中小企業振興基本条例を〝動かす〟/中小企業魅力発信セミナー
2025年08月15日

~墨田区の中小企業支援の実践から学ぶ~

中小企業基本法が公布・施行された7月20日は「中小企業の日」、7月は「中小企業魅力発信月間」です。中小企業の役割や魅力を広く社会全体に伝えようと、2025年度中小企業魅力発信セミナーが24日に開催され、会場・オンラインあわせて70名が参加しました。北海道同友会と中小企業基盤整備機構北海道本部、北海道中小企業団体中央会、ならびに公益財団法人北海道中小企業総合支援センターの4者が共催しました。
北海道内では70の自治体で理念型として制定されている中小企業振興基本条例。今回は「中小企業振興基本条例を〝動かす〟には?」をテーマに、1979年に日本で最初に同条例を制定した東京都墨田区より、郡司剛英・産業観光部長を講師に迎えました。

墨田区では、条例制定に向けて2年間にわたり180名の職員を動員し、悉皆(しっかい)調査を実施。「区内企業の実態を把握したこの取り組みが〝現場主義〟の原点である」と紹介。当時、区民在住在勤率が8割超だったことから、区民福祉の向上と産業振興の推進は一体と条例は制定されました。現在も多様な業種の製造業が集積し高い付加価値を誇っていますが、工場数と就業率は大きく減少し、条例の当初の理念が揺らいできました。
そうした状況で打ち出されたのが、東京スカイツリー誘致という一大プロジェクト。単なる観光施策ではなく、「ものづくりのまち墨田区」に再び光を当てるための、〝起爆剤〟と位置づけられました。2006年の誘致成功を契機に、地域資源を活用したブランド事業「すみだモダン」で産業と観光の融合に取り組みます。18年までに145の製品と60の飲食メニューが認証され、その後は、「心を揺さぶるスミダモダン」へとブランド戦略を刷新します。企業を減らさず、増やすという二段構えの産業政策も紹介。コロナ禍や物価高での迅速な中小企業支援に加えて、既存の地場企業とスタートアップの「共創」を通じた産業集積も進んでいます。
条例を基本にした伝統と革新、地域と外部、既存と新興の融合など柔軟な施策展開に、参加者からは「墨田区の中小企業支援の本気度を学んだ」との感想が出されました。
本田哲代表理事はまとめで「変化し続ける姿勢は我々も参考にすべき。明日から条例を〝動かす〟原動力になろう」と呼びかけました。