【講演録】一人ひとりの存在を認め、強みを活かして弱みを消し込む企業づくりとは?/モルツウェル 専務取締役 野津 昭子氏
2026年01月15日

◆夫婦で起業して
島根県松江市に本社を置き、1996年にほっかほっか亭学園通り店を夫の積氏と起業しました。現在は全国の高齢者施設に向け調理済み食品の製造販売、松江市内の在宅高齢者向けの弁当配食サービス、厨房運営の受託事業、買い物支援などを行っています。
◆障がい者雇用との出会い
シニアフード事業を始めた頃に早朝の作業が発生し、人手不足で困っていました。そんな時、島根県立松江養護学校から相談があり、実習である男子生徒を受け入れました。すると、その生徒さんの作業が驚くほど速く丁寧だったのです。それを機に、養護学校の実習受け入れを始めました。
社内で障がいの種類やサポートの仕方などを学ぶ勉強会や親睦会を開き理解を広げ、受け入れ態勢を整えていきました。障がい者と共に成長する社風が広がり、現在の雇用状況は全社員の9%、過去3年間に採用した障がい者の定着率は100%となりました。
障がい者雇用を始めて20年。最初は不安もありましたが、今ではなくてはならない存在です。1人当たりの付加価値額も8年前と比較して1・4倍、全従業員の昇級額は平均8%ほど増えました。
◆大切にしている3つの〝き〟
私は、第20回中同協女性経営者全国交流会(2017年)の記念講演で昭和女子大学総長の坂東眞理子氏から学んだ、「『3つの〝き〟(期待、機会、鍛える)』が循環する環境づくり」の考え方を大切にしています。人は期待されて機会を与えられます。成長しようと思う自分を鍛える気持ちがあれば、仮に失敗しても、それを経験として生かせば可能性は無限大だと思います。
◆誰もが最期まで「ごきげん」な社会を
働く人も家族も、そしてサービスを受ける人も、誰もが最期まで「ごきげん」な社会をつくるにはどうしたらよいのでしょうか。第一の道は女性の活躍です。女性が働きやすい環境をつくるために、軽量化や作業をアシストするシステム開発も進めています。第二の道は高年齢者の活躍です。全社員の30%が60歳以上で、高齢者と若者が力を合わせる場づくりを心がけています。
第三の道は外国人の活躍で、新卒採用の中国人や技能実習生のベトナム人、フィリピン人の事務担当などを国籍に関わりなく採用してきました。そして、第四の道は就労困難者の雇用です。就労困難者は全国に1796万人いるといわれています。弊社では、人材不足の厨房と働きたい障がい者をマッチングさせ実証事業を行い、障がい者スタッフのみで松江市内2つの介護施設の厨房を運営させることができました。
年齢、性別、能力、背景の違いは決して分断要因ではありません。「ニューロ(脳・神経)ダイバーシティ(多様性)」と捉え、違いを優劣ではなく多様性として尊重し合い、受け入れることがよりよい職場や社会を築く上で不可欠です。一人一人の個性や特徴を認め合い、それぞれが持つ強みを活かせる環境づくりこそ、私たちに求められている使命なのではないでしょうか。(10月28日、2025障がい者雇用を通して企業づくりを考えるフォーラム)
| のつ・あきこ=1973年島根県奥出雲町生まれ。商品開発、工場長、営業部長を経て2012年より現職。18―22年島根同友会女性部会長、23―24年障がい者問題委員会担当理事。現在は理事、政策委員会副委員長、広報委員会幹事を兼務。 |
