新学長が語る! 室蘭工業大学の今~真なる探究心から未来の価値づくりを。~/室蘭工業大学 学長 松田 瑞史 氏
2024年09月15日
室蘭工業大学には、現在教職員が約270名、学生が約3300名在籍しており、1949年に新制国立大学として発足し、2024年に創立75周年を迎えました。
今から6年前には、工学部から理工学部に名称を変更しました。理の要素が強いシステム理化学科と工の要素が強い創造工学科で構成されており、今年から「真なる探究心から未来の価値づくりを。」をスローガンに掲げています。
「価値づくり」がポイントで、工学部のままだと「ものづくり」という表現だったかなと思います。理工学部になったこともあり、ものをつくるだけでなく、価値をつくれる人材に育ってほしいという願いを込めています。
◆大学のミッション
大学のミッションの一つ目は「教育」、二つ目は「研究」、そして「共創」です。
社会共創では企業、自治体、金融機関などと連携し、カーボンニュートラルへの貢献を中心に進めています。
具体的な例の一つは、白糠町と室蘭工業大学で進めている共同事業です。元々はシソの研究している教員が本学におり、白糠町はシソの産地であることから繋がりが生まれました。現在は白糠町の若者たちと、どういうことが生きがいか、町民の意識調査なども含めて情報学的に研究を進めています。
このほか三笠市とは、石炭地下ガス化、カーボンゼロ(CO2 固定化)の研究を進めています。地下に眠る石炭を再利用できないかというのが発端です。石炭を地下で燃やし、ガスだけを取り出しエネルギーとして有効活用し、発生した二酸化炭素を固定し埋め戻すことを実証実験しています。
さらに航空宇宙機システム研究センター(ロケットとハイパーG)関連では、白老エンジン実験場とUinear Hyper―G環境学術領域の創成に力を入れています。インターステラテクノロジズとの共同研究ではロケット「ZERO」の心臓部であるターボポンプの共同開発を担当しています。
◆室蘭での取り組み
室蘭市、室蘭ガスほか民間企業との共同研究として、既存のガス配送網を活用した小規模需要家向け低圧水素配送モデル構築・実証事業を行っています。水素は二酸化炭素が出てこない、ゼロカーボンのエネルギー源として有力視されていますが、水素は高圧ボンベに入れて運ぶため、危険で資格が必要です。そこでこの実証実験では、常圧の状態で運ぶというのがポイントです。そのため、水素吸蔵合金でタンクをつくり水素を安全に配送できる実験を行っています。
◆新コース開講
今年4月、高度情報専門人材(専門×情報)を育成するため、大学院博士前期課程情報電子工学系専攻に共創情報学コースを新設しました。今年度は15名定員のところ52名が入学しています。
大学院教育の充実を図り、大学院進学率50%を目標に定め、北海道の価値づくりに貢献する高度専門理工系人材の育成に注力していきます。
(7月25日、西胆振支部7月例会)
まつだ・みずし=1962年室蘭市生まれ。89年北海道大学大学院工学研究科電気工学専攻博士課程修了。94年室蘭工大助教授就任。2004年同大学教授、11年副学長、24年4月学長に就任。 |