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【1世紀企業 86】丸由今津(旭川市)

2025年04月15日

今も昔も変わらず家族の支えが商売の礎

           地域に根差し、未来見据えて挑戦
             新たな取組で進化遂げる


丸由今津は、1912(大正元)年に旭川で創業し、長きにわたり地域に根差す鮮魚店として市民の食卓を支えてきました。創業者は、岐阜県大垣で魚屋を営んでいた今津氏。今津氏は新天地北海道に渡り、人口が5万人を超え発展を遂げていた旭川にやってきます。大八車に魚や干物などを載せては、市内の住宅街を引き売りしながら商いを始めたといいます。

 そして40(昭和15)年頃、市内一等地にあった「拓殖小売市場(たくしょく市場)」に最初の店舗を構えました。市場は「庶民の台所」として親しまれ、戦後から昭和30年代にかけて最盛期を迎えます。本通りには馬そりが並び、通路の両側に多彩な店舗が軒を連ねて活気に満ちていました。旅館や飲食店への納品も多く、護国神社招魂祭の時期には市場が注文対応に追われるほどのにぎわいでした。

 2代目は商才に長け、寡黙ながらも情熱をもって事業を拡大します。市場には魚の香りが立ちこめ、氷に並べられた海産物と威勢のよい掛け声が市場に活気をもたらしていました。高度経済成長期には、年末の市場が買い物客であふれる風物詩となりました。

 先代社長で現会長の今津実氏は、幼少期から市場で働く家族の姿を間近で見て育ちます。実氏の祖母・ヒデ氏が万引き犯を常磐公園まで追いかけたというエピソードもあり、家族の支えが商売の礎となっていたことがうかがえます。2014(平成26)年に市場が閉場するまで、この店を商売の原点として長年にわたり庶民の暮らしを支えてきました。

 郊外にスーパーマーケットや大型店舗が相次いで出店し、個人商店が減少する中、同社は卸売と小売の分業体制を整えるなど、柔軟に事業の舵取りを行ってきました。

 現社長・今津徳氏は、19(令和元)年に5代目に就任しました。就任直後には新型コロナウイルスの影響で、卸売部門が大きな打撃を受けた一方、小売部門は外食を控えた一般消費者の利用が増加。地域に根差した強みを生かし、厳しい局面の中でも着実に事業を継続することが出来たのです。現在は旭川市内のほか、北見市にも店舗を展開。店頭には伝統を受け継ぐ目利き職人が選び抜いた魚が並び、真ほっけや銀鮭などの看板商品は今も顧客から根強い支持を集め、地域の流通拠点としての役割を果たしています。

 さらに近年は、富良野や温泉地など観光地への販路拡大や、インバウンド需要への対応も進めています。酢飯を使用したおにぎりや地元酒造会社と連携した粕漬けなど新商品を開発する一方、ふるさと納税やSNS、紙媒体を活用した販促活動にも力を入れています。

 経営環境の変化に対応しながら、地域の食品業者との連携も強化し、100年の歴史を礎に新たな価値の創造を見据えた歩みを進めています。