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仕入価格上昇続く、トランプ関税も影響/2025年1-3月期景況調査

2025年05月15日

中小企業家同友会全国協議会と北海道中小企業家同友会が四半期ごとに実施している景況調査結果(2025年1―3月期)がこのほどまとまりました。全国では2299社中960社が回答。北海道では621社中192社から回答を得ました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同月比、①―④は四半期)

北海道同友会が実施した25年第1期(1―3月)景況調査における業況判断DI(前年同期比)は、前回調査から3・7ポイントと改善し5・1となった(図1)。


日銀短観(全国)と比べてみると、短観の調査結果は横ばいであることから、景況感の改善が進んだとみることができる。しかし、この結果は楽観視できるものではない。売上高DIや採算DI(前年同期比)はほぼ横ばい、ないしはやや改善を示しているものの、足元の景況感を示す業況水準は5ポイント悪化し、水面下に沈みこんだからである(図2)。また、次期見通しは業況水準を除いて悪化見通しである。コロナ禍後から続く仕入価格の上昇に加えて、トランプ関税の影響懸念によって経済情勢の不確実性に拍車がかかっていることが主な要因である。


 他方で、1人当たり売上高や付加価値DI(ともに前年同期比)は改善した(図3)。また1人当たり売上高は、7ポイント改善し16・5となった。10を上回ったのは2023年1―3月期以来である。1人当たり付加価値も5・1ポイントの改善で9・2となった。付加価値の改善幅は売上高ほど大きくはないが、次期も改善を示すことになれば、採算の水準や業況判断、業況水準も好転が期待できるだろう。他方で、仕入単価、販売単価の各DIをみれば、仕入単価は5・7ポイント低下(76・3から70・6へ)、販売単価は1・7ポイントの上昇(41・4から43・1へ)である(図4)。仕入単価は依然として高止まりしていると捉えた方が良い。これまでも指摘してきたように、仕入価格の上昇分をいかに販売単価に転嫁できるか、継続的な交渉や経営努力が求められる。


 業種別にみると、今期は建設業と流通商業のコントラストが大きく表れているように思われる。例えば、流通商業は売上高や採算の水準の各DIはやや悪化ではあるが、業況判断、採算、業況水準の各DIは水面下での推移のものもあるが、大きく改善した。他方で、建設業に関しては、いずれの指標も今期は悪化を示した。今期の建設業の景況感悪化の要因は何か、そして次期以降どのように推移するか、さらなる要因分析が必要である。

 規模別にみると、採算の水準DIや資金繰りDIで20人未満と20人以上の各規模層とのかい離が大きくなっている(図5・6)。物価上昇などの負担が中小企業経営にとって大きな足かせになっているなかで、とりわけ小規模企業層に対して大きなインパクトを与えていることが推察される。

 経営上の問題点では、回答割合の高い上位3項目である仕入単価の上昇、人件費の増加、従業員の不足は、順位の変動はないものの回答割合を下げている。他方で、民間需要の停滞、同業者間の価格競争の激化といった景気後退局面のシグナルともなりうる項目が割合を上昇させているほか、金利負担の上昇が4期連続で微増となっていることに注意が必要である。次期の経営上の課題に関しては、上位3項目(人材確保、付加価値の増大、新規受注(顧客)の確保)の変動はない。他方で、社員教育の割合に加え、新規事業の展開が高まりを見せている。

 最後に、今期の経営上の努力(自由記述)で注目されるものを挙げておく。「物価高対応として社員への手当の増額等、手取りを増やすことを行った。103万円の壁を何としても実現し、今以上に手取りを増やしてあげて欲しい」(製造業)、「『受注志向から貢献利益志向へ』10年ビジョンで変更して1年目が終わりつつある。貢献利益志向定着へ向けて、1月上旬はプロジェクトメンバー主催の職場説明会を実施した」(製造業)、「中間管理職の人たちに課題を与え中長期での人材育成につなげる」(サービス業)、「従業員のがんばりに応えるように期末手当を支給した。全員が同じ方向を向いて業務に取り組めるようにする」(サービス業)