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【1世紀企業 91】 越後屋陶器店(小樽市)

2026年02月15日

昭和10年頃の店舗前の様子
越後久治社長

      花園町に根付いた商い
     小樽の暮らし支える陶器店


越後屋陶器店は、1911(明治44)年、石川県出身の創業者・越後久左ヱ門氏によって、小樽市花園町にて創業しました。開業当初は日用品としての陶器や雑貨を扱う小売店として地域に根差し、庶民の暮らしを支える存在として親しまれてきました。

 久左ヱ門氏は、1884(明治17)年、石川県羽咋郡末森村に生まれ、11歳のときに北海道小樽へ移住。小樽の陶器・雑貨卸問屋で丁稚奉公を務めた後、日露戦争に従軍。戦後に再び奉公を経て、1911年に27歳で独立し陶器店を開業しました。創業当初の店舗は、現在の店舗向かいとなる花園町畑14番地にありました。

 当時の小樽は、港湾と鉄道を中心に発展を遂げ、市内各地では商店街や歓楽街が形成されていました。また、松ヶ枝町の「南郭」や梅ヶ枝町の「北郭」など、市内各所に遊郭もありました。久左ヱ門氏は、大正期に南郭と取引関係を結び、経営者からの信頼を得て、出入り商人として認可されていたといいます。当時、遊郭への出入りは限られた商人にしか認められていなかったため、同店の信用の厚さがうかがえます。

 13(大正2)年には、店舗所在地の花園町に商店街組織「花園中央会」が発足。同店はその構成店舗として、地域商業に貢献してきました。74(昭和49)年には組織が法人化され、「小樽花園中央商店街」へと改称。同店は、79(昭和54)年に店舗を改築すると同時に「有限会社越後屋陶器店」として法人化し、経営体制を強化しました。

 戦後は、二代目・越後久司氏が店舗を継承しました。26(昭和元)年生まれで、北海商業高校(現・北照高校)を卒業後、戦中は北海運輸局で暗号文書の解読などに携わり、戦後の47(昭和22)年家業を継ぎました。久司氏はその後、半世紀以上にわたり陶器店を運営する傍ら、小樽市博物館歴史文化調査会の会員としても活動しました。小樽の地域史や戦時体験を後世に伝える語り部としても知られています。

 昭和期に入り、商業構造が変化する中でも、同店は地域密着型の営業を続けました。裏通りには演芸館が連なり、店はその客層にも器や雑貨を提供していたといいます。今でこそ静かな街並みに見える花園の一角も、かつては人と文化が行き交う小樽の中心地の一つでした。越後屋はその変遷を見つめ続けてきた「まちの記憶の一部」でもあります。

 現在は85(昭和60)年に承継した三代目・越後久治氏が、陶器およびギフト用品の販売を中心に店舗を運営しています。毛筆でののし書きや包装を一つ一つ手作業で行うなど、細やかな対応により信頼を維持し、長年にわたり地域に根差した店づくりを続けています。

 また、長男諒治氏、次男雅之氏は別業態で飲食事業を手がけており、それぞれの立場から「暮らしに関わる仕事」を通じて、地域とのつながりを継承しています。

 創業から110年余。越後屋陶器店は、これからも「暮らしの器」を届ける老舗として、地域とともに歩み続けます。