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【わが人生わが経営 152】安藤行政事務所 代表取締役所長 安藤 壽建氏(74)(札幌支部)

2024年04月15日

 

複数の選択肢を提案

思い立ったらすぐ行動に

 

 「まだまだ未完成。色々なことに関心を持ち、どんどん新しいことにチャレンジしていきたい」

 

 安藤さんは1949(昭和24)年、壮瞥町で6人兄弟の次男として生まれました。家業は青果の販売をしていたといいます。小さい頃は絵を描くことが好きで、画家を目指していた時期もありました。小学生の時は、「毎日、昭和新山ばかり描いていた。活火山なので日々山の形が変わり、それが面白かった」と目を輝かせます。

 

 中学校に入ると、自動車に興味を持った安藤さん。そして、室蘭工業高等学校機械科(夜間の部)に進学。部活動ではバドミントン部に所属し汗を流しました。昼間は、1年目に職業訓練校機械科、2年目には自動車整備学校にも通いました。

 

 昼間の学校を卒業した後、2年間は室蘭のトラックの修理工場で働きます。その後、札幌トヨペットに就職し、整備工として約2年間勤務。その間、夜間には北海道自動車短期大学に通い、勉学にも励みました。

 

 「昼間は働いて、夜間に勉強する。短時間で効率的に学ぼうという思いが強く、自分にはぴったりだった」と振り返ります。

 

 安藤さんは「将来、自動車修理の町工場を経営したいと考えていた」と当時の夢を語りますが、69(昭和44)年に社会問題化した欠陥車問題の影響もあり、その夢を諦めたといいます。

 

 そんな安藤さんに、自分の将来を考える出来事がおきます。交通事故を起こし、相手に怪我をさせてしまったのです。「33日のことだった。事故のことは今も忘れない」と話し、この事故をきっかけに、法律への関心が膨らんだといいます。「1年間ほど自分の将来についてじっくり考え、自動車短大の先生(民法)のアドバイスも力となり、行政書士を目指すことにした」といいます。

 

 車業界を離れた安藤さんは、まず行政書士事務所に勤め、基礎から学びます。最初のうちは、交通事故の処理などを任されました。

 

 そして、自分で事務所を立ち上げるため、行政書士試験を受験し、見事合格しました。73(昭和48)年、安藤行政事務所を開業しました。

 

 また、同年、北海学園大学法学部(夜間の部)への入学を決意します。「今まで学んできたことは工学系だったので、法律について一から学びたいと思った」といいます。

 

 開業してすぐは、仕事も少なく、アルバイトをしながら凌いだという安藤さん。紹介や地道な営業活動が実を結び、半年ほど経つと、寝る暇もないほどに仕事が増えていきました。

 

 その後、受験仲間と共に3年ほど勉強を重ね、33歳の時、社会保険労務士の資格を取得。これにより、事業の範囲を広げることもできました。

 

 そして、50歳になった頃、同友会からの推薦状も後押しとなり、北海道大学大学院経済学研究科へ入学しました。大学院では、経営学、経営戦略、経営情報、ブルー・オーシャン戦略などの理論を経営の実践に活かす方法を熱心に研究しました。「ゼミには留学生も多くとても刺激的だった」と微笑みます。

 

 安藤さんが心がけていることは「複数の選択肢を提案すること」。見積もりは2通り、相談などを受けた場合、解決策は3通り提案するようにしているといいます。「経営者が決断する際、複数の選択肢から意志決定することが重要」と力を込めます。

 

 最近の相談は、ハラスメントや労働時間、働き方改革の相談が多いと話し、「社会で起きることは自分の会社でも起きる。自分の会社でも起きることは他の会社でも起きる」と考え、顧客のアドバイスをするとともに、自分の事務所では、経営者してどう対応するかを考えるようにしているといいます。

 

 事務所設立から今年で52年。「あと15年くらいはまだできるかな」と笑顔を見せます。

 

 同友会には友人の勧めで1977年に入会しました。西・手稲地区会では幹事を、2012(平成24)年から10年間、札幌支部経営厚生労働委員会副委員長を務めました。

 

 「異業種の経営者たちと議論することで、経営や雇用について新たな気付きを得ることができた」と語り、「もっと知りたいと思ったら、その会員の会社に実際に訪問したこともあった。その会社がどうして成功するのか、成長しているのかに興味があった」と話します。

 

あんどう・じゅうけん 1949年生まれ、壮瞥町出身。北海道大学大学院経済学研究科修了。

安藤行政事務所=事務所・札幌市。1973年に開業。人事・労務の事務手続きや経営・労務コンサルティングなどを手掛ける。