【レポート】北海道中小企業家同友会景況調査報告(2019年7~9月期)
2019年10月15日
全国とは対照的な3期連続の改善
―震災前水準に戻るも、次期は大幅悪化懸念―
文責:大貝 健二
(北海学園大学 経済学部)
北海道中小企業家同友会2019年第3期(7-9月)景況調査における業況判断DI(前年同期比)は、6.4ポイントの改善を示し、マイナス2.6から3.8と水面上へ浮上した。全国の動向とは対照的に、2017年第4期(10-12月期)から3期連続の改善である。4-6月期調査では、7-9月期から景況感の改善に急ブレーキがかかると懸念されていたが、そうした不安を一蹴する改善となった。日銀短観(北海道)においても、同様の傾向を示している。これまでの景況感の改善は、昨年9月に生じた震災によるものであり、今期で震災前水準にまで回復した感がある。次期以降の見通しに関しては、10月からの消費増税の影響、夏以降の韓国からのインバウンド観光客の大幅な減少、極度の製造業の落ち込みなど、多岐に波及すると思われる懸念材料が並ぶ。各指標も、軒並み大幅な悪化見通しとなっている。
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業種別にみると、今期は、建設業を除いた業種で改善し、とりわけ流通商業の改善幅が大きいことが特徴である。建設業は5.1ポイントの悪化で水面下へ沈んだのに対し(1.6→マイナス3.5)、製造業は水面下での推移ではあるが5.6ポイントの改善(マイナス15.6→マイナス10.0)、流通商業は15.6ポイントの大幅な改善で水面上へ浮上した(マイナス9.1→6.4)ほか、サービス業は7.1ポイントの改善で高水準を維持している(20.8→27.9)。
10月17日に開催された景況調査分析会議では、今期大幅に改善した流通商業の要因に関しては、冷凍食品の輸送に関連する物流が好調だったのではないかという意見に加え、サービス業が高水準で推移しているのは、インバウンド観光客による影響が大きいのではないかという意見が出された。しかし、興味深いのは、北海道の場合、観光客のナショナリティによって、訪問する地域が大きく異なることである。特に夏以降、国家間の政治問題が深刻化してからは、訪日韓国人旅行客の大幅な減少が新聞等で報道されている。韓国人旅行客数は、2018年度の『北海道観光入込客数調査報告書』をみると、73万1,200万人であり、北海道を訪れる外国人観光客の23.5%を占めトップであるが、彼らの宿泊先は札幌や小樽などの道央圏が目立つ。今期の地域別業況判断では、道央がマイナス4.1ではあるが、札幌が2.8、小樽がマイナス53.3である。調査回答数に大きな差があるので、直接的に議論に結びつけることはできないが、他地域と比較して、韓国人旅行客の急減が道央圏、とりわけ小樽の地域経済に大きな影響を及ぼしていることが推察される。
そのほか、建設業をめぐる情勢についても活発な議論がなされた。特に建築分野においては、資材価格が高騰し続けていることに加え、度重なる自然災害も相次いでいることから、資材価格高騰の常態化を懸念する意見や、極度の人手不足が続いていることも相まって、公共工事の入札が割に合わず成立しないケースが増えていることが指摘された。
次期見通しは大幅悪化見通しである。その理由は、「今年9月は、増税前ということも重なり順調ですが10月以後が厳しい見通し」(流通商業)というコメントに端的に表れているように、増税の影響懸念である。また、国際情勢も非常に不安定であり、製造業を中心に間接的に影響を受けるものと思われる。景況感の悪化を最小限にとどめるための創意工夫が必要であろう。
≪景況調査について≫
・景況調査は、回答者の意識・マインドを基に景気動向を分析する調査です。
・特に、同友会が実施する景況調査は、経営者の意識を反映するものであるため、景気動向がはっきりと表れやすいと言われています。
・景況動向、および「次期見通し」を自社の経営指針等の見直し等に活用してください。
≪DI値について≫
・DI値は、「良い」と回答した割合(%)から「悪い」と回答した割合(%)を引いた数値です。
・「良い」と回答した企業が多ければ多いほどDIは高水準で推移するが、その逆もしかり。
・景況調査では、(1)DI値の水準(プラスかマイナスか、また水準はどの程度か)、(2)前回調査からの好転幅、悪化幅の大きさを主に見ていきます。
・DI値の変化幅について
①1ポイント以内の場合:「ほぼ横ばい」と表現します。
②1~5ポイントの場合:「やや」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。
③10ポイント以上の場合:「大幅な」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。