【わが人生わが経営 146】長江建材（株）　取締役会長　長江　勉氏（72）（くしろ支部）

2023年09月15日

経理の電算化に注力

先を読み挑戦する精神を

　長江さんは、1951（昭和26）年、標茶町で6人きょうだいの3男として生まれます。車の整備士に憧れ職業訓練校に入学し、1年間鉄鋼加工の技術を磨き、68（昭和43）年に卒業します。

　卒業後は、鉄鋼関係の仕事に就きました。自分に合う仕事を探し転々としていたところ、父親が立ち上げ、兄（現相談役・文男氏）が経営していた長江コンクリート工業を手伝ってほしいと声を掛けられ、69（昭和44）年、同社に入社します。その後、将来的にコンクリート製品が別素材のものに取って代わるならそれを扱おうと、建材会社を設立することとなり、創立メンバーの1人になりました。そして71（昭和46）年2月、文男氏を社長に釧路市新川町に長江建材を立ち上げ、常務取締役に就任します。

　それまでコンクリート製品しか扱っていなかったため、創立当初は建材会社で何を販売したら良いか分からず、取引先に相談しながら仕入れ作業を進めました。当時は風呂釜の取り付け業者が少なかったため、資材販売と同時に浴槽への風呂釜の取り付け作業も引き受けていました。

　77（昭和52）年、社屋を現在の入江町に移転します。広いスペースの店舗には、文男氏のアイデアでショールームを設けました。当時は道東にショールームを併設する店舗は少なく、浴槽や玄関ドア、洗面台など扱う商材も次第に増えていきました。このことがきっかけとなり、工事の受注も伸びて、社員数も増え、会社も成長していきました。

　2001（平成13）年、50歳で社長に就任します。最初に力を入れたことは、それまで手書き伝票で処理していた経理業務の完全電算化でした。1カ月のスケジュールを1時間単位で模造紙に書き出し、デジタルに置き換えられるところを洗い出し、プログラムに落とし込みました。社員に1台ずつパソコンを配備して事務作業を電算化し、経理担当の業務負担を減らしたことは、経営の大きな転換期となりました。「時代に先駆けた導入で、会社を訪れた人に、パソコンに向かっていると仕事をしているのかわからないと言われたこともあった」と振り返ります。

　長江さんは社長就任後に不動産業も始めました。市場に出回っていた競売物件を落札したほか、物件を自社で建築し賃貸するなど、建材以外のサービスを始めます。

　08（平成20）年のリーマンショックでは取引先の企業が倒産するなど、会社は危機的状況になります。しかし、普段は取り扱わない商品を仕入れ、全社一丸となって販売に奔走し危機を乗り越えていきます。また、不動産業に挑戦していたことも危機を乗り越える一つの柱になりました。

　1998（平成10）年頃、長江さんは同友会へ入会します。まだ専務だった頃で、旧釧路支部副支部長を務めていた文男氏から勉強をしてこいと勧められ、入りました。勧められたのはいいものの、例会には今ほど積極的に参加していませんでした。そうこうしているうちに、01（平成13）年には幹事を引き受け、支部幹事会に出席するようになります。旧釧路支部が統合する最後の1年である15（平成27）年は副支部長を務めました。

　「入会当時から不良会員のまま役員になり、同友会の仕組みも壇上のあいさつもわからず焦ったこともあった」と笑います。

　釧根3支部が統合し「くしろ支部」となった16（平成28）年度からは釧路地区会長、そして17（平成29）年度から6年間は支部長、さらに19（令和元）年度から4年間副代表理事も務め、全道の運動を牽引します。「リアルで会えばタイムキープに困るくらい意見交換をしていたのに、ＷＥＢでは顔色が読めず苦労した」とコロナ禍でＷＥＢ会議を導入したときを振り返ります。支部長任期の後半3年間はコロナ禍での活動を余儀なくされましたが、ＷＥＢと対面開催の併用や運用にも配慮しました。

　23（令和5）年4月にくしろ支部長と副代表理事を退任。現在は支部相談役幹事、全道理事として参加しています。

　長江さんは現在、会長として社員をサポート。営業担当が外回りをしている時間に店舗に来店する一般客の発注を引き受けるなど、今も社員の負担を減らせるよう動いています。「資材高騰で建築業界は八方塞がりな状況だ。同業者もみんな必死。新しい柱になる事業こそ、若い人材なら対応していけるのではないかと期待する」と話します。型にとらわれない精神で駆け抜けた今、次の世代の挑戦を支えています。