気流
2018年04月15日
車椅子の物理学者ホーキング博士が、3月14日に死去しました。一般相対性理論で存在が予言されたブラックホールに関する研究が有名で、著作等を通して現代における宇宙像を一般にも広めました。奇しくも3月14日は相対性理論を発表したアインシュタイン博士の誕生日でした。
それまでの宇宙観では空間と時間は絶対不変なものでしたが、アインシュタイン博士はその固定概念を打ち壊し、空間は歪み、時間は伸び縮みするものであることを相対性理論で明らかにしました。生活の中でこの現象を実感することはできませんが、「世界は我々が思っているよりも絶対的な存在ではない」ということは、科学以外の分野でも繰り返されているテーマです。
映画『羅生門』では、ある事件の真実が証言者によって食い違ってしまいます。客観的事実は一つしかないと考えがちですが、哲学者ニーチェは「事実というものは存在しない。解釈だけがある」と事実の存在自体を否定します。仏教の開祖仏陀も「色即是空」(物事には実体がない)と説きます。
これらの言葉が生まれた背景と結論はそれぞれ異なりますが、言葉だけをとれば、人間の思考が「絶対」を求めがちであるからこそ、多角的または別な次元から眺めることが重要なのだと教えてくれます。自分の立場や経験則から得た絶対的な法則を一度疑うことで、当たり前だと思っていた物事の意外な側面が垣間見えるかもしれません。