【講演録】今どきの若者の就職意識~企業の対応と役割~/法政大学 キャリアデザイン学部 教授 児美川 孝一郎 氏
2026年03月15日

◆大卒の就職をめぐる状況
今どきの若者がどのような環境で育ち、どういう意識を持ち、どのような価値観を持っているのか、それを知ることが重要だと思います。
1990年代はじめまでは、昭和スタイルの「新卒就職」が盤石で、一度勤めたら定年までが当たり前でした。そして、バブル崩壊後の90年代半ばには「就職氷河期」へと突入し、ロストジェネレーション世代が誕生します。2010年代には再度、就職氷河期へ。20年前後から売り手市場が続く中、新卒就職の枠組みが変わってきています。
「売り手市場」と言われますが、10月1日現在で内定を得ているのは7割前後にとどまります。卒業時点でも進路未定の学生は溢れているのです。「新卒が採れない」という企業群と、進路未定の学生群が出会えていないのではないでしょうか。
◆若者の「働く意欲」は大丈夫?
内閣府「子ども・若者白書」(2018)では、仕事をする目的(2つまで回答)について、「収入を得るため」が84・6%でトップでした。次いで15・8%で「仕事を通して達成感や生きがいを得るため」、15・7%の「自分の能力を発揮するため」が続きますが、いずれも低い回答率となっています。これは「ほどほど」「そこそこ」「背伸びをしない」今どきの若者のリアルな姿ではないでしょうか。背景には「失われた30年」や「社会全体の価値観や若者文化の変容」「競争社会への忌避感」「自己肯定感や自己効力感の低さ」などがあると思います。
◆キャリア教育は届いているか?
キャリア教育は2003年の「若者自立・挑戦プラン」を受けて、04年から文科省が推進しています。若年者の就労問題深刻化への対応や、働く意欲、職業理解などを目的とした教育を展開しています。大学では、2000年代に就職活動支援からキャリア支援へと変わり、10年代には授業科目として、キャリア教育科目が設置されました。
◆今どきの若者
今どきの若者が育ってきたのは、日本社会にとって未曾有の「構造改革」の時代(1990年代以降)でした。地方の疲弊や中間層の解体、格差の拡大、貧困の可視化のさなかで生きてきた若者が、「夢とか意欲と言われても…」「どうやって夢や目標を持てばよいの?」となるのは無理もないのかもしれません。
◆中小企業への期待
「若者の意識や能力の現状」と「企業や社会が求める意識や能力の水準」には大きなギャップがあります。ですから、教育機関と企業が連携し、ギャップを埋める踏み台や、はしごをつくることが必要です。
かつて日本の職場は、若者を「職業人」に育てるだけでなく、「社会人=大人」に育ててきました。今ではこうした機能が大きく後退しています。顔の見える中小企業という職場だからこそ「うちの会社では人が育つ」という実践が求められています。
高齢化、人口減少の日本では「成長だけを追求する社会」ではなく「成熟社会」を目指すべきです。そこでは、人々の働き方や価値観も、人生観も変わっていくはずです。中小企業発、そして地域発の「成熟社会で生きる」モデルをつくっていきましょう。(2月2日、選ばれる企業になるための学習会)
| こみかわ・こういちろう=東京大学教育学部卒。同大学院教育学研究科博士課程を経て、1996年から法政大学に勤務。2007年キャリアデザイン学部教授。 |
