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【一世紀企業 72】田巻美石園(北見市)

2023年01月15日

二条店舗新装前の仮店舗(昭和35年頃)

人生を彩る、その力信じて

 

花のある生活を提供

 

北見市で生花園芸店を営む田巻美石園は昨年創業100年を迎えました。創業者の田巻二作氏(雅号・美石)は新潟出身の庭師でした。東京や京都で造園業を学んだ後、当時の勤務先の「田巻家」から苗字をもらいうけました。

 

 その後、野付牛(現・北見市)へと移住し、1922(大正11)年に田巻美石園を創業しました。当初は造園業として始めたものの、野付牛には二作氏が庭師として腕をふるうほどの大きな需要はありませんでした。そこで、原野を開墾した畑に温室を設けて花を栽培し、二作氏の妻スイ氏がリヤカーを引いて販売を始めました。当時の花の需要は仏花、生け花の稽古、旅館料亭などに限られ、一般家庭への普及はまだ先のことでした。

 

 長引く戦争で、長男和作氏は戦病死します。近衛騎兵を務めていた次男の寅三氏が跡を継ぐ決意をしたことから、37(昭和12)年に店舗を開店させました。しかし、戦火の拡大に合わせて物資統制も始まり、当初5名いた店員は少なくなり、公定価格も決められるなど商売が難しくなる中、二作夫婦だけが残り、店を守り抜きました。

 

 2代目の寅三氏は業界のネットワークづくりに尽力しました。昭和30年代から、道内各地の花店を11件訪問し、全道どこでも花が届く環境を目指し仲間づくりに奔走しました。北海道生花商組合連合会の設立に参画し、専務理事、会長を歴任し、社団法人日本生花通信配達協会(現・一般社団法人JFTD花キューピッド)の理事も務めました。

 

 3代目の秀隆氏は、花をより一層身近なものにしてほしいという願いから、多店舗展開を行います。昭和60年代、北見にはデパートや大型スーパーの進出が相次ぎました。そこで、テナントとして出店し、店は一時期市内12店舗にまで拡大しました。地域活動にも熱心で、同友会にも入会し、地域に必要とされる花屋を目指しました。

 

 

田巻順子氏

 2015(平成27)年に父の後を継ぎ、4代目となった順子氏は、創立100周年を記念して北見市内の小学生に花クーポンを配りました。店に花を買いに来た経験のある子どもは少なく「店で誰かのために花を買う」という経験をしてもらいたかったといいます。予想以上の子どもたちが来店しました。笑顔で花を買う姿を写真に収めてポスターにし、各店舗に飾りました。

 

 順子氏は、「現在はモノから真心を送る時代に突入しました。売るものは変わらなくても、時代に合わせることができたから、100年続けることができたと思います。人生を彩る花の力を信じて、誠実に商売を続けます」と語ります。