どうする?北海道の鉄道、そして交通インフラ/北海道教育大学札幌校 准教授 武田泉氏
2024年03月15日
◆3月のダイヤ改定で何がどう変わるか
今年3月のJR北海道ダイヤ改定では、快速エアポートを毎時6本に増発し、新千歳空港へのアクセスが良くなるといわれています。しかし、実際は快速エアポートは特別快速、快速、区間快速に分かれ、後発が先発を追い抜くことはありませんが、発着の間隔も所要時間もランダムになります。区間快速は北広島―南千歳駅間が各駅停車となり、所要時間が延びるデメリットもあり、複雑化します。
さらに千歳線経由の4特急「北斗」「すずらん」「おおぞら」「とかち」が全席指定席化されます。その上、チケットはWEB登録の会員制「えきねっと」で、14日前や前日深夜までに事前購入しなければ割引になりません。駅の窓口・券売機では定価販売となり、札幌―室蘭駅間等は、実質2倍の値上げとなります。事業者側にとっては、効率優先で車両削減・減車が容易になりますが、果たして利用者目線は考慮されているのかが危惧されます。
◆鉄道を維持・発展させるための「上中下分離」私案
ホームが異なる乗換や、バス接続の悪さなど不便なダイヤ編成、さらにはワンマン運行や窓口閉鎖などは、高齢化が進む北海道で利用者離れを加速させてきました。分割・民営化後も多くのローカル線がバス転換されましたが、転換後の代替バスでは短距離利用が増え、長距離利用者が激減しました。今後、利用者に寄り添った鉄道路線を維持・発展させていくには何が求められているのでしょうか。
鉄道は、公共事業に準ずる公益事業と整理されてきました。会計上は、車両運行・運営や保有を行う「上」と、線路施設を保有する「下」とに分かれます。国やJR北海道は「下」は地元引き受けを前提とし、沿線自治体負担を要求しましたが、それは各自治体の財政規模をはるかに超えるものだと思います。
このため、特に道内では「上中下分離」が良いと私は考えます。例えば「上(車両運行)」はJR北海道で、「中(車両保有)」は道庁・沿線自治体、そして「下(路線・線路保有)」は開発局や鉄道運輸機構、もしくは「上」が公募民間事業者で「下」を開発局や鉄道運輸機構、さらにはJR北海道とすれば、はるかに地元が引き受けやすくなると思います。
◆インフラ法制の総合的な再構築を
鉄道は事業者任せな一方で、道路には税金が投入され、手厚く財源が確保されています。道路財源を実質的に鉄道に入れられるようにする「突破口」として「軌道法」を活用できないものでしょうか。これは路面電車の法律で、道路用地上に線路が引けるとされ、地方の鉄道線区を現在の鉄道事業法からこちらへ移管させれば、上下分離の「下」を国が持つ根拠にできると考えます。
「改正地域公共交通活性化再生法」は「母屋」に手を付けず、「屋上のプレハブ」ばかりに手を付けているように見え、母屋こそ変える必要があります。鉄道とまちづくりは一体で進めるべきなのです。鉄道だけではなく、道路法制(軌道法含む)も含め、インフラ法制を抜本的に再構成させ、総合的に再構築していく必要があると思うわけです。(2月2日、産学官金連携セミナー)
たけだ・いずみ=1962年東京都生まれ。東京学芸大大学院、北海道大大学院環境科学研究科を経て、95年道教育大岩見沢校講師。現在は札幌校准教授。専門は人文地理学、地域交通政策論、地域環境政策論。 |