計・製作

 

 

(2020年10月6日収録 聞き手 神谷大輔)