胆振東部地震の影響 道銀地域総合研究所 坂野主任研究員報告
2018年11月15日
胆振東部地震による北海道経済への影響をどう見るか。道銀地域総合研究所の坂野公紀主任研究員に聞きました。
今回の地震による被害額は北海道などの推計で2700億円、その他、停電による出荷取りやめ等で発生した商工業の減収額は1318億円。経済的損失は4000億円を超えているとみられます(表1)。
北海道のGDPの約6割を占める「個人消費」は、不要不急の消費抑制、外出抑制傾向が見られ、「観光」も風評被害による影響の長期化が懸念されることから、北海道銀行では道内の「現在の景気」と「3か月後の景気見通し」を下方修正しました。復興に向けた公共工事も、補正予算はこれから。冬の工事が難しい面があること等を考慮すれば、経済効果が出るのは年度明けとみられます。
北海道では、インバウンド客の来道目標を500万人に設定しています。弊社では、この目標が達成した場合の観光消費による経済波及効果は、公共工事を上回ると試算しています。北海道における一人一回当たりの観光消費額はおよそ、道内客が2万4千円、道外客が7万5千円に対し、インバウンド客は13万3千円です。観光関連消費、特にインバウンド消費の低迷は、経済的損失が大きく、非常に心配されます。
それでは、宿泊客がいつ戻ると考えるか、先行事例を見てみます。16年4月に発生した熊本地震では、震災から2カ月で宿泊数は前年並みに戻りました。これは、復興支援や工事関連の宿泊が増えた結果であり、観光客、特にインバウンド客が回復するには丸1年を要しました。(図1)
ある意味で、今回の地震は最悪の結果ではありません。もし真冬だったら、震源が住宅密集地に近かったらどうだったでしょうか。札幌市では、厳冬期に月寒断層でマグニチュード7・3の地震が起きると、最大想定死者は8234人、札幌市内の経済的損失だけみても6・7兆円に達すると試算しています。
地震とブラックアウトを経験した今だからこそ、BCP(事業継続計画)の策定、体制構築を真剣に考える好機です。BCPは、災害や重大事故が発生した状況において、限られた経営資源の中でどのように短時間で対応するかをあらかじめ準備する取り組みです。仕事を見える化し、多能工化を図ることなどをはじめ、BCPが構築されている企業は、取引先からの信頼度が向上し、日常の経営改善につながることが多く存在します。ぜひ具体化してほしいと思います。
(10月10日、第3回理事会の基調報告から)