【54号巻頭言】会社をふるさとに
2006年01月01日
北海道中小企業家同友会 代表理事 本郷 利武 ((株)ユタカ商会 代表取締役)
同友会の共育理念形成に大きな示唆をいただいてきた大田堯先生(東京大学名誉教授)の講演と、夜間中学の記録映画『こんばんは』(森康行監督)の上映会が昨年11月、札幌支部の主催で開催されました。
夜間中学から学ぶこと
映画の舞台は東京都墨田区立文花中学校。様々な理由で学ぶ機会を失っていた10代から80代までの生徒が目を輝かせて学びあう姿を3年間にわたって追ったドキュメンタリーです。
国語を教える見城先生が学校へ向かう通勤シーンでは、急ぎ足から小走りになっていく様子をカメラが追います。「早く学校へ行きたくて……」。まるで夏休み明けに登校する小学生のようです。
教室には言葉を発することができない伸ちゃんがいて、伸ちゃんの祖父母と同世代の同級生たちが温かく見守っています。映画の終わり頃、伸ちゃんが朗読をします。
「あっ、しゃべった」。
会場のあちこちからつぶやきが聞こえ、拍手も起こりました。
「学校はおもしろいところです。学校は何でも教えてくれるところです。学校の先生は親切です。学校は1番いいところです。学校は夢のあるところです。学校は宝物があるところです。学校は勇気をくれるところです。学校は故郷となるところです」。映画「こんばんは」の最後は、こんなナレーションでしめくくられました。
「学校」を「会社」に置き換えてみると、どうでしょう。会社はおもしろいところでしょうか。経営者は走らんばかりに出社しているでしょうか。
「会社はふるさと」と思ってもらえる企業づくりが、私の新たな目標となりました。
人材育成融資の登場
昨年11月に、「新人王」と名づけられた新しい融資プランが札幌銀行さんから発表されました。新卒採用を行う道内中小企業を応援するため、新卒者一名につき300万円を、無担保、第三者保証不要で金利は格安の1%。採用した社員が1人前になる3年間でご返済下さいという、これまでになかった「人材育成融資」です。
この商品開発のきっかけとなったのは、7月に同友会が開催した「地域金融懇談会」でした。「中小企業にとって企業発展の要は人材。新卒の採用と育成を応援する人材育成融資ができないか」という思いを受け止めていただき、商品化されたものです。ぜひ全国にも広がればと念じます。
「3位1体」の改革では、義務教育費の国庫負担率削減も見込まれています。富める国の貧しい教育政策を抜本的に見直してこそ、真の改革です。人は幸せになるために生まれてくるのですから。