【講演録】人に寄り添う経営 ~社員を大切にし、社員の幸せを実現する~/リペアサービス 代表取締役会長 富田訓司氏
2025年06月15日

◆お客様の要望に応え設立
私は美唄市で生まれ育ちました。長年アルバイトで生活をつないできましたが、1983年に実家の酒屋が札幌へ移転することになり、私が経営を任されることになりました。大型量販店の店舗内や、北海道大学生協内などにも出店するも、ディスカウント競争に敗れ、他社に吸収合併されました。その後合併先も倒産したため、酒販店向けの情報処理会社を立ち上げましたが、食べていけず、賃貸物件専門のリフォーム会社へと業態転換。そのリフォーム会社の成長とともに、管理会社から対応を依頼される、建物の様々な設備不具合が激増しました。その要望に応えようと、2009年に修繕専門の「リペアサービス」を立ち上げました。
◆寝る間も惜しみ理念作成
当初は2~3年で損益分岐点を達成する計画でしたが、2013年には資本金500万円と融資1500万円が無くなり、事業継続が困難な状況に陥りました。倒産の覚悟もしましたが、「生きて清算するしかない」と思い直し、取引先に相談。取引先の社長から紹介された税理士から「社長が社長の仕事をすれば立ち直る」と言われました。「何をすれば良いか」と聞くと、「まず理念をつくってください」とのことでした。その言葉を信じ、寝る間も惜しんで経営理念を考え、「賃貸生活のサポートを通じて、入居者に快適な住環境を提供します」などを盛り込んだ理念を策定。その理念を社員に伝えると、社員の目つきが少し変わったように感じました。そして、最後の打ち上げ花火のつもりで実施した事業計画発表会では、社員の表情が次第に変化していきました。その一方で、その理念の実現を最も信じられなかったのが、発表している自分自身でした。
◆社員の幸せを優先する
では理念の力とは何か?その答えを探し闇雲に学びの場を求めるうちに出会ったのが同友会でした。そこで目標となる経営者と出会い、結果を出している社長・会社と自分とは、経営姿勢が正反対であることに気づきました。それからは社員に寄り添い、大切にし、社員の幸せを優先する経営に取り組む決意を固めました。会社を早めに閉めて学びや遊びをしたり、2年以内に全社員で旅行に行くと宣言するなど、社員が喜んでくれることはお金のことを後回しに取り組んだのです。すると、不思議と経営状況がV字回復していき、15年に資本金割れ脱出・16年には債務超過も脱出し、以後順調に成長してきました。
それまでの私は、社員は社長の背中を見てついてくるものと考えていました。しかし、社長がいなくても会社は存続しますが、社員がいなければ会社は成り立ちません。社長に求められるのは、会社の理念やビジョン達成のために社員を巻き込む力なのではないでしょうか。社員を大切にすれば、社員も会社を大切に思ってくれるはずです。社員が会社を大切にしてくれれば、会社も社員に還元できる。善の循環を社長が動かし始めなれば何も動かないのです。そして、誰もが働きやすい職場を追求すると、気付いたらお互いが寄り添う職場に行き着くのではないでしょうか。
(4月14日、南空知支部総会)
とみた・さとし=1952年美唄市出身。2009年、リペアサービス設立。賃貸物件向け24時間修繕受付及び修繕業務。社員31名。全道障害者問題委員長。 |