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【わが人生わが経営 160】(有)河村工業 相談役 会長 河村 末明氏(72)(函館支部)

2025年01月15日


              塗装から産業へ発展
             CGの活用で満足度向上

 
「他の人がやっていないことをやりたい。同業者とは違う視点を持つことを大事にしてきた」

 河村さんは1952(昭和27)年、函館市で7人きょうだいの4男として生まれました。「自分の身は自分で守れ」という父親の教えから、空手を習っていたため「誰が来ても怖くなかった」と語ります。

 よく行く床屋さんで読んだ雑誌で知った「男性美容師」になりたいと思っていた河村さん。理容美容高等学校に進み、美容師になり東京で仕事をし、ゆくゆくはフランスに渡り修行するという夢を抱いていました。しかし、父親に猛反対され夢は叶いませんでした。「当時〝父親〟という存在は絶対だった。夢は捨てたくなかったけど、諦めるしかなかった」と振り返ります。

 高校を卒業した後、19歳になった河村さんは石炭や薪を取り扱う商事会社に入社しました。「ガソリンスタンドが今後、世の中を制す」と予見していたその会社は、ガソリンスタンドの新規出店に向け、河村さんに札幌への長期出張を命じます。ガソリンスタンドを経営する上で必要なもの、ライセンスなどあらゆることを2年間かけて勉強し、会社へ持ち帰ったといいます。その後、ガソリンスタンドや営業部署などで数年間働きました。

 そして、バスユニットなどを販売する会社やホンダ直営の会社などで営業の仕事を続けていた河村さんですが、ひょんなことから塗装会社でアルバイトを始めます。「実家の近くにあった塗装屋さんに兄が世話になっていたこともあり、塗装業界はとても身近に感じていた。それが、この業界に飛び込むきっかけとなった」と振り返ります。

 8年程かけて働きながら一から資格を取得した河村さんは、自分の手で稼ぐことができると確信し、自分の会社を持つことを決意します。

 そして、1984(昭和59)年、河村工業を立ち上げました。創業期には、塗料を取り扱う販売店がなかなか塗料を卸してくれないなど苦労もありましたが、これまでの職歴で培った営業力などを強みに、順調に仕事を増やしていきました。

 創業から25年程経った頃、お客さんが徐々に減ってきたといいます。理由がわからず困っていたところ、「まだ間に合うから同友会で勉強しなさい」と戸沼岩崎建設(函館)の故戸沼平八氏に誘われ、2009(平成21)年同友会に入会します。

 10(平成22)年から18(平成30)年まで函館支部幹事を務め、組織・企画委員会に所属しました。同友会では社員教育や経営指針も学びながら、企業づくりを進めました。

 「社員教育を徹底することで、お客さんは減るどころか再び増えていった」と語り、「もっと早く同友会に入るべきだった。我が社は戸沼さんに救われたようなもの」と微笑みます。

 河村さんは同友会の会員拡大にも力を入れて取り組みました。「紹介者が新入会員をフォローする仕組みを確立すれば、自ずと会員は増え、定着につながるのではないか」と説き、「既存会員が同じ方向を向き、会員拡大に取り組むために『会員増強月間』を設定するのも良いと思う」と力を込めます。

 2022(令和4)年、河村さんは同社の会長となり、社長の座を長男の悦郎氏へと譲りました。
 社名に「塗装」を付けず「河村工業」としたのは、「塗装業だけではなく、建設業全般、さらには産業として仕事をやっていきたいという強い思いが創業当時からあったため」といいます。そんな河村さんの思いを汲んだ悦郎氏と二人三脚で、塗装・建設業だけでなく、経営コンサルティングやエネルギー事業など新しい事業に積極的に取り組んでいます。

 外壁、屋根塗装では、塗装する色を色見本から選ぶだけでなく、その色を実際に塗った場合の仕上がりをCGシミュレーションでお客さんに確認してもらうことで、お客さんの満足度向上につながっているといいます。こういった工夫もあり、塗装業者口コミサイト「リビロペイント」で顧客満足度1位(道南版)を7年連続で獲得しました。

 「〝こうあるべきだろう〟を追求し、他社のモデルとなれるように新しい事業にもどんどん取り組んでいきたい。そして、この会社で働きたいと思ってもらえるような会社であり続けたい」と展望します。

かわむら・すえあき 1952年生まれ、函館市出身。84年に創業し、代表取締役社長に就任。2022年から現職。
河村工業=本社・函館市。1984年創業。建築塗装業、トータルリフォーム、経営コンサルティング、エネルギー事業などを展開する。