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働き方改革がもたらす社会の転換期に向けた我が社の取り組み/米澤通商 代表取締役社長 米澤 輝和 氏

2024年10月15日

 
◆2024年問題と物流業界
 トラック運送業界が抱える問題の背景に、規制緩和があります。1990年からの自由競争で全国の運送業者数が増加し、今では6万3000社にも上ります。その99%は中小企業で、小規模業者間の競争となっているのです。就業者の年齢構成比では、10―20歳代が少なく、40―60歳代が増加。就業者数はあまり減っておらず、コロナ禍もありEC販売の需要増が人手不足感を増しています。

 トラックドライバーの賃金、労働時間の現状をみると、全産業平均比では年間所得額が大型トラックで約4%、中小型トラックでは約12%少なくなっています。さらに年間労働時間は、全産業平均比で大型トラックが444時間(月37時間)、中小型トラックでは396時間(月33時間)も長いのが現状です。こうした状況の改善を検討していた中で労働時間の上限が定められ、解決が迫られているのが物流業界です。

 ◆当社の現状分析と対応
 運送業は、扱う荷物により状況も抱えている課題も異なります。イベント時期等で多少の変動はありますが、当社は食品を扱っているため、基本的に365日稼働しています。

 労働時間規制の対応のために、まず始めに「2024年4月から時間外労働の上限規制が始まること」を社内に周知しました。そして、従来は運送距離を優先していましたが、今後は「時間」を優先した対応が大切になってくると伝えました。その上で、残業が月80時間以内であるかを実態調査しました。

 次に時間外労働の発生要因を分析しました。走行距離や時間の制約に起因するものや、取り決め内容と実際の運行内容が異なるもの、さらにイレギュラー増便や、慢性的な人員不足による休日出勤の発生など、現場レベルでの変更が多かったことがわかりました。そこで、運行に付随する料金・手当の算出基準の変更や、複数の運行(長距離と短距離運行)のローテーション、さらにシフト管理による労働時間の平準化などを実施しました。

 ◆同業他社との協業も
 しかし、運行車両と従業員数を増やさない限り、自社内での課題解決へは打つ手がないことも事実です。そこで、同業他社との協業にも取り組みました。取り扱い品目や配達エリアが類似する運送業者とコンタクトを取り、相互に混載可能な路線や荷物に関する情報を交換し、協働配送や部分的な配送委託を含めた中継輸送について検討しました。また、荷主・納品先への働きかけにも力を入れました。

 ◆業務の分解、分析、改善のサイクルを
 時間外労働の上限規制への対応をきっかけに、業務の棚卸しができ、自社内だけで解決できることが少ないことがわかり、荷主や同業者にも率直に現状を打ち明け、話し合いを重ねることができました。革新的な手法で大幅に改善できた事例などはありませんが、業務を分解し、分析し、改善していくサイクルを継続し、労働時間を守りながら荷物を運び続けます。25年3月にどんな結果が出るのか楽しみです。(8月26日、とかち支部8月例会)

よねざわ・てるかず=1979年十勝郡浦幌町生まれ。日本大学商学部卒。2001年に食品卸の北海道リョーショク(現・三菱食品)入社。その後、11年に米澤通商、ヨネザワデイリーに入社し、代表取締役社長就任。