【講演録】食で社会課題を解決する~北海道から挑むメディカルフードの未来~ 第三創業期の挑戦/サンマルコ食品 代表取締役 藤井 幸大 氏
2025年11月15日

◆社会に必要とされる会社になるため新規の取り組み
1979年に祖父が創業した当社は、主にコロッケを中心とした冷凍食品の製造販売業です。2代目の父が市販用から業務用へとシフトチェンジし、急成長しました。2024年には私が3代目に就任し、私の代を「第三創業期」と位置付けました。当社を取り巻く環境変化を踏まえ、「フローズン事業」「店舗事業」「メディカルフード事業」をコアに、〝社会課題を解決する企業〟を目指しています。
◆おいしさとは何か
まず、おいしさの科学的な定義に取り組みました。一般的には甘み、塩味、酸味、苦み、旨み等と表現しますが、どうも私にはしっくりきません。そこで導入したのが「四次元官能設計」です。x:素材の風味、y:塩分・スパイスやハーブなどの表面的な風味、z:旨みやコクなどの深みの風味の3つの軸に加え、咀嚼している間の風味の移り変わりの4つの次元でおいしさを設計しています。
◆メディカルフード事業
日本人の死因の6割が生活習慣病で、46兆円に及ぶ医療費の3割を占めています。食生活の乱れからくる生活習慣病は防げるはずですが、栄養のコントロールや健康な食生活の維持が難しい、という課題があります。
そこで当社は、生活習慣病を根本的に解決するおいしい健康食「Dr.Dish」を開発しました。これは日々の健康維持をサポートする医学的根拠のある冷凍宅配食です。臨床試験では、13人中10人の参加者に糖尿病の指標とされるHbA1cの数値の改善が見られました。
高血圧の要因となる塩分摂取量を減らしつつ、おいしさが感じられるよう旨みやコクなど深みを多くするよう食味を設計し、35種類のメニューを用意しました。加えて、北海道の軟水だからこそ出せるよい出汁が、Dr.Dishのおいしさの要です。
こうした食で健康を回復してもらうよう日本食事療法推進協会を立上げ、クリニック経営にも取り組んでいます。また、医療現場の調理スタッフ不足解消や、ダイエット・美肌・睡眠の質改善など周辺領域への波及、さらに冷凍輸送や生活習慣病大国での海外展開など、新たな事業展開も検討しています。
◆北海道のブランディングのために
北海道のブランディングは、危機的状況にあると思います。道産のたまねぎ、じゃかいも、とうもろこしなどが優れていると言われますが、何がどう優位か説明できるでしょうか。昨今は他地域でも道産に近いクオリティの農産物の生産が始まっており、そうなると首都圏に近い産地が有利です。その上データや食味で比較すると、他産地の農産物の方が優位になるかもしれません。道産のブランディングの本質が問われているのではないでしょうか。
事実やデータに基づかないマーケティングがあまりにも多すぎると感じます。科学的データに基づき道産素材の特性を明らかにし、その価値を磨きながら食で社会的課題を解決していく。こうした努力が〝社会に必要とされる会社〟に繋がると思っています。(10月8日、HoPE10月例会)
| ふじい・こうだい=1981年生まれ。米国アカデミー・オブ・アート大学で学び、食品商社に勤務。2010年入社し、24年代表取締役社長に就任。自身の体重を減量した経験から、健康管理食「Dr.Dish」を開発。 |
