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【わが人生わが経営 172】㈲サンヨー工業 代表取締役 新鞍 富士夫氏(73)(オホーツク支部)

2026年03月15日


              情熱で職人一筋60年
             同友会に入り多くの金言


「自分には熱意しかない。情熱があったからこそ、ここまで仕事を続けてこられた」


 農業機械の製造販売から修理まで手掛けるサンヨー工業の新鞍さん。2009(平成21年)年に4代目経営者の松浦清一郎氏から事業を継承しました。「丈夫で良いものを工夫して早く作ること。これに情熱を注いできた」と職人の道一筋の人生を振り返ります。

 新鞍さんは、1952(昭和27)年、津別町で農家の三男として生まれます。幼少期は釣りやスキーなど外遊びが好きな子どもでした。

 通っていた中学校から自宅までは4キロほどの距離があり、すぐに家に帰って家業を手伝えるように、変速式の自転車を兄に買ってもらったといいます。毎日乗るうちに、修理も必要になり、自分で自転車を分解している中で、機械への興味が湧き始めました。

 中学卒業後すぐに就職することとなり、学校に複数の求人票が来る中、新鞍さんの目に留まったのは「鉄工所」の3文字。サンヨー工業の前身である長山工業からの案内で、技術を生かせる職に就こうと考えていた新鞍さんにはうってつけでした。

 長山工業は農機具製造を営む鉄工所で、主に農家からの依頼を受けて仕事をしていました。通常業務に加え、石油備蓄タンク溶接や鉄工技能士1級といった難関資格を次々に取得していきました。「お客さんや会社に自分を認めてもらいたいという一心で必死だった」と振り返ります。

 そんな中、転機は83(昭和58)年に訪れます。長山工業は6社ほどの農機具メーカーが集まるグループ企業を作りましたが、営業面などがうまくいかず、連鎖倒産の道をたどります。一時は新鞍さんも失職しましたが、同年に前職時代の同僚ら9名でサンヨー工業を設立。これまで手掛けてきた農機具の製造・修理に一層力を注ぐこととなりました。

 数多くの農機具開発に関わってきた新鞍さんですが、特に思い入れが強いのは、95(平成7)年頃から製造に着手したミニコンベアです。旧知の農家から、新鞍さんの技術力を見込み、直々に依頼を受けました。ミニコンベアは、ビニールハウスでの種まき作業を効率化するためのものです。当時の既製品は全長約4メートルで隅々までの作業には適していませんでした。そこで全長1・8メートルほどのミニコンベアを開発。最初の1台を納品した後には、その完成品を見た別の農家から次から次へと注文が入りました。

 他にも軽トラック用のホロ(覆い)や苗台に加え、農地に積もった雪を踏み固める雪踏みローラーなど数多くの製品作りに携わってきました。手作業が多いため、働き始めからまもなく60年を迎える新鞍さんの手指は、太くゴツゴツした職人の手をしています。

 また、5年ほど前からは北見工業大学などと共同研究も進めています。AI搭載カメラでブドウ房の適切な位置にハサミを入れる自動収穫の研究を行っていて、その装置を載せる台車や摘み取ったブドウを運ぶコンベアの製作を新鞍さんは担っています。「大学生など若い人との関わりがエネルギーになっている」と明るく話します。

 最近の楽しみは「遠方に住む4人の小学生の孫たちと定期的に繋ぐテレビ電話」と笑顔をみせます。

 同友会は知り合いの紹介で、社長就任をきっかけに2009(平成21)年に入会しました。入会間もない10(平成22)年に参加した第1期経営指針道場発表会で感銘を受け、第2期を受講しました。そこでは、会社の経営理念を成文化しますが、社内に発表することなく机の引き出しにしまいました。

 その後、14(平成26)年4月から6年間にわたり経営指針づくり推進委員長も務め、経営指針報告会に多くの参加者を募るために電話での声掛けを欠かしませんでした。16(平成28)年にはサンヨー工業の経営理念を社員と半年間話し合って再度作成し、社内で発表しました。

 14(平成26)年1月には、会員拡大プロジェクトリーダーも務めました。「当時60歳過ぎの自分に、新鞍を応援してやれと周りが立ててくれた」と回顧。その甲斐もあり目標の会員数を達成し、だるまの目入れをしたのは良い思い出と語ります。

 「会社経営への金言を会員にたくさんもらった。同友会に入っていなければ、ここまでやってこれなかった」と言い切る新鞍さん。同友会は「一人一人違う考えを持つ会員の声を聞いて、新たな知識を得られる場だ」と話します。

にいくら・ふじお=1952年生まれ、津別町出身。中学校を卒業後、長山工業に入社。サンヨー工業設立後の09年から現職。同友会では経営指針づくり推進委員長などを歴任。
サンヨー工業=本社・北見市。83年設立。農業用機具の開発・修理を手掛ける。